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K-BALLET「ラ・バヤデール」鑑賞

2024/6/9(土)、Kバレエ カンパニーの「ラ・バヤデール」@オーチャードホールの千秋楽を鑑賞。初めてのKバレエ、初めてのラ・バヤデール全幕。
全身全霊を吸い取られる素晴らしさでした。

きっかけは娘のバレエレッスン

バレエ教室に通う長女が、ラ・バヤデールに取り組む機会がありました。(彼女はバレエ歴2年目に差し掛かったところ。習い事としてのバレエについては、また別の機会に記したいと思います)

彼女が関わる作品に興味を持つのは私の趣味で、あらすじを大まかに調べ、楽曲を聴き、有名バレエ団の映像で予習。

ちなみに、ラ・バヤデールのあらすじは...

舞台は古代インド。寺院の舞姫ニキヤと戦士ソロルは密かに愛し合っている。
だが領主ラジャに娘のガムザッティとの結婚を命じられたソロルは、権力と彼女の美貌に抗えず承諾する。
ニキヤに求愛を拒まれた大僧正は、ニキヤとソロルの関係をラジャに密告。
それを聞いたガムザッティは、ニキヤに身を引くよう迫るが激しい争いとなり、ニキヤの殺害を決意する。

ソロルとガムザッティの婚約の宴で祝いの舞を悲しげに踊るニキヤ。
ソロルに花籠を手渡された喜びも束の間、中に仕込まれていた毒蛇に噛まれ、絶望のうちに息絶える。

悲しみと後悔に苦しむソロルは、夢の中でニキヤと再会する。そして……。

K-BALLET 公式サイトより引用

そして迎えた発表の場。小学校1年生、演技時間は数分ですが、スカーフや光るボールなど、バヤらしいモチーフを手に、堂々と披露していました。高学年はコンクールに出場するメンバーもいて、とても見応えがあります。壺の踊り、スカーフ、オウム、太鼓、ブロンズアイドル、影の王国…。全幕ではないものの、その世界観を楽しませてもらいました。

レオン・ミンクスにハマる

本番を終え一安心。しかし、私は取り憑かれたままで、翌日からも変わらずにバヤの楽曲を聴き続けました。作曲者のレオン・ミンクスは19世紀のバレエ作曲家を代表する一人で、ドン・キホーテやパキータも作曲しています。バヤを聴いていると、続いてパキータが流れることがあり、これもまた素晴らしい。

この音楽を、直接堪能したい。バヤをもっと知りたい、そう思い、バレエ公演がないか調べ、Kバレエのチケットを購入するに至りました。

バレエ鑑賞は初めてではないものの、ダンサーについて知ることはほとんどないため、直感で、配役から日程を選び(この時から、私は日髙さんに惹かれていたのでした)、音響に定評があるオーチャードホール、2階席の中央あたりに。

予習、予習...

朝晩バヤを聴く日々は続きます。加えて、映像で予習。

ふロシアのマリインスキー・バレエの全幕。
(後から知ったのですが、ラ・バヤデールの初演はマリインスキーで、長きに渡りマリインスキーでしか上演されなかったとのこと。)

影のコール・ドや、ソリストのバリエーション、パ・ド・ドゥは、他のバレエ団の公演や、パリ・オペラ座の練習風景の動画などもチェック。

いよいよ開幕、というところで、Kバレエ公式から、影の王国のリハーサル映像が公開され、ますます胸が膨らみました。

楽しみがあるから頑張れる、という感覚は、本当に久しぶりでした。

「ラ・バヤデール」感想

さて、本題です。

迎えた当日、気持ちが急いて、予定より早く到着。来場客が溢れそうになったためか、会場時間前にロビーまで入場可に。パンフレットを購入し、開演までじっくりと読む。オーケストラが音出しをし始め、聴き慣れた旋律が響く。

間も無く、と姿勢を正すと、微かに体が震えてきた。緊張というより、武者震いに近い。いざ、開演。オーケストラが私のために鳴っている!という感覚が自ずと湧いて、涙が滲んだ。「音が届く」ってこういうことなのか。

