![見出し画像](https://assets.st-note.com/production/uploads/images/121726177/rectangle_large_type_2_133d1946fba59bd91ea5202e8722718b.png?width=800)
結城丈二を忘れない(仮面ライダーV3 第43話~第52話)
はじめてライダーマンを認識したのはいつだろう、とつらつら考える。おそらくは近年のオールライダー系映画のどれかで、ちょろっと映っているのを見たのが最初ではなかろうか。顔が半分出ているので初見のインパクトはあるが、平成ライダーの個性に並ぶとちょっと地味にも見えてくる感じ。その後『オールライダー対大ショッカー』でGACKT氏演じる結城丈二に触れ、厳しい態度を士に向ける姿にかなり苛烈な印象を受けた。
このたび、彼の原典たる『仮面ライダーV3』をTTYOで完走した。ライダーマンが「仮面ライダー4号」の称号を贈られていることは知っていたので、てっきりいわゆる2号ライダーや頼れる仲間・滝和也くらいの立ち位置でがっつり絡むものだと思っていたのだが、待てど暮らせどライダーマンのラの字も現れず。やっと登場したのは全52話中の第43話、そして第51話で覚悟の殉死を遂げてしまうために、風見志郎とともに画面に映っていたのはたったの9話=2か月強でしかない。
しかし、その1クールにも満たない期間の中で、彼は怒り、絶望し、時には笑顔も見せ、そして徐々に正義の心に目覚めていった。クライマックスに向けて風見志郎がクールに研ぎ澄まされていく分、結城丈二の隠し切れない人間らしさがより際立ったようにも思える。
当初、結城丈二に「正義のために戦う」という決意は無かった。彼はあくまでもヨロイ元帥の企みによって居場所を追われたいち科学者であり、彼の戦いは復讐を第一の目的としていた。ライダーマンに変身するための義腕をつけることになったのも、元帥のせいで腕を失い、やむに已まれなかったからだ。
「まだ人体実験も済んでいない」カセットアームは幸い副作用もなく、しっかりと彼の腕に馴染んだようだ。期せずして自分が最初のテスターとなったわけだが、もしあのままデストロンに在籍し続けていれば、適当な戦闘員か怪人がその被験者となり、結城丈二はそのことに疑いを抱くこともなかっただろう。なぜなら彼は、自分の研究が人類平和のためであると心から信じ切っていた。崇高な理念と純粋な知的好奇心のみに突き動かされた時、ちっぽけな倫理観など彼の目には眩んで見えなくなってしまったのかもしれない。
だが、彼が単なるマッドサイエンティストではないことも我々はよく知っている。自分を助けるため犠牲になった部下の墓には神妙な面持ちで手を合わせているし、知り合いの子どもが攫われれば「ヒロシくんだけは助けてやってくれ」と怪人に懇願する。善悪の心は人並みに持ちつつ、それでいてデストロンや首領を絶対的に良いものだと信じていたのが結城丈二なのだ。
第48話で首領を追い詰めたV3だが、いざ止めを刺そうというときにライダーマンが邪魔をする。彼は身を挺して首領を庇ってしまったのだ。ヨロイ元帥には手ひどい目に合わされ、デストロンの悪行を知ってもなお、恩人である首領を前にすると勝手に体が動いてしまう。「恩人を守りたい」ではなく、「目の前で恩人を殺されたくない」というのがミソだ。いくらデストロンが悪だと知っても、簡単には割り切れない結城の惑いが透けて見えるようである。自分のあずかり知らぬところで首領が息絶えれば、それはそれで納得も出来るのだろう。だが、目の前で殺されそうな首領を見て見ぬふりするのは、流石に後味が悪すぎる。
戦いののち、素直に懺悔する結城に対して、風見は「お前はいい奴だな」とだけ応える。どんな状況下でも受けた恩を忘れられないところ、その罪を隠し立てせずに申し開くところ、どちらも含んだ、呆れ交じりの評価だろう。しかしその評価に対して、結城はほころぶような笑顔を見せる。まるで胸襟を開いた友に見せるような、満面の笑みだ。
そして第50話、結城との連係プレイで子どもを助けた風見は、その子どもに「あの人(結城)、風見さんの友達?」と尋ねられる。風見は少し笑って、自らに言い聞かせるような声音で「そうだよ」と答える。「敵の敵は味方」とか、「いい奴」とか、二人が互いを指すための言葉はたくさんあるが、ここで「友達」というキーワードを持ち出されたことで、風見の中でも一つパズルのピースがはまったのではないかと思わされる。
