見出し画像

フランスの交差点(7/16)

いわゆる和式トイレのことをフランスではトルコ式トイレと呼ぶらしい。

キャンパーや通行人たちがいたとしても、私もほぼ裸体でウロウロするのに全く抵抗のない人間であるが、トイレだけは清潔なものじゃないとどうしても受け付けず、キャンプの間もそこの一点だけは常に異議申し立てをしてきた。
今回のキャンプ旅で、私の並々ならぬトイレへの情熱(というか固執)は理解してもらえたようだった。

行き当たりばったりで色々なところを巡ったので、何処を通過して何を見たのか、口頭レベルで聞いたとて右から左状態。結局土地勘のないままキャンプ二日目は終了した。

何せ足を負傷しているもので、地元の人しか滅多に来ない秘境らしきところでの水遊びも、なかなか激しい水流とゴロゴロとした石の多さにほぼ寝転がってグータラしているだけだった。

フランスも少し夏らしい気候になったとはいえ、日本の猛暑とは比較にならないほど穏やかなので、水は冷たすぎて心臓は止まりかけたが、一度入ってしまえば平気で(我々サウナを愛する者は水風呂でそんなことはとっくに知っている)、地元のちびっ子数人と共にぷかぷか浮いたりしていた。いや、違うな。彼、彼女らは岩から飛び込んだり、果敢に水流に両腕を翻したりしていた。一緒にすると失礼なほど、私一人場違いなほど自然に馴染んでいなかったであろう。

小さい頃からピアノの練習ばっかりで、色んな遊びを経験してこなかったため、ありとあらゆるアクティビティーに全く免疫がない。
提案はするけれども絶対に押し付けてこない(嫌だったらやらなくていい、やってみたかったら一緒にやろう)というスタンスの人でなかったら絶対にやっていなかったとも思う。

キャンピングカー内での組み立て、ご飯の準備、地図を見てあれやこれやと考えてくれていたので、私は殆ど助手席で寝ていたのだが、キャンピングカーが奇跡的にオートマチック車であったので、田舎道を30分ほど運転させてもらった。私が先ほどまで座っていた助手席で、こういう時は暗黙の了解でこうした方がいいとか、日本にはない標識のことを教えてもらったりして、最初の一手としては善処できたように思う。

ただし、フランスには当時の流行?としてサークル型の交差点が無数に存在しており、ぐるんっとカーブするのが苦手な私は、そこに至る前に助手席に再び収まることになった。

なんでこんな最低なシステムを採用したんだろうね?と小言を言いながら、二人で納得できる理由を探してみたのだが、その時に彼が、

「確かに、サークル型になっていると交差点の衝突事故みたいなものは劇的に減るかも知れないな」

と放った一言で、私の凝り固まった自己中心的視点が一気に変わる。

田舎道を飛ばしているバイクや長距離を運転するトラック、必ずしも運転に慣れていないバカンスのための車。そのどれもがサークル型の交差点をぐるぐるする為に速度を極端に落として、のろのろと自分の行き先=出口を探しながら回るのである。行き先に迷ったら、何度もくるくる回れば良いだけだ。

私の出した最有力候補は「進行方向に迷った時に時間稼ぎができる」だったのだが、それも少しだけオマケとして正解かもしれなかった。

そんなわけで、牛とかひまわりとかツール・ド・フランスファンのサイクリング族しかいないような田舎道でのなんちゃって教習コースも同時に受講した。

ここは鴨川かい?と言わんばかりの川沿いのテラス席で、チーズとかトリッパとか名物の肉の詰め物(名前ド忘れ)などを食べて深夜にリヨンに戻る。

家は家でやっぱり快適だった。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?