終始、ずっと観ていたい、終わらないで欲しいと願っていました。特に惹きつけられたシーンをいくつかご紹介。

舞姫ニキヤ/日髙 世菜さん

ソロルへの愛を真っ直ぐに示す、フレッシュで透明感溢れるニキヤ。
この世のものではない美しさを放つ幻影のニキヤ。
唯一の望みを叶え、慈愛に満ちた麗しいニキヤ。

どのニキヤも、登場した途端に空気の色を変える。たくさんの素晴らしいダンサーを目の前にし、しばしニキヤのことを忘れても、再び現れると一瞬にして惹きつけられて、会場がニキヤに包まれる。

優雅で上品。静かで揺るぎない引力。
日髙さんの美しさは格別だった。

この方の、雪の女王(くるみ割り人形)やオデット&オディール(白鳥の湖)を拝みたい。必ずや。

影の王国のコール・ド・バレエ(群舞)

ラ・バヤデールといえば、のコール・ド。

コール・ド・バレエ(仏/corp de ballet )
大ざっぱに言ってしまえば、群舞のダンサーたちのこと。コール・ドと大概略称される。プリンシパルについては、誰それが良かった♪と名指しで語られるが、コール・ド・バレエに関しては「コール・ドが云々...」と、マスとして見なされる。バレエダンサーの世界は厳格に階級で区分され、ピラミッドの頂点からプリンシパル、ソリスト、そして底辺のコール・ド・バレエの順に人数も多くなっていく。
彼らを「ソリストの引き立て役、その他大勢でしょ」と軽視することなかれ。決して板の上で、身分が低いわけではありません。確かに、役柄的には物語の筋にちょっと彩りを添えるものにすぎないかもしれませんが、質の良いコール・ドがなければ、バレエ作品は成り立たないのです。『白鳥の湖』第2幕の白鳥たち、『バヤデール』影の王国、『ジゼル』のウィリーたち、『くるみ割り人形』の雪のワルツ、花のワルツ、etc...。まさに「細部に神は宿る」。呼吸もポジションの正確さも、音楽性も、ひとつひとつ丁寧に合わさった動きの美しさは、観るものに印象を強く与えるものですよね。(後略)

chacott公式サイト「バレエ・舞台用語講座」より引用

素晴らしかった。様々なバレエ団の「影の王国」を予習したけれど、ここまで息のあった「影」はなかった。正確なアラベスク、間断のない緊張感が、柔らかで冷たい世界に誘ってくれる。

衣装もまた、ひとさじの可愛らしさと、透明感溢れるふわんふわんとした白の質感が絶妙。これがKバレエらしさなのかな、流石でした。

コール・ドに続くパ・ド・トロワ、3つのソロも、大変な見応えでした。それもそのはず、成田紗弥さん、小林美奈さん、岩井優花さんはプリンシパル・ソリストで、別の公演日でニキヤやガムザッティを演じている方々。眼に、心に、幸福が過ぎる。

最高のオーケストラ

そして、バイオリンソロに乗せる、ニキヤとソロルのパ・ド・ドゥ。

↓バイオリンの旋律をぜひ...

2階中央あたりの席で、影のコール・ドがより美しく見え、オーケストラの音も申し分なかったのですが、もし次の機会があれば、バイオリンソロが見える席を切望します。2階上手側バルコニーでしょうか。(果たしてそのような席を手に入れられるのか)

バレエ鑑賞にあたり、あらすじと楽曲の予習は強くお勧めします。音を知っていると、より楽しめる。即ちストーリーであり、没入感が高まります。何よりも、音楽そのものが素晴らしいのです。200年近く、人々を魅了し続けるのも納得。チャイコフスキー、プロコフィエフ、レオン・ミンクス...
バレエに出会い、彼らの音楽に浸る日々を送っていることは、大きな幸せです。

終わりに

その他に、ドラムダンスリーダー(吉田周平さん)、そして、ブロンズ・アイドル(石橋奨也さん)は、会場の空気をその一色にする強烈さが飛び抜けていて、限られた時間で爆発するに至るまでの鍛錬や集中力は、私が一生を懸けても想像すら出来ないと思います。

そして、終盤の演出は大変ドラマティックで、これもまたKバレエならではなのだと思います。細部まで、始まりから終わりまで、楽しませていただきました。

幕が下りてからずっと、帰宅してからも、全身が熱っぽく、そして、どよんと重たい疲労感。芸術を過剰摂取したようです。

今年の冬は、Kバレエの「くるみ割り人形」を観るのだ。その時は娘も一緒かな。

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