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【ゴーオンジャー】第47~48話

GP-47「内閣カイゾウ」

「がんばる! 押しかけ! 参加組!!」回。この二人名乗り良いなあ。スカウトされた走輔たちや素質を見出された大翔たちとは異なり、範人と軍平はあくまでも自ら挙手してゴーオンジャーになった、いわば二期生である。志望動機には正義の心ももちろんだが、ゴーオンジャー一期生への憧れ(「かっこよすぎる」)も含まれている。
 もちろん、憧れだけで身体を張った戦いを続けられるわけではない。たとえば今回も軍平に女装を迫られていた(お見合い避けに使うらしい)範人は、ガーリーなワンピースを無理なく着こなせる(と見込まれる)ような体格に整った顔立ち、連にも「どこか軟弱っす」と笑われるような雰囲気の持ち主だ。だが、銭湯であらわにした上半身には、見るだけで痛々しい大きな傷が二つも残っている。「こないだ掃治大臣にやられたやつ」「バルカをケガレシアから取り返そうとしたときの傷」と淡々と説明する範人に、無理をしているような気負いはない。範人には範人の、そして軍平には軍平の正義への思いがあり、それが彼らを戦いの場に向かわせるのだ。
 冒頭の名乗りを挙げて、ふたりは危官房長官チラカソーネの前に立ちはだかる。すべてのエネルギー攻撃を受け止めてこねくり回し、吸収・再放出してくるチラカソーネを倒すためには、相手が技を放っている隙をついて攻撃するしかない。走輔たちがたどり着きつつも「誰が囮の犠牲になるのか」問題によって却下したこの結論に、範人達も同じく思い至っていた。そして二人は、自ら志願してその囮役を務めんとする。
 グリーン・ブラックのジャンクションライフルは例によって跳ね返されたものの、あくまでも想定どおり。横から放たれたレッドたちの攻撃により、見事チラカソーネは爆散する。すぐさまドッキリウムエナジーで巨大化したが、エネルギー許容量を超えるガンバルグランプリの一撃によってまたも撃破。押しかけ参加組、完全勝利である。
 だが、不吉な予感が大翔と美羽を貫く。厳かに現れた総裏大臣ヨゴシマクリタインの正義解散ビームを浴びて、合体がとけてしまうガンバルオー。転がったガンパードやバルカ、キャリゲーターが、そして範人と軍平までもが、光の粒となって消えてしまう。倒れ込みながら必死に互いへ手を伸ばそうとする範人と軍平。だが、その指先が触れることは叶わず、力なく地面に倒れた体は悔しげな表情だけを残して、わずかな煙とともにはじけて消える。駆け付けた走輔が必死に光の粒を捕まえようとしているのがいじらしくも切ない。「5人でいるのが普通になってたよね」……当たり前の日常の価値を再確認したばかりだったからこそ、胸に迫るものがある。

 余談。ムゲンゴミバコから唐突に現れた総裏大臣と危官房長官(聞かん坊な良いネーミング!)に何の疑いもなく畏まるキタネイダスとケガレシア。自分たちの大ボスについて何も知らない様子だったが、大丈夫かガイアークの組織体制……? 悪い人に詐欺られて乗っ取られたりしない? 気を付けてね? 3つのプレーンワールドを制圧したのも結局キレイズキーの仕事なのかチラカソーネの仕事なのか有耶無耶にされていたし……。
 ヨゴシマクリタイン様はムゲンゴミバコをまるでお菓子ボックスのごとく傍らに置いてむしゃむしゃやっている。三大臣は酒ばかり飲んでいたので、おやつ感覚なのがちょっとかわいく見えてくる。


GP-48「正義カイサン」

「俺がどうしてゴーオンゴールドになったかわかるか」
「……合体好きなんだろ。美羽が言ってた」
「ハハッ! 違う。俺にしか、俺と美羽にしかできない、オンリーワンを探していたからだ」

 大翔と美羽は、瀕死のトリプターとガンパードを助けたことによりその素質を見出され、ゴーオンウイングスとなった。彼らの鋭い感性は天賦の物であり、確かに余人をもって代えがたい。だが、世界を守るためにいざ戦いの場へ出場してみれば、そこには何とも頼りない先輩ヒーロー・ゴーオンジャーがいた。
 無鉄砲な走輔。卵料理ばかり作る連。おっちょこちょいな早輝。お調子者の範人に、頑固な軍平。最初こそいざこざもあったけれど、今ではみんなかけがえのない仲間だ。
 大翔と美羽には、すぐに日本を離れるようにとの言いつけが下っている。スイスにいる彼らの両親は、危険な戦いに巻き込まれている兄妹、特に花を愛する優しい美羽のことを大変心配しているらしい。
 だが、二人はその言いつけを拒否する。押しかけ参加組ならぬ後から合流組のゴーオンウイングスとして、大翔たちにはやらなければいけないことがある。残されたゴーオンジャーの三人を支え、励まし、再び前を向かせること。
「じい、私は巻き込まれてなんかいない。これは、私が自分で選んだ戦いなの」
 引っ越しの準備を進めようとする執事にそう言い放ち、美羽と大翔は家を飛び出していく。現れたるはケッテイバンキ、今までの蛮機獣の特徴をすべて併せ持った、まさに決定版の蛮機獣である。