復讐から始まった結城丈二の戦いは、最終的にその本願を遂げることなく、ただ人々を守るための尊い自己犠牲としてその幕を下ろす。だが、彼は聖人君子だからその選択肢を取ったのではない。V3や人々のために自分自身がいまできることを精いっぱい探した結果が、プルトンロケットの手動誘導であったのだ。そして彼にそうさせた大きな要因の一つが、風見志郎という得難い友人の存在である。風見の戦いに乱入し、時には拳を交えつつその思想に触れたことで、結城丈二は着実に「仮面ライダー4号」へと歩んでいった。
顔半分を露出させた、中途半端な改造人間・ライダーマン。右腕以外は生身のままである彼は、その無垢な人間くささを大いに振りまきながら、短くも濃い生涯を駆け抜けていった。未来にわんさかやってくる客演に備えて、今はただ安らかに心と体を休めてほしい。
以下、各話感想。ライダーマン登場~最終話まで。
第43話「敵か味方か? 謎のライダーマン」
V3 43話見た ライダーマン爆誕! おやっさんは何故あの病院に潜入していたんだ!? 結城丈二、元デストロンの科学者として荒事にも多少の心得があるのかしらん 部下にも慕われて一見良い人風だが、いずれ大幹部になりうるとヨロイ元帥に目されていたり、首領にも死刑を惜しまれたり→
— 望戸 (@seamoon15) October 10, 2023
また人工腕を「まだ人体実験も済んでいない」と部下が述べたりしているのを見るに、いままでのびのびとデストロンでお仕事をしてきたのは紛れもない事実なんだよな……/OP映像やEDが変わって新鮮である。皮ジャン風見志郎もスタイリッシュで良き。
— 望戸 (@seamoon15) October 10, 2023
第44話「V3対ライダーマン」
V3 44話見た ライダーマン結城丈二、まだ心はデストロンにあるというのか……? 片桐助手のことといい、前話から「デストロンにも普通の人はいるんだなあ」となんだか目鱗気分である。そりゃ皆がみんな怪人みたいな考え方だったら組織が回らないか……
— 望戸 (@seamoon15) October 10, 2023
ライダーマンのマスクが何のためのものなのか(なぜ上半分なのか)常々疑問だったのだが、脳の働きを義手に連動させるための装置ということなのか。/滔々と結城丈二に説く風見志郎、本人は平気な顔をしているが、おやっさんの心配そうな顔が出迎えてくれたのでほっとした。ありがたいことだ。
— 望戸 (@seamoon15) October 10, 2023
第45話「デストロンのXマスプレゼント」
V3 45話見た 知り合いのヒロシ少年がデストロンに拐われたと知り、ブラックサンタに「ヒロシくんだけは助けてやってくれ」と懇願する結城丈二。その後他にも子どもたちが拐われていると知りまた顔色を変えていたが、サイタンクの悪事を真っ向糾弾するのではなく、あくまでも→
— 望戸 (@seamoon15) October 16, 2023
「ヨロイ元帥の非道な企みを潰す」かつ「サイタンクにはかないそうもないから言う事を聞く(言う通りにすれば子どもらを返してもらえると信じている)」というスタンスなのが、聖人君子ではない、まだ心をデストロンに残した者の姿としてとても興味深かった。デストロンが約束を守るはずがないと→
— 望戸 (@seamoon15) October 16, 2023
頭から決めつけてしまうのは我々がV3側からかの組織を見ているからであり、もともとそこに属して禄を食んでいた結城丈二にとっては、デストロンこそ(ヨロイ元帥を除けば)信頼に足る対象であるということか。
— 望戸 (@seamoon15) October 16, 2023
第46話「ライダーマンよ どこへゆく?」
V3 46話見た 結城丈二、デストロンの本性を知る。人類のため良かれと思ってデストロンに貢献していた結城丈二、よほど外部の荒事から隔離されて純粋に研究だけに打ち込んでいたのだろうなあ……あるいは理想のためと思うあまり、知らず知らず目を背けていたのか。
— 望戸 (@seamoon15) October 16, 2023
第47話「待ち伏せ! デストロン首領!!」
V3 47話見た これが噂のデストロン年賀状……! てっきりライダー宛だと思っていたが、結城丈二宛だったのか。懐かし特撮特集ではギャグとして紹介されがちだが、見え透いた罠を悠々と送ってよこすヨロイ元帥の余裕綽々ぶりにはやはりぞわっとする。鼠をいたぶる猫のようである。
— 望戸 (@seamoon15) October 23, 2023
第48話「見た! デストロン首領の顔!!」
V3 48話見た 「恩人である首領を目の前で殺されたくなく、思わず庇ってしまった」と結城丈二は告解する。苦いものを無理やり飲み込んだような笑顔の風見志郎は、「お前はいい奴だな」と静かにそれを赦す。風見の手を取る結城丈二は満面の笑みである。うら寂しい海岸での、この表情の対比!
