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包みきれない餃子

中華料理と言えば、きっと一二を争うポジションに違いないという謎の確信を抱きながらも、やはり餃子では無いだろうかと(誠に勝手ながら)思っている。
中華系レストランに行けば、メニューに必ずと言っていい程に載っているお馴染みの一品。美しい焼き目と湯気を眼前に、ページの向こう側から涎と共に誘ってくるのだ。

この罪深く、でもどこか愛嬌を感じる異国の食べ物が、私は不思議と小さい頃から好きだった。

小学校の図工の時間に、紙粘土で餃子三兄弟という顔の付いた大中小の餃子の置物(ご丁寧に箸まで付けて)を作ってしまう程度には囚われていたのだ。

まぁ、置物はさて置き、餃子は食べるのは勿論の事、ひそかに好きだったのはあの黙々と包む時間も楽しさのひとつでもあった。

我が家は六人家族と、子供が多かった為その分作る餃子の数も必然的に多かった。
ましてや育ち盛りの子供達が四人。誰も彼もがよく食べ、食事という場を大いに堪能していた。
だから、また余計に箸が進むなんていう魔法もあり、作るとなるととんでもない量だった。

己が食べる分は己で包むのだ、という精神から幼いながらも、これが働かざる者食うべからずか···!と体感的な学びを得てつい興奮してしまったのは今となっては良い思い出でもある。

作り始めるのは大体、休日の昼下がり。一階から父と母に呼ばれ一斉に子供達がリビングに集まり、餃子作りが始まる。
バットに山と積まれた肉種、各所に設置された餃子の皮、銘々皿には糊付け用に水の入った小皿を手元に、その日の晩の準備に家族全員で勤しんだ。

小学校低学年の頃は全く上手く包めず、母に手ほどきを受けていた。そして時に兄に煽られ、その度に負けず嫌いの私は悔しくて、泣きながら手を動かすしかなかった。
今思い返すと、餃子作りに対して余りにも本気過ぎる幼少期だったかもしれない。

当時は皮のヒダが傾き、不格好で隙間から欲張りな肉が大胆にはみ出た餃子の製作者は、誰が見ても明白だった。

まさに涙と汗と憎悪の餃子ではあったが、焼き上
がってしまえば、どんな形であろうと自分が食べきれなかった不格好な餃子は最終的には家族の誰かが食べてくれていた。

餃子で満たされ、はち切れんばかりのお腹とは別に、あのお世辞にも綺麗とは言い難い、はみ出し者の餃子を誰かに口にして貰えたという充足感に当時の幼い心も、また少なからず包まれていた。

口に入れば全部一緒だという理解の元であったとしても、ほんの少し嬉しかったというのも確かな事実だったのだ。

そして需要は不明だが、ここで一旦、我が家の餃子をご紹介。隠し味に味噌を、そして追い打ちをかけるかのようにニンニク醤油も使用している。明日の事なんて気にしない方は、ぜひご参考までに。

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[材料] [餃子の皮・約25~30枚分]
挽肉…120~130グラム
キャベツ…300グラム
塩…小さじ1(キャベツに振る用)
ニラ…1/2束
☆ニンニク…すりおろし小さじ1
☆ショウガ…みじん切り小さじ2
☆ごま油…小さじ2
☆ニンニク醤油…大さじ1
☆酒…大さじ1
☆砂糖…小さじ2
☆味噌…小さじ1
☆塩…小さじ1/3
☆胡椒…少々

[作り方]
①キャベツをみじん切りもしくはフードプロセッサーで細かく刻む。ニラも同様に。

②刻んだキャベツに塩小さじ1を振り混ぜ、10分程置いて塩を馴染ませてから両手に握って水気を絞る。

③ボウルに入れた挽肉に☆の材料を全て入れ、粘り気が出るまでしっかり練る。

④肉の入ったボウルに②のキャベツとニラを加えて更に混ぜ合わせ、時間があれば冷蔵庫に入れ1時間ほど寝かす。(味を馴染ませる為)

⑤餃子の皮と糊付け用の水を用意。
手の平に皮を広げて、肉種を適量伸ばす。
皮の端に水を付け、端からヒダを折り包んでいく。

⑥包み終えたら、フライパンを熱する。
温まったら油を引き馴染ませ、餃子を並べる。

⑦強火で1分程加熱したら、水を適量入れ蓋をし中火で5~7分蒸し焼きにする。(様子を見ながら判断)

⑧火を弱火にしお好きな油を少々回し入れ、焼き目が付いたら完成。

お熱いうちに、どうぞ召し上がれ。


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ジジジ、と皿に乗った餃子が鳴く。

大人になった今でも、変わらず餃子は好きだ。
不器用ながらもこなれた調子で包めるようになった。だが、時折欲張ってしまう癖はどうしても直らなかった為、やはり肉がはみ出る。

変わった事と言えば、多少の不恰好も嫌では無い自分になった事だろうか。

そろそろ餃子とビールの美味しさにも目覚めたい年頃だが、残念ながらまだ運命の出会いを果たしていない為、新潟の父から送られてきた白米と共に餃子を食す。


じわじわと、肉汁の如く湧いて染み入るような記憶の数々が、今もこうして私の血肉になっている。

つぶさに反芻する度、包みきれなかったあれこれに涙して、上書き出来ない過去にひとり呻きながらも、勝手に癒されているのだ。



餃子が好き。
また一緒に包んで、はみ出して、なんにも言わずに、どうか笑って欲しい。

#餃子がすき #思ひ出

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