 隠し切れぬ動揺を表に出したまま、統率もろくに取れないゴーオンジャー。ウイングスはなんとか彼らを落ち着かせようとするが、却って走輔の態度は頑なになる一方。その間にもケッテイバンキの攻撃が彼らを襲い、街は焦土と化していく。
 瓦礫の中に分断された、走輔・大翔と蓮・早輝・美羽。どこまでも一人で突っ込もうとする走輔、怯えて戦う気力を失くした連と早輝に、兄妹はそれぞれ語り掛ける。ゴーオンジャーとゴーオンウイングス、名前は違えどともに戦う仲間であり、軍平や範人を心配する気持ちも変わらない。世界一頼もしい仲間と一緒に戦っている限り、自分たちはどんな敵にも負けない、と。
 須藤兄妹の支えによって前を向く力を取り戻したゴーオンジャーは、巨大化したケッテイバンキとの戦いに挑む。そしてセイクウオーのナイスアシストにより、見事撃破に成功。
 だが、そこにヨゴシマクリタインが現れる。
 エンジンオーを飛び降りて、一人果敢に飛び掛かっていく走輔。だが、ヨゴシマクリタインは彼のことなど歯牙にもかけない。伝家の宝刀・正義解体の矛先は、キョウレツオーとエンジンオーに向けられている。
「美羽、覚悟はいいか」
「もちろん! 私たちにしかできない、オンリーワンの仕事ね」
 セイクウオーの中で二人は頷きを交わす。
 はじめ、大翔たちは世界を守って戦うことこそが自分たちのオンリーワンの使命だと信じていた。だが、走輔たちと出会い、ともに時間を過ごしたことで、それはオンリーワンではなく、ワンオブゼムの役目だと気付く。自分たちだけで世界を救うのではない。彼らと一緒に、彼らと一緒だから、世界を救うことが出来るのだ。
 それでは改めて、兄妹にしかできないオンリーワンとはなにか?
「ここには、支えを必要としてる者がいる。それが出来るのは、俺たちだけなんだ」
 出撃前、大翔は執事にそう微笑んだ。そしてその言葉を実行に移すべく、セイクウオーはエンジンオーの前に立ちはだかる。

 エンジンオーの身代わりとなって正義解体ビームを浴び、セイクウオーを構成していた炎神たちははじけるように合体を解く。自らも消えかかりながら、大翔はボンパーに叫ぶ。
「感度最大でこの現象のデータを取れ! 急げボンパー!」
 エンジンオーを守るだけではなく、敵の攻撃の貴重なデータサンプルとして、自ら攻撃を受ける。これが、ゴーオンウイングスがゴーオンジャーにできる、最大限の「支え」だ。さきの叱咤激励だけでも十分その役目を果たし、早輝たちの心の支えになってくれたのに、さらにその上を行く肝の座り方。天晴の一言である。
 もやもやとした光に包まれながら、大翔は「大丈夫だ」と力強く断言する。「お前たちなら、この世界を救える」
「信じてる、から、ね」
 アニ、と呟いて、美羽は大翔にいざり寄る。大翔はその肩をぎゅっと抱きしめ、……舞い落ちる光の粒が、ゆるやかに走輔たちのもとに降り注ぐ。
 へたり込む連、俯く早輝。だが、走輔は立ち上がる。袖で乱暴に涙を拭うと、キッと上空を睨みつける。ゴーオンジャー、再起の時である。


 ゴーオンジャーとゴーオンウイングス。仲間同士でありながら、彼らは不思議な距離感を保ってここまでやってきた。同じ「ゴーオン」の名を持ちながらも、兄妹はかたくなに「ウイングス」を名乗り、「ゴーオンジャー」へ合流しようとはしない。自分たち自身や相棒の出自(セレブであったりウイング族であったりすること)、住む場所や出撃フローの違いなど、いくつか理由はあるだろう。初期にバチバチ対立していたことも、きっと理由の一つだ。あの時期の存在により、「ゴーオンジャー」と「ウイングス」は別個のチームとしての存在感をそれぞれ獲得していった。そして対立がなくなり協力関係となった後も、すでに完成された一つのチームである「ゴーオンジャー」に、「ウイングス」は敢えて割り込もうとはしなった。ゴーオンジャー側の方も、殊更に彼らを引き込もうとはしなかった。7人組ではなく5+2人組。
 軍平と範人の消滅に際し、大翔の冷静さの理由を、「お前は平気なんだよな。ゴーオンジャーじゃなくて、ゴーオンウイングスだから」と、走輔はそのチーム制に求めようとする。もちろん「馬鹿野郎」と一蹴されるのだが、ある意味では走輔の指摘は的を射ている。仲間ではあるものの外側の人間だからこそ、非常事態にも一線を引いて対応することが出来る。ウイングスがゴーオンジャーの支えになれるのは、彼らがウイングスであるが故なのだ。

 余談。疲れたり腹が減ったりと、正義解散ビームを一度に撃てるのはどうやら二発が限界らしい。そこに勝機があるか。おやつボックスa.k.aムゲンゴミバコを持ち込まれてしまえば話は変わってくるが……。
 大翔たちが命懸けで残したデータの解析結果も気になるところ。ヨゴシマクリタイン曰くあのビームを受けた者は無になってしまうらしいが、はてさて。
 全ての蛮機獣のデータを注ぎ込んだサイキョウバンキを倒されてしまったキタ様とケガレシア様、もはや後がない状態である。かくなる上は自ら巨大化するくらいしか道が残されていないが、巨大ケガレシア様がギャグ扱いになってしまうのは初夢回ですでに履修済だしなあ。悩ましい所。


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