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【W】第27話~第30話

第27話「Dが見ていた / 透明マジカルレディ」

 謎めいた男・井坂がじわじわとその性格の一端を露わにしてゆく。照井は「Wのメモリの男」としか井坂の手がかりを持っていなかったが、井坂の方では照井の事をプロフィール含めよく知っているようだ。
 殺すのは誰でもよかったと嘯きながら、井坂は照井に家族の様子を克明に語る。研究のため詳細に記憶していたのだろうか。わざわざそれを聞かせるのは悪趣味の所業だが、照井を挑発するにはまたとないエサである。
 照井がシュラウドのお眼鏡にかなう人間であることを見越し、将来への布石のために照井の家族を殺したのか。それとも彼の言う通り、本当に「誰でもよかった」のだろうか。真実は井坂のみぞ知る。

 リリーとフランクは孫と祖父であると同時に、弟子と師匠でもある。余人にはうかがい知れない関係性があるのやも知れぬ。


第28話「Dが見ていた / 決死のツインマキシマム」

 マジックの厳しい指導にも、リリーは全力で取り組んでいた。強制ではなく、大好きな祖父を喜ばせるために。そんなリリーは祖父の引退に当たり、彼の十八番である人体消失のマジックを習得しようとする。目玉となる大きなマジックが使えなければ、祖父も安心して引退できないからだ。……のび太がジャイアンに無謀なケンカを挑む例の名シーンを彷彿とさせるが、リリーの使ったひみつ道具は「ウソ800」ではなくインビジブルのガイアメモリである。彼女が人体消失したのはメモリの力によってであり、大技マジックが習得できていないという問題を先送りしたに過ぎない。さらに、種も仕掛けもあるのがマジックとはいえ、仕込んだ種がガイアメモリではちょっと問題である。
 とはいえ、祖父を思うリリーの気持ちは本物であり、そんなリリーの事を語るフランクの表情もやさしい祖父のそれである。たった二人の家族はかけがえのない絆で結ばれている。
 そんなフランクの表情を見ているからこそ、照井は咄嗟にリリーへ声をかけたのだろう。「家族」に対して並々ならぬ思い入れのある照井である。心中お察し。

 いくつものメモリを取り込むことで、井坂は己の力を飛躍的に高めていく。複数のコネクタで複数個のメモリの力を引き出そうなどと無茶な肉体改造を実行してしまうのは、人体の構造を熟知している医者ならではの狂気だろうか?

 確かに霧彦さんは小柄だし井坂先生はすらっと体格がスマートでいらっしゃるけれども! 霧彦さん、井坂先生に勝てるところはあるのだろうか。風都愛とか?


第29話「悪夢なH / 眠り姫のユウウツ」

 みんな大好き時代劇回である。東映の十八番とも言う。和装の面々はいつもとはまた違った趣で大変よろしい。
 夢の中で脅されるため眠れない、という依頼人の悩みを解決するため、自らも夢の中に侵入する翔太郎達。なぜ時代劇風の夢を見ているのかというと、直前に翔太郎が亜樹子から借りた時代劇のDVDを一気見していたからであった。なんて影響されやすい人間なんだ、翔太郎。そういう性格だからこそおやっさんのハードボイルドにもどっぷりと影響されて、現在のハーフボイルドが形成されているのだろう。おやっさんがハードボイルドで硬派な探偵だったからよかったものの、もしも古今東西の名探偵のように奇矯な性格の持ち主だったら、翔太郎の性格もかなりエキセントリックな方向へ成長してしまっていたかもしれぬ。それはそれで見てみたい気もする。シャーロキアンな翔太郎とか。

 毎回毎回、組織に追われている身のわりに、フィリップは結構大胆である。自分が人目を気にしていなさすぎるせいで、自分の行動が目立っていることに気づいていないのだろうか? 枕を二つも抱えて歩いている人間なんて、下手したらSNSで大拡散である。身バレも時間の問題。だがそんな浮世離れしているところもフィリップのいいところである。


第30話「悪夢なH / 王子様は誰だ?」

×亜希子 → 〇亜樹子 何回か間違えているな……。 

ひめかりんの変・解決編。
 最初は二人だけだった鳴海探偵事務所に亜樹子もすっかりなじんで、もはや誰が欠けるところも想像できない。個人個人での関係性がよいからこそ、三人集まっている時もいい雰囲気でいられるのかも。

 こんな推理小説みたいなその場しのぎのアリバイ工作を、まさか実際にやられるとは警察も思うまい。一度しか使えない諸刃の剣だが、その一度で邪魔者をすべて排除してしまえばあとは福島の思うがままだ。
 福島の完全犯罪を妨害したのはほかならぬ亜樹子である。自分が犯人を見つけてやっつけなくては、という亜樹子の深層心理は、彼女を夢の中で仮面ライダーに変身させる。さすが所長、責任感と発想力が違う。
 ともあれ亜樹子の明瞭な寝言により、犯人の正体は明らかに。計り知れないポテンシャルである。

 肉体格納・運搬機としても緊急修繕ドックとしてもエクストリームメモリは大変優秀である。ともにWになるはずの翔太郎には特に便利な効果はなく、ただただフィリップのためだけに作られたようなメモリだ。ファング同様、フィリップを守ることに重点を置いているように見える。シュラウドの真意がうっすら透けてくる。


 完全に余談ですが、今回ヘッダにお借りしたイラストがとても素敵なのです。縦長なのでぜひ作者様のページから全体を見ていただきたく。

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