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【バトルフィーバーJ】第43~44話


第43話「暗殺者ジャッカル」

 新たなる御子・ゴロンゴ怪人がなかなか生まれてこないことに業を煮やしたエゴスは、一刻も早くバトルフィーバー隊を始末するために暗殺者を雇う。サバンナの砂のようなベージュの背広に海老茶のネクタイを合わせ、バイオリンケースに狙撃銃を詰めて現れた彼は暗号名ジャッカルと呼ばれている。本名は竹内剛、かつて四郎と共にアフリカで動物保護に従事していた男だ。
 バトルケニアの正体が曙四郎だと知ったジャッカルは動揺し、引き金を引くタイミングを逃す。そして最後まで四郎を殺すことができないまま、ゴロンゴ怪人による攻撃の余波を受けて命を落とすことになる。

 暗殺稼業に転身した理由を四郎に糾弾され、ジャッカルはカネのためだと答える。
「この世はカネがすべてだ。アフリカでの奉仕活動なんて、ばかばかしくなったのさ」
「そんな話聞きたくない!」
 早口で遮る四郎。まるで子どもが駄々をこねるような必死さだ。実際、彼は目の前の事実を信じたくなどないのだろう。四郎の脳裏に浮かぶのは、かつてライオンの仔を抱いて笑っていた剛の姿ばかりだ。
 初めてスコープの向こうに四郎の顔を見つけた時、ジャッカルは気まずそうになんども銃を構えては離し、構えては離しを繰り返していた。とうとう覚悟を決めようとしたところでジャパンたちに現場を抑えられ、彼はエゴスの基地へ逃げ帰る。手付金を取り上げられそうになったジャッカルは、自らの名に懸けて必ず暗殺を成功させると啖呵を切り、再び札束を奪い返す。
 今話の冒頭、ケニアは動物のジャッカルについて、サバンナで腐肉を漁る動物であると説明している。もう後がない殺し屋ジャッカルも、その名の通り、合理的かつしたたかに振る舞う。自分が呼び出せば四郎は必ず一人で現れるはずだ、と彼は踏んだ。そのうえで手負いの少女を病室から攫い、自分が銃撃されないための心理的な盾として用いたのだ。射撃が得意でない四郎では、撃ったところで人質に怪我をさせてしまうかもしれない。現に四郎は銃を構えながらも引き金を引くことが出来ない。
 四郎に出来るのは、旧友を信じて丸腰で歩み寄ることだけである。銃口を恐れずこちらへ歩いてくる四郎に、ジャッカルは「来るな!」と何度も叫ぶ。そしてとうとう、まっすぐな四郎の視線に耐え切れなくなったのか、その引き金を引いてしまう。
 どんなに不安定な足場からでも過たずに獲物を撃ち抜ける暗殺者ジャッカル。だが、ジャッカルの撃った弾は四郎の心臓ではなく肩を貫いていた。四郎はこの弾のブレを、ジャッカルの心の奥に残された剛の優しさに起因するものだと信じ、傷の痛みを切なさと共に噛みしめている。
 死人に口なし、と纏めてしまうと少々乱暴だが、亡くなった者の行動を生者がどう解釈するかは、答え合わせが出来ない以上どこまでも自由だ。四郎がそう信じるなら、四郎にとってはそれこそがまぎれもない真実になる。そこには余人(たとえジャッカル本人であろうとも!)の立ち入る隙などないのだ。
 戦いが終わったら剛の遺骨をサバンナへ連れて行こう、と四郎は墓標代わりの狙撃銃を見つめる。自分たちの命を狙った暗殺者の遺骸を、彼はきっと泣きながら弔い、荼毘に付したのであろう。剛が死に、四郎が生き残ったことで、皮肉にも二人の友情は永遠のものとなったのである。

 余談。
 ジャッカルに狙撃テストをさせつつ足場の吊り橋を揺らしまくるゴロンゴ怪人の小物っぷりよ。自分の難産について父に小言を言われたのがよっぽど悔しかった者と見える。結局、ジャッカルの腕の確かさを証明するだけの結果になってしまったが……。
 ゴロンゴロボの動きも軽快で楽しい。BFロボの槍の穂先に立つほどの身軽さは兄をもしのぐものである。あんなに大きいのによく動くなあ! エゴスの科学技術、もしかしてめちゃくちゃすごいのでは。


第44話「地獄谷の月影一族」

 にせバトルフィーバーあらわる! の巻。
 パステルカラーのカラフルな頭巾をすっぽりとかぶり、たくましい足を網タイツで包んだ5人組。胸にJの一文字をしっかりと縫い付けた彼らにせバトルフィーバー隊は、モンシロお蝶ことゲンソウ怪人の指図でひとりの女子大生を殺害する。彼女はお蝶の古巣である月影一族の娘だ。エゴスとゲンソウ怪人の狙いは、月影一族とバトルフィーバー隊を潰しあわせるところにある。
 偽物たちのお衣装は正直そこまで似せようとはしていないようだが、「自分を襲ったのはバトルフィーバー隊だ」と被害者に思い込ませるのが目的であるので、むしろ奇抜であればあるほど目的にかなっているのかもしれない。夜道であんなのに出くわしたら多分一生忘れられないぞ……。
 同胞からの狼煙を受け、復讐のため山を下りた月影一族。今回の被害者のように街で暮らしているものも多いようだし、バトルフィーバー隊の正体は独自の伝手で手に入れたか。アメリカ達が通る道に待ち伏せしたり、スナックケニヤに直接姿を見せたりするのはともかくとして、フランスの行きつけの床屋まで調べ上げているのは恐れ入った。髭を当たられている間はどうしたって無防備になるし、理容師なら剃刀を持って近づいても警戒されることは無い。縛り上げた床屋の亭主を近場の床に転がしておいたところだけは詰めが甘かったようだが。
 たまたま月影一族と正夫が知り合いであったため、バトルフィーバー隊は誤解を解くチャンスを与えられ、正夫は見事誠意を示して見せた。正夫は一族に大変な恩があるように言っていたが、月影一族の方でも正夫青年のことを正しく評価していたと見える。でなければ、剣と剣を交える機会すら持つことが出来なかったに違いない。
 そして正夫たちの手引きにより、月影一族はみごとにせバトルフィーバーを討ち取る。偽物を取り囲んだ一同は、あとからやって来た月影一族にさっと場を譲り、望み通り仇を取らせてやる。人々の平和を守るヒーローとしては三角の行動かもしれないが、月影一族の強さは各人が身をもって知るところであり、万に一つも取り逃がすようなことは無いと踏んだのだろう。義理人情を優先した私情采配だが、文句を言う人間も居るまい。

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