【剣】第23~24話

第23話

人々を助けることで睦月の心に湧き上がる思い。一方、カリスに近づくアンデッド。「一万年前の約束」とは何か? その行動はやがてカリスの秘密へと近づいていく。そして、亡くなった天音の父が肌身話さず持っていた家族写真を始が持っていたことを知る神丘。神丘も始、そしてカリスの過去へと近づいていく。

仮面ライダー剣(ブレイド)  第23話[公式]  東映特撮YouTube Official

相川始とカリスとイーグル

 ハカランダに突然ふらりと現れた根無し草の男。雪山で栗原晋の最期を看取り、家族写真を託された男。カテゴリーAのカードを使い、カリスの姿に変身する男。そして「スピリット」のカードを使い、人間の姿になる男。
 彼がカテゴリーAのマンティスアンデッド・カリスの力を用いていることから、剣崎達は始のことをカリスそのものだと信じ、そのように接してきた。始の側でも特に否定はせず、その認識を受け入れていた。だが、カリスと一万年来の知り合いであるらしい鷲氏、またうろちょろと出没するみゆきによると、どうやら「相川始」と「カリス」は別物であるらしい。
 その証拠が、始が変身に使用する「チェンジ」カードである。他のアンデッドたちの様子を見ていればわかるように、そもそもアンデッドが本来の怪人態となるためにカードやベルトなど必要ないのだ。始がその小道具を要することこそ、彼が「カリス」でないなによりの証拠である。そして本物の「カリス」はほかのカテゴリーA同様、カードの中に封印されてしまっている。
 鷲氏は始からカリスのカードを奪取しようともくろむが、その企てはブレイドによって阻害される。一万年前の約束、すなわち「最後の二人となって全力で戦う」ことは果たされず、鷲氏は不吉な捨て台詞を残しながら無念の封印。この約束、バトロワ物でキャラクター同士が共闘したときには必ず突き当たる問題であるが、鷲氏はそれを悩みや悲しみではなくポジティブな「約束」としてずっと抱き続けていた。負けたら死亡の人間とは異なり、アンデッド同士の勝負は負けても封印されるだけなので、後顧の憂いなく戦うことだけを楽しむことが出来るのかもしれない。「リモート」のカードがあれば封印解除も思いのままだ。
 いずれ始とも戦わねばならないという予感に剣崎は動揺している。「信じたいから信じる」と無条件の信頼を寄せ、若干異文化交流の趣はありつつも始との関係性を深めようとしてきた剣崎。始に人間の理を教える姿は、彼をより人間世界に溶け込ませようと努力しているようにも見える。
 だが、始が緑の血を流すアンデッドである以上、いつかは剣を交えねばならないときがくる。すべてのアンデッドを倒し、カードとして支配しながら、その頂点を決める一対一の戦いに臨む。「貴方たちも、内心それを望んでいるんです」……鷲氏の言葉を、剣崎も始も強く否定することはできない。
 始はイーグルアンデッドを封印せずに背を向ける。その姿は、「カリス」と「約束」への敬意のようにも見える。
 完全に余談だが、イーグルアンデッドと「カリス」の関係性に『RIDER TIME龍騎』の手塚と芝浦を思い出す。企ての全てが思い通りに進めば、彼らもまた「最後の二人」に到達していたはずだからだ。手塚はそれを恐れ、対する芝浦は命のやり取りこそが最高の愛情表現だと信じてやまなかった。鷲氏と「カリス」の間にも、そんな特別な思いのやり取りがあったのだろうか。一万年前の出来事は、流石に知る由もない。