— 望戸 (@seamoon15) October 23, 2023
元はと言えば殺された家族の復讐のため、デストロンを壊滅せんと息巻いていた風見志郎である。私的な義理と人情を持ち出されれば、彼はそれを受け容れるほかない。結城への理解とデストロンへの敵対心が入り混じった複雑な心が、「いい奴」の一言に込もっているのだろう。
— 望戸 (@seamoon15) October 23, 2023
結城も結城で、ひどく純粋な印象を受けた。彼にとっては首領への恩義も風見への友情も等しく大切にすべきもので、普段はデストロンやヨロイ元帥を倒さんとする気持ちが勝っているが、いざという場面ではつい体が動いてしまう。あの笑顔は、風見の理解を得たことへの喜びの表情に見えた。
— 望戸 (@seamoon15) October 23, 2023
第49話「銃声一発! 風見志郎倒る!!」
V3 49話見た 敵の兇弾により力のコントロールができなくなった風見志郎。結城丈二に匿われた部屋でアコギをそっと手に取り、(もしかして制御が戻ったのか?)とホッとしたような顔で優しくつま弾き始めた途端に弦が弾け切れてしまう絶望感。勝手に期待して即座に落とされるのは辛いよな〜〜
— 望戸 (@seamoon15) October 30, 2023
後天的改造人間が力を制御できないエピソードほど悲しいものはない。普段いくらうまく人間社会に溶け込んでいるつもりでも、こうやって化けの皮を剝がされてしまえば、もはやこれまで通りではいられない。
幸い風見のコントロールは元に戻ったが、もしかすると最終決戦後に旅に出る遠因になってしまったのではないか……などと妄想してしまう。切ない。
第50話「小さな友情」
V3 50話見た 助けた子どもを風見志郎に引渡し、すっと無言で去っていく結城丈二。「あの人、風見さんの友達?」と聞かれた風見の反応がよい。「あ?」と驚いたような声を出し、「あはっ……」と困ったような笑い声を上げてから、「……そうだよ」と静かに答える。
— 望戸 (@seamoon15) October 30, 2023
風見と結城は敵を同じくする者同士である。結城は会長や純子のことも助けてくれるし、共に打倒デストロンを掲げる仲間と言っても過言ではないが、改めてその関係性を問われると、きっと風見もどこか気恥ずかしかったのだろうなあ。友達らしいことを二人でしているわけではないが、→
— 望戸 (@seamoon15) October 30, 2023
強いて子どもに分かりやすく説明しようと思えば、やっぱりその言葉が一番手っ取り早いか。否定しない風見自身も、結城に対して親愛の情のようなものを抱き始めているように見える。なんてったって結城は「いい奴」で、風見はそういうところを含めて結城と共闘しているのだ。
— 望戸 (@seamoon15) October 30, 2023
第51話「ライダー4号は君だ!!」
V3 51話見た ライダーマン散る! 最後の最後で初出しのテーマソングを流してくるのは涙腺によくない……/風見志郎を逃がした偽医者のセリフが印象的。いままではデストロンに心酔していたのに、最後の最後でふっと我にかえってしまったのだろうな。
— 望戸 (@seamoon15) November 6, 2023
このテーマソング、タイトルがずばり「ぼくのライダーマン」なわけだが、ライダーマンのことを「弾む 明るい君」と述べている。結城丈二の人柄が偲ばれる歌詞である。デストロンではなくもっと別のところで評価されていれば、あの海辺での笑顔をもっと見ることが出来たのかもしれない。
デストロンが乗っ取った病院で偽医者に拘束されるも、その偽医者の手引きで脱出を果たす風見志郎。プルトンロケットの計画を知っている偽医者は、東京に残してきた家族の身を案じている。そして、自らが処刑されるリスクを顧みずに、すべての希望を風見に託したのだ。遠くから一気に東京を壊滅せしめんとする首領とヨロイ元帥のやり方はやはり強引すぎるので、このような造反者も出てきてしまうのだろう。デストロン、案外一枚岩ではない。真の理念を隠して結城を雇っていた前例もあるし、「全構成員が組織に心酔してその理念に身命を捧げる」というよりは「利用できそうな人員を手広く集め、秘密裏に幹部連中だけが事を進めていく」という感じの組織だったのかもしれない。
第52話「デストロン最後の日」
V3 52話見た(完) ザリガーナの奥の手・甲羅崩し、なんておそろしいわざなんだ……/「V3、デストロンの悪の手から、あたし達人間を救ってください」。水面の純子が必死に祈る。骸骨の首領も、改造人間のV3=志郎も、「あたし達人間」とは別の生物として理解されているのだなあ、という寂しさ
— 望戸 (@seamoon15) November 6, 2023
V3、まるで神様のような扱いである。そして神様は人間と一緒には暮らしていけない。風見とV3が姿を消したのも、ある意味では仕方のないことなのだ。
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?