【テキスト版】落窪物語【ざっくり古典】

今日の「ざっくり古典」は「落窪物語」です。

平安時代中期に書かれた「作り物語」。作者はわかっていません。日本にシンデレラというお話が入ってくるずーっと前に、シンデレラとよく似たお話が書かれていたのです。

ある男の人、中納言という位で、娘たちがたくさんおりました。長女や次女には婿を迎えて、邸の西と東に住まわせ、三女と四女は成人式を華やかにしてやろうと大切に育てていました。その子どもたちを産んだ母親が中納言の妻ということになります。さて、主人公の姫は、中納言が通っていた皇族の血を引く女性から生まれましたが、その母親は早くに亡くなってしまい、今は中納言の妻の邸に引き取られています。

平安時代、母親を亡くすということは、頼りにできる経済力を失うということでした。それでも妻がいい人なら、大切にされたのでしょうが、この姫は、引き取らて、使用人以下の扱いを受けることになりました。邸の中で一番落ちくぼんだ小さな部屋を与えられ、呼び名も「落窪の君」とつけられてしまいます。「落ちくぼんだ部屋にいる人」という意味です。

落窪の君には、世話をする人も、乳母もいなかったので、母親が生きていた時から召し使っていた女の子だけがそばにいました。二人は身を寄せ合うようにして、大きな邸の隅で生きることになりました。

冒頭でこのように設定が描かれます。もうこの時点で、面白くなる予感しかありません。

落窪の君はろくに着るものも与えられず、寝る間もないほど、毎日縫い物をさせられ、他の使用人たちからも馬鹿にされる日々を過ごします。そんな中、ある少将が落窪の君のことを聞きつけて通い始めるのです。少将は彼女の品の良さと美貌に惹かれるのでした。

そのことに気付いて中納言の妻は激怒します。自分の娘を少将と結婚させようと思っていたのです。中納言の妻は、自分の叔父である典薬助(てんのすけ)という60歳過ぎの医者に落窪の君をむりやり自分のものにするように勧めます。しつこく言い寄ってくるお爺さんと、何とか逃げようとする落窪の君のやりとりも読んでいてハラハラする場面です。

それも失敗に終わって、落窪の君を救出した少将が、中納言の妻たちに恥をかかせるという仕返しをして、反省した妻たちとハッピーエンド、というところまでが、この「落窪物語」です。面白すぎるし、現代語訳もマンガもたくさん出版されてるので、ここではあまり深くストーリーには触れないようにしました。とても痛快なお話なので、是非読んでみてくださいね。

落窪物語。平安時代中期成立。作者不詳。作り物語の代表的な作品のひとつ。


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