神丘さんの話

 始の持っていた栗原家の家族写真、また恩師が残した雪山での始の写真から、始が栗原晋の死にかかわっているのではないかと疑念を抱く神丘。というか、アンデッドを間近に見た恐怖もあり、もはや犯人くらいの勢いである。それでいて自分が命を助けられたことも事実なので、「偽善者!」と吐き捨てつつもその正体をカメラに収めようとする。
 仕事中にイーグルアンデッドに攫われ、始を呼び出すためのエサにされた神丘。囮ではなく「殺すべき邪魔な獲物」扱いなのがいかにもアンデッドらしい。狙い通りにおびき出された始だが、しかし彼は神丘を殺そうとはしない。それどころか、戦いに巻き込まれそうになった神丘を身を挺して守るなどする。
 さきに戦闘を始めたブレイドとイーグルの後に続いて、自らもカリスに変身しようとする始。その姿を神丘は草むらからじっと見つめ、カメラで連射する。始は一度そちらに目をやるが、最終的にはその場で変身する。人間の姿からカリスの姿へ、コマ送りのように写し取られた証拠写真。そもそも神丘と始が知り合ったのは遥香の紹介であり、この証拠写真や例の家族写真のことを天音たちにバラされれば始は無傷では済まないだろう。それでもあえて、見せつけるように変身することを選んだのは、見て見ぬふりを続けてくれている栗原家の温情に甘え、また信頼していることの表れだろうか。
 戦いは終わり、始は一足先に現場から去る。「誤解されやすいけどいい奴」などと弁解して、剣崎もバイクでその後を追う。ついでに強引ながら家族写真の回収もしている辺り、彼は彼でいろいろ思うところもあるのだろう。
 置いていかれた神丘(そもそも鷲氏に拐されたのだから足もなければ土地勘もないだろうに……)はひとり海峡にかかる吊り橋を歩いている。ふと足を止めて海を眺め、「仮面ライダー……カリス」と呟き、口元に笑みを浮かべる神丘。そのまま彼女はおもむろにカメラからフィルムを取り出して、そのネガをゆっくりと陽光へ引き曝していく。これで「証拠写真」は完全にこの世から消滅した。デジタルデータではないので、復元は不可能だ。
 疑念は残るし、始の正体も謎のままだが、しかし彼は二度も神丘の命を救った。剣崎によれば栗原家のひとたちのことも一生懸命に守っているらしい。もう一つの証拠である家族写真も手元から失った今、神丘もまた見て見ぬふりをすることを選択したのだろう。始のことを「仮面ライダー」、人間を守るための存在であると都合よく勘違いしている――しかしてそれは、剣崎や視聴者が始に望んでいる役割でもある。

師弟の小話

 アンデッド相手に初勝利を挙げた「仮面ライダー」睦月は、それに気をよくしてさらなる強さを求め始める。上級アンデッドの封印されたカードに「カッコい~!」と目を輝かせる様子が少年らしい。レンゲルの闇を克服したはずなのに力にこだわるのは、もう本人の気質だからどうしようもなかろう。橘さんは師匠として諫めるが、それに対して睦月は舌打ちなどしている。うーん、思春期。


第24話

封印できないアンデッドが現れた。戸惑う睦月の前に現れた謎の集団。彼らはアンデッドハンターと名乗り、対アンデッドの秘密兵器を見せる。彼らの目的とは? BOARDの流れを組む新戦力が登場。彼らと接触するうち、過去に思いをはせる橘、剣崎。皆で理想を目指した、あの日々が甦るのか……。

仮面ライダー剣(ブレイド)  第24話[公式]  東映特撮YouTube Official

 本物のオートバイレーサー・山口辰也氏が本人役で特別出演する鈴鹿サーキット回。公式の仮面ライダー図鑑にちゃんとページがあってちょっと笑ってしまった。「種族:人間」ってそりゃそうでしょうよ!

