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七尾市 パトリアはなぜ潰れたのか? 〜つづき〜

前回はDV(ディベロッパー・商業施設側)視点から七尾市パトリアが潰れたことによるハレーションをまとめてみました。
今日はテナント視点からのDV破産の影響を考えてみます。
その前に、テナントの出店時を少し見てみます。まず、商業施設に出店するにはDVに出店を認めてもらう事が必要です。いくら空き区画があっても、テナント会社に信用や知名度、売れる見込みがなかったりすると相手にされません。
また、コンセプトのズレや隣接テナントの関係でNG(アパレルの横に飲酒店やマッサージ屋が配置できないなど)になったりと、出店のハードルはやや高めです。

それらをクリアしたとして、次のハードルは敷金です。面積に応じて標準額をかけた敷金を支払うのですが、集客力や立地があるので、路面店よりも高く設定されています。その他にはDV側の穴埋めリスクヘッジと営業料(賃料)の高さがあります。テナント会社が倒産で退店する場合、兆候がない場合が多いので、DVはいきなりその区画に対しての収入がなくなります。それをDV側は回避するため、契約時に「6ヶ月前通達がない退店の場合は違約金が発生する」と取り決めています。仮にそうなった場合の出どころが敷金なんですね。
また、アパートの場合退去時は清掃費用くらいしか取られませんが、テナントの場合、内装施工はテナントで行っているので、その資産はテナントになり、それらを撤去する原状回復もテナントが行う必要があります。これらの補填は敷金から行うので、営業料に比例して敷金も高くなるのです。
お金がないから潰れるので、追加で違約金や原状回復費を払えない事が多いんですね。
テナントはこのようなハードルを乗り越えて、DVと契約書で定めた数年間の「営業をしてもいい」ことを保証されます。

話を戻しまして、、上記のようにテナントは資金的にとても頑張って出店したにも関わらず、契約期間がまだ残っている中で、「DVが努力不足で破産したから営業停止してくれ」と通達されることはとても残酷なことだと思っていただけるはずです。
ですので、テナント側はDVに対して色々不満が出ます。例えば「原状回復はDVでしろ」「数ヶ月の営業補償をしろ」「次の出店の費用を出せ」など、お金に関することをDVは求められるでしょう。それも複数のテナントからDVに対して。
また、一番残酷なことは「そのテナントで働いていた人はどうなるの?!」ということです。職場を失うわけです。多くの場合はその会社に管理部門や他店がある場合が多いので、即解雇にはならないでしょう。
しかし、本店とその商業施設だけしかテナントがなく、売上の過半数ほどを稼ぐテナントの撤退を余儀なくされた会社の場合、DVと共倒れになる可能性が非常に高くなります。

地域住民の利便性低下もありますが、暴動の根幹の理由はここにあるのではないでしょうか。

私が働く福井市でも過去にピアという商業施設があり、似たような暴動が起こったと聞いてます。
https://ja.wikipedia.org/wiki/ショッピングタウンピア
このケースの詳細ですが、施設を建てる場所で小売業をしていた地主達は、開発段階にDVから「テナントを集積した方が儲かるから入ってくれ」と口説かれて入店しましたが、数年後競合や周辺社会情勢の変化からDVの撤退が決まったようです。
イオン系なのでいきなり施設が閉店したわけではありませんが、出店していた地主からは「騙された」とか「退店の保障をしろ」とかクレームがたくさん上がり、更地に戻すまでの数年は廃墟の状態だったそうです。

いずれにしろDV撤退は慎重にしないといけないということですね。


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