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四国八十八ケ所 約1200km通し歩き⑧疲れ果て、荷物を捨てる。遍路転がし前日。6日目その2

明日は、また遍路転がし。しかも、20番鶴林寺、21番太龍寺と、二つの山、遍路転がしを越えて行かねばならない。

 怖い。今の疲れ切った私じゃあ、駄目かもしれん。リタイア?嫌だ!

こうなったら、荷物を捨てて、リュックを軽くするしかない!

宿に着いた私は、荷物を広げ、捨てる荷物を選び出す。

捨てるものを右に、捨てられないものを左に。

マキロンを右に、いやいやマキロンは私の身体を守るものだしと、マキロンを左に。

タオルを右に、いやいや今日のような寒い日には首に巻くと防寒になるし、タオルを左に。

この柿の種の残りは右に。いやいや食べちゃえばいいんじゃないの?と、柿の種は左に。

この破れた手袋は…。高かったので左へ。いやいやいらんだろう!この捨てられない女めっ!でももったいなくて。泣く泣く右へ。

ちっとも選別が進まない。やむなし。まずは、もらったミカンを食べ、柿の種も食べ、食べきる事で、着実に荷物を減らしてゆく。(代わりに体重が増えていないか?)


今宵の宿は、元小学校をリノベーションした、お遍路業界?では有名?な宿“ふれあいの里さかもと”。遍路道で出会ったH氏からお勧めされた宿だった。

 さて、夕食の時間となり、H氏と再会する。

 H氏は、一昨日に一緒の宿に泊まった人たちとも予定通り合流したらしく、盛り上がっている。

 多くの人から“遍路話を聞かせてくれ”とせがまれていた65歳の男性は、4回目のお遍路で、全行程35日分の宿を全部事前に予約し、今まで何があっても予定通り歩ききってきたそうな。(一般的に50日くらいかかると言われているので、超早い!)

 「すごい!私今日、真念ルートっていう矢印に沿って歩いていたのに、迷子になったんです。道に迷ったり、予定通りいかなかったことは、無いんですか?」と聞いてみると、

 「僕は、基本的には車道しか歩かない。それが一番確実に時間と距離が読めるから。だから、その何とかルートとかは、一切歩かない」ときっぱり。 

ええーっ!お遍路って、なるべく旧遍路道を歩くもんだと思い込んでたっ!

 「フフッ…。あたしも4回目。今回は、別格(八十八札所以外の、弘法大師ゆかりのある霊場二十ケ所の事。合わせて百八ケ所で煩悩の数と同じになるとか…)だけ廻ってるの。いいものよー、別格!」

 こちらは80代の女性。この手練れ感は何?

 どうやら、H氏をはじめとする、お遍路猛者の会に、紛れ込んでしまったらしい。

 「あ、一昨日〇〇寺で会いましたね!」

 猛者の一人に声をかけられて、「そうですね!」と答えつつ“やばいっ!”と動揺する。

 実は私は、もともと人の顔を覚えるのが苦手なのだが、70代前後の中肉中背の男性が、菅笠をかぶって、白衣を着て、眼鏡をかけ、金剛杖を持って、複数人で歩いていると、全く見分けられない事に気が付いていた。

 昔(いつなの?)は、おニャン子クラブ(だっけ?)とか、ジャニーズのグループ(どれ?)とか、

 「最近の若者は、全然見分けられなくてのー」とか仰られてる年上の方々の事を、

「一人ひとり、こんなに違うのに、何でわかんないの?」と若者が言ってた事も思い出す。ちなみに私は、見分けがつかない方の一員だったが。あれ?つまり…。

 私は、昔も今も、人の顔が覚えられない人でした、という事を再確認した旅となった。

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