狼のアンデッド

 望美と遊園地デート中の睦月は、「最近男らしくなった」と言われて嬉しそう。さきにレンゲルに心を奪われていた時の急激な変化には望美も違和感を覚えていたようだったが、闇を受け入れ成長した今の睦月には好印象のようだ。レンゲルの力を借りただけの自信と、自らの内側からにじみ出る本物の自信では、やはり周囲に与える印象も違う様子。
 そんな中遊園地に突如として現れた、人狼姿のアンデッド。すぐさま応戦する睦月=レンゲルだが、封印のカードは空を滑ってむなしく手元に跳ね返ってしまう。それもそのはず、人狼たちは文字通りのundead――アンデッドに殺された人間の死体が操られたように動き回り、他の人間を襲っていたのだ。純粋なアンデッドでない以上、封印することはできない。
 人狼は襲った人間に食らいつく様子を見せていたが、親となる狼アンデッドは彼らをどう利用しようというのだろうか。人間を混乱させる? じわじわと数を減らそうとする? 人間がアンデッドの食糧であるなら、食べ盛りをポンポン増やすのはあまり計画的な考えでもないように思えるが……。
「自分が逃がしてしまったのだから自分が責任を取る」と上級アンデッドを追おうとする睦月。だが、橘さんは彼の下心を看破している。「ただ上級アンデッドを封印して、カードが欲しいだけだ」。
 以前はその責任感、すなわち自分が封印解除したアンデッドを自分で始末しようとしたことで、睦月は橘さんの信頼を得た。今回はその責任感を言い訳にして、しかもそれをほかならぬ橘さんに最初から見透かされている。ちょっと辛いところであるが、反抗期の睦月にとっては「なにくそ」と奮起するためのスパイス程度にしかならないのかも。あまり調子に乗り過ぎて、痛い目に合わないとよいが……。

最強のマシン

 人狼たちを追って現れた、特殊部隊然とした男たち。アンデッドハンターを名乗る彼らは、かつてのBOARDから生まれた対アンデッド組織だという。ライダーシステムを持たないハンターたちはアンデッドを封印することはできない。だが個々で動く剣崎や橘さんとは違い、組織としての形がある事で、武器や装備を開発するだけの人員や能力を有しているようだ。アンデッドの動きを一時的に封じられる特殊な弾丸はすでに実践投入されているし、剣崎達のバイクよりさらに性能のアップした最新のマシン「ブラックファング」はロールアウトに向けて整備作業の真っ最中だ。
 力強い味方や格好いいマシンの登場に、剣崎はもうにこにこが止まらないと言った様子である。かねてより友達がいないと公言し、初めての友達である虎太郎にあれだけ喜んでいた剣崎であるから、仲間は増えれば増えるほど嬉しいのだろう。対する橘さんは最初こそあまり気乗りせず、むしろ警戒しているような様子であったが、もともとが複数人で研究に当たる仕事をしていた人でもあり、しまいにはすっかりチームに合流してブラックファングの開発作業を手伝っている。剣崎の危なっかしい手つきを見ていられなかった、と言うこともあろうが、そんな親心だけで徹夜作業に付き合うほど橘さんも暇ではない。ブラックファングの性能は橘さん自身も認めるところであり、それをいじくり回すのは純粋に楽しかったと見える。夜っぴて機会をいじくる姿はまるで少年の如し。

プールサイドの主

 人狼と戦う睦月にちょっかいを掛けようとして、運悪くハンターに見つかってしまうみゆき。自分の力が通用しないことに慌てつつ、その場を逃げ出していく。同じく逃亡する狼アンデッドとともにたどり着いたのは寂れたプールサイドだ。
 主のように寝そべる男、彼もまた上級アンデッドのひとりである。どうやら戦いを好まない性格のようだが、その強さは折り紙付きだ。
 一計を案じたみゆきは、男と始を戦わせようとする。強敵と戦って疲弊したところで、始の正体を暴いてやろうという算段だ。もちろん、男がそれで倒されてしまっても一向にかまわない。本人に対しては「貴方のテリトリーを侵すつもりはなかった」などと弁明していたが、ただ力の強いものを刺激したくないだけで、別に男を尊重しているわけではないのだ。強い敵に強いほかの的と潰しあってもらうのが賢いやり方である。みゆきは色んな人に「手を組もう」と提案しているが、自分自身の戦闘力に加えて周囲をも利用していくようなしたたかな手口できっと前回の戦いも勝ち抜き続け、上級アンデッドにまで上り詰めたのだろうなあ。

その他の感想

 ライダーたちの揃い踏み変身シーンはやはりテンションが上がるものだ。今話でも剣崎・睦月・橘さんが並んで一斉に変身していたが、
    /  |  \  <変身!
変身ポーズの腕の角度がちょうど睦月をはさんで対照になっており、なんとなく楽しくなると同時に(始さんの入る余地がない……)などといらぬ心配をする。睦月の隣どちらかに並べば、始さんのカードも上下の移動だからなんとなくつり合いがとれるかしらん。

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