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売れる服について考えること

何度も思い出すことがある。
オリジナルの布を作る必要をヒシヒシと感じたはいいが、どこにどうやって頼めばいいのかさっぱり分からなかった時
相談したのが、いつも良く買ってた生地やさんだった。ご主人が中国で生地のお仕事をされてるとの事で「うちのお父さんにも話してみたら」と言ってくれたのだった。
40代だったけど、割と若く見られがちな私。目の前に来た若い女子の話を聞くのは奥さんに言われたからだろうと分かった。話してごらん?という風な、優しい方なのだろうと思った。

面接のような気持ちで、オリジナルの布を作りたいこと、でもそれは単にカッコ良いからとか夢だからとかではなく、百貨店に出展することが定期的になるかもしれない状況で、まずは覚えてもらうこと、そのために顔となるような服が絶対必要なことと、同時にセミオーダーだからずっと提供できる布が欲しい、面白い布を探してきても1着しか作れない、よくある定番の布は魅力的ではないと思ってること、

既製服だと合わない人が多いこと、縫製者は日本の宝物だから彼らに仕事を続けて貰いたいこと

などなど、手短でもなく話したと思う。社長は途中で身を乗り出して、目に輝きが入った、ように見えた。

奥さん(生地やさん)が、「お父さん!籠谷さんみたいな人と仕事しなくちゃダメよ!」と言った。これには驚いた。社長さんはうなづいてメーカーさんを紹介するから行ってねと仰ってくださって、それから心に残り続けてる言葉を言われた。

これから、色んな人に出会うと思うけどね、いい人とだけ仕事しなさいね、この人好きだと思える人としなさい。

思いがけない言葉だったので、ありがとうございますとだけ言った。すると

こちらこそ、ありがとうございます。とても良い話を聞いた、あなたの話を聞けて良かった。

そう言われた。
そして大きなメーカーさんや刺繍やさんにご紹介くださった。
そしてSAKANAシリーズは生まれた。

今も作り続けている、うちの顔的ファブリック。色んな素材にもなった。シードさんといえばサカナと言われるようにもなった。作って本当に良かったと思ってる。

でも、それが本質ではないというか。本質は作ったものにあるのではなくて、なぜ作るのかなぜ作ったのか、どう作ったのかの方にあると思う。
どんな事業も求められなければ、つまりは売れなければ成り立たないし、継続できない。でも売れることを目的としたモノづくりは、結局は続かないのだと思っている。
その事に気づいて仕事をしている人は沢山いるはずだし、そんな人同士ならば必然的に出会うと思っている。
それが販売員さんであれ、メーカーさんであれ、バイヤーさんであれ、営業さんであれ、加工屋さんであれ、その立ち位置は関係ない。そんな人は最初の数時間でだいたい分かる。

目が輝く。

社長さんの言葉をしっかと受け止めて、それからもなるべく人と会っては、繋ぎたいと思う人と繋ぐようにしている。

本質のところで響きあう人たちと手を繋ぎたい。これまでもそうだったし、これからもそうでありたい。
讃えあいながら作り続けたい。

そうして作ったものは、きっと見つけてくれる。輝きを見出す人に。
それが私の考える売れる服、求められる服。

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