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【マジレンジャー】35~36話

Stage.35「神々の谷 〜マジ・マジ・ジジル〜」

 メーミィやブランケン、ウルザードの前ではもう少し大人っぽく振る舞っていたバンキュリアも、言い伝えの神々の前では緊張してしまうのか、ついつい動揺を隠しきれず、感情があらわにになっているようだ。口調がナイとメアのものに似ている。同一人物なのだから当然と言えば当然であるが、少し新鮮。
 ナイとメアについて、バンキュリアの知性を二つに分けたために少しおつむの軽い設定なのかと思っていたが、予言の書もすらすら読めるし(活字を嫌がらない)、「あえて子どもっぽく振る舞いたいときにバンキュリアがとる姿」なだけの気がしてきた。

 初登場、冥府十神。こうも人数を強調されると、うっかり残り話数を指折り数えてみたくなる。ぎりぎり倒しきれる計算だろうか。
 サイクロプスからはガデゾーン(@RX)のような雰囲気が漂っていて好感が持てる。ワイバーンは一見好青年でナイメアにも優しげに見えるが、腐っても冥府神の一員である。後で何かどんでん返しが来るものと思って、心してかからねばなるまい。

 母の生存の報を受け、きょうだいたちがはやる気持ちもわかるが、麗のプレッシャーは相当の物であろう。なにせ母を見つけ出す手掛かりは、今のところ自分の占いのみなのだ。節約回でも垣間見えたように、麗の責任感の強さはきょうだいの中でも群を抜いている。だから魔法力を高めるローブを着て、一生懸命に水晶玉へ問いかける。……しかし、魔法の成否がメンタルに大きく左右されることは、ここまでの34話ですでに見てきたとおりである。
 今の麗に一番必要なのはリラックスだ。だが、きょうだいの期待がそれを許さない。応援することしかできないきょうだいたちの気持ちもわからないではないが、麗にとってはそれこそがストレスとなってしまう。
 追い打ちをかけたのがヒカル先生の一言だ。「いつもの麗らしくない」――いつもだったらしっかり占いを成功させられているはずだと、麗は自分でもわかっているのだ。だからこそ激しく自分にいら立ち、自棄になってしまう。

 ヒカル先生が記憶を読み取る魔法を習得してくれていて本当によかった。思い出の地に向かうことで麗の占いの精度が上がるのはもちろんのこと、皆の記憶をつなぎ合わせるという行為自体が、麗任せでなくみんなで母の居場所を探るというひとつの儀式になる。麗一人にのしかかっていた責任はわずかずつながらきょうだいたちにも分配される。
 ウルザードはマジマザーにとどめを刺さず、こっそりとどこかへ隠匿した。インフェルシアの監視下にあって、妻を手にかけることを避けるには、おそらくそうするしかなかったのだろう。おそらくウルザードが正気を取り戻したのはほんのひとときであろうが、どんなに小さな矢傷でも、放っておけばそのひびは広がっていくものだ。折に触れて魁たちを導くような行動をとっていたのは、無意識のうちに父としての思いがにじみ出ていた結果なのかもしれない。


Stage.36「神罰執行 〜マージ・ゴル・ゴジカ〜」

 冥府の神だからと言って好き勝手に振る舞えるわけではなく、十人の中にも上下関係や戒律がある。闇の戒律により、冥府神は自らさだめたルールを遵守せねばならない。それができなければ死あるのみ。相手を舐めてハンデをつけると、後で痛い目を見ることになるのである。

 自ら与えたハンデに首を絞められて、イフリートはその命を失う。手を下したのは冥府十神の実質的なリーダー、ダゴン。悠久の時を共に過ごしてきたのだろう仲間を処分するにあたり、一切の躊躇を見せない。それほどまでに闇の戒律は絶対なのである。
 対するマジトピアにおいても、言い伝えは絶対であり、必ず守られなければならないものであった。冥府神の侵攻にあっても、地上の人間は反撃をしてはならない。さもなくば地上も天界もともに滅びてしまう。当初は言い伝えを遵守し、一人で戦おうとしていたヒカル先生だが、麗のアップルパイに込められた思いに心を動かされる。小津家のきょうだいたちが新しい未来を作り上げるだけの素地を持っていることは、間近で採点してきたヒカル先生が一番よく知っているのだ。

 母の思い出の味と、そこに込められた願いを共有してもいいと思うくらいには、麗はヒカル先生に心を許している。散々一緒に暮らしてきて今更ではあるが、一つの皿から切り分けたパイを共に食するという行為は、ただ食卓を囲むよりも、より親密さを強く感じさせる。
 かつてきょうだいたちが天空聖者となりかけた時、それまでの関係性や記憶はすべて消去されるとの説明があった。ブレイジェルのように天空聖者になってから家庭を持てばともかくとして、今のヒカル先生には、もしかすると「家族」と呼べる存在はいないのかもしれない。小津家に居候する中で、きょうだいたちから家族同然に扱われ、その温かい絆を享受していたがゆえに、「お前は家族ではない」と突き付けられることが思わず手が出るほどにショックだったのではないか。

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