わたしの詩

世界中の映画を集めたらわたしの、人生という時間の単位を映画だけで、埋められるかもしれないと、そんなことを考えていた。春の輪郭に足を滑らせたわたしは、そよ風に追い捲られてこの布団のなかに潜りこんだ。ただこの場所は君のおしりの、青あざのようなものだよ。君が自動販売機の下に落とした100円玉のようなものだよ。陽に照らされないからといって拾うことをしなければまるで、最初からなかったかのように別の次元で生きて死ぬのがわたしだと、反射のような心地で過ごしていた。
確信に変わらない日々が君に拾われることを期待してまた、春に息を吹き返す。わたしはこの春に咲き匂う、桜の花になりたかった。誰かが揺さぶられた美しさの、名前のない成分となりそして、家に帰れば忘れられたかった。太陽とみつめあってもわたしがばれないように、眠っていたかった。君の知らないふりが木漏れ日のやさしさだとわかるくらい大人になったとき、君はわたしを栞にして365ページを生きる。君の生きる春が存在したという事実をわたしのあとがきに残して、生きてゆく。
どの色を基準点としてわたしは青空になれるだろう。上を向いて歩けば、命を踏み殺したことにさえ気づかないまま、澄ました顔で君に手紙を出す。忙しなく生きているふりをする。君に何かを伝えるためにわたしは、尊いものを犠牲にしたような気でいるので、心から君の胸に顔を埋めることすらできない。
片目で見る星が思っていたよりも綺麗だったことに絶望してまた、仮眠する。今日は視界がよく見えるから、ぶつかってしまいそうだ。君だけがわたしに気づいて、傷ついている。それでもわたしは、君にかわいそうと言われる7日目の蝉にはなりたくなかった。
わたしの脱ぎ捨てた皮膚はわたしが、拾う。これは君への贖罪だよ。わたしたちは平になるために生まれた。わたしはわたしをわたしで埋めなければ、君に愛されることはない。

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