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【トッキュウジャー】41話~43話

第41駅「クリスマス大決戦」

 ゼットはシャドーラインに君臨し、幹部たちの支持を得てはいるが、彼自身は別によき君主たらんとしているわけではない。お目付け役のモルグ侯爵にしょっちゅう小言を言われつつ、それでもゼットが皇帝でいられるのは、単純に彼の持つ闇が一番濃く深く強いからだ。少し本気を出せば、幹部連中など一薙ぎである。
 シャドーラインの版図を広げ、すべての路線を闇色に塗り替えた後、ゼットは何を望むのだろう。
 あるいは、何も望まないからこそゼットの闇は美しいのかもしれない。ただ闇が闇であるだけのために、彼は世界を蹂躙するのだ。

 一時シュバルツ側についていた明がトッキュウジャーに戻ってくる。歓迎しているのは5人ばかりかと思いきや、車内の電光掲示板も「おかえりなさい」の表示。裏切者扱いで断罪されることを恐れていたのだが、その心配は無用だったようだ。シュバルツの傍にいる時でもレインボーラインの力を用い、トッキュウ6号に変身できていた明である。心の芯まで闇に戻ったわけではなく、やむを得ない行動だということはきちんとお偉方にもつたわっているらしい。
 楽しいパーティーを過ごすトッキュウジャーたちとは対照的に、グリッタはひとりシュバルツのクライナーで闇夜を走る。彼女の命がけの恋は終わってしまったのだ。中世ヨーロッパなら修道院にでも入って喪に服すところだが、グリッタにはまだやるべきことがある。ひとりぼっちだけれど、彼女はもう大丈夫だ。グリッタの生きるよすがはもはや二度と誰にも奪われずに、彼女の心の中にある。


第42駅「君に届く言葉」

くじけそうな時でも
想像すれば 不可能なんてない
きっと出来るはず!

伊勢大貴「烈車戦隊トッキュウジャー」の歌詞 / 歌詞検索サービス「歌ネット」

 絶対に届くとイメージすれば、手紙も、思いも届くのだ。イマジネーションで動くレインボーラインだからこそ配達できる、5人の思いが詰まった手紙。時間の止まった昴ヶ浜へ、祈りを込めて撃ち出す。

 みんなの前でも、手紙を書く時でさえ、ついつい気丈に振る舞ってしまうミオ。それ自体は悪い事ではないが、トカッチは彼女にもっと素直になってほしいと願っている。
 ミオの心をほぐすマジックアイテムが、遠足で食べた大きなおにぎりだ。不器用に握られたそれはお父さんからミオへのダイレクトな愛情表現である。並んでお弁当を食べていたトカッチは、その時のミオの嬉しそうな顔をきっと鮮明に覚えていたのだろう。
 トカッチが手ずから握ったおにぎりをミオは頬張る。大きさは全然違うけれど、これも思いのこもった手料理だ。米粒が口の中でほどけていくように、ミオの張りつめていた心もゆるやかに剥き出しになる。

 リョウ兄ちゃんはトカッチの憧れのヒーローだ。そして、最も身近な対比物でもある。きょうだいの常として、リョウ兄ちゃんが完璧であればあるほど、翻ってトカッチは自分の事を考えずにはいられない。優秀な兄を持った弟への、周囲の期待やプレッシャー。時には自己嫌悪に落ち込むこともあっただろう。
 だがそれでも、リョウ兄ちゃんは「リョーナイト」であり続けている。結局のところ、トカッチはリョウ兄ちゃんが大好きなのだ。自分を卑下しすぎることも、相手を逆恨みするようなこともない。
 明るくてしっかり者のミオも、快活なリョウ兄ちゃんと似たような雰囲気を持っている。別にミオがリョウ兄ちゃんに似ているから、トカッチは彼女を好きになったわけではない(現にトカッチは、子どもらしい素直な気持ちをさらけ出すようミオに進言している)。リョウ兄ちゃん=リョーナイトとの一方的に庇護される関係を援用するのではなく、ミオの弱い部分を認め、それを受け入れる関係を、トカッチは目指している。守られていたトカッチが守る側になろうというのだ。これも、トッキュウジャーとして戦ってきたがゆえの成長の一環だろうか。

 犯人もとい敏腕スタイリストについてはだいたい目星がついている。明くんの衣装合わせを嬉々として手伝うワゴンさんの姿が目に浮かぶようです。
 明のハーモニカもそうだが、一人で移動・作業する時間が多くなる保線員の方々はみな音楽に秀でていらっしゃるのだろうか。思いがけず楽しげなライトたちの姿が見られて眼福。超英雄祭はここにあったのか。


第43駅「開かない扉」

 家に帰れないことを恐れるカグラが家に閉じ込められてしまうお話。
 カグラの悪夢は家族から他人扱いされるものだったが、ヒカリはすでにそれを実地で体験している。教育実習生のさくら先生は、ヒカリたちと過ごした時間の事をすっぽり忘れてしまっていた。だが、たとえ相手がこちらを忘れていたとしても、さくら先生はヒカリにとって大切な存在だ。大切な人を守りたいという思いは、相手から忘れられたとしても持ち続けて構わないのだ。
 ヒカリに諭され、カグラもまた決意を新たにする。家族が幸せに暮らすことは、彼女にとっても幸いだ。たとえ離れていたとしても、その事実は揺るがない。

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