【マジレンジャー】33~34話

Stage.33「インフェルシアへ 〜マージ・ゴル・マジカ〜」

 強い力の塊が目の前にあるのだから、それを使わない道理はあるまい。天空聖者に近しいレジェンドパワーであってもン・マ様復活に利用できるのは少し不思議だが、要は高エネルギーであればなんでもよいということなのかもしれない。電力と同じで、発電方法は問わないのだろう。

 とうとうウルザードの正体が明らかに。もしかしてメーミィは正体に気づいて利用しているのではないかとうっすら思っていたのだが、あの反応を見るにどうやら全くそんなことは無かったようだ。

 レジェンドはレジェンドでも、自分のところの世界観における先達のことなのでセーフ。
 メーミィがヒカル先生たちを呼び出したのは、ブレイジェルによって倒された冥獣や冥獣人たちの墓場である。ブレイジェルの弟子たるふたりを葬る場所として、なかなかの選択だ。また、インフェルシアに連れ帰ってじわじわいたぶったりせずに、マルデヨーナ世界の中だけで始末をつけてしまおうとするあたりもメーミィの慎重さがうかがえる。折角拉致した五色の魔法使いに下手に近づけると、どんな奇跡的な展開で逆襲されるかわかったものではない。


Stage.34「勇気の絆 〜ゴール・ゴル・ゴルド〜」

 スモーキーの機転によって難を逃れたヒカル先生たちはインフェルシアへ向かい、魁たちを人間界へ送り返す。ヒカル先生VSメーミィ、マジレンジャーVS再び正気を失ったウルザードの戦いが同時進行していく。
 ヒカル先生ことサンジェルと、メーミィことライジェルは、ブレイジェルの弟子であった者同士、天空聖者の果し合いの作法デュエル・ボンドによって決着をつけることになる。天空聖者といえど決闘をせねばならぬような機会もあるのか。魁たちも魔力の高まりにより天空聖者になりかけたことだし、「聖者」といえども人格の高潔さはそこまで求められていないのだろうか。ともあれ立会人のルナジェルが見守る中、サンジェルとライジェルの手首は鎖でつながれた。魔法の使用を一切禁じられた、剣術のみでの一騎打ちが始まる。
 あれほどライジェルの姿になることを嫌がっていたメーミィである。わざわざデュエル・ボンドなど持ち出してきたのは当然のように罠であり、「いまの自分はライジェルでなくメーミィなのでルールは無効」などと屁理屈をこねて魔法での攻撃を仕掛けてくる。だがサンジェルはあくまでも決闘のルールを遵守し、剣さばきのみでメーミィを圧倒、打ち倒すことに成功する。不吉な予言を残しながら、メーミィの身体は砂となって消えた。決着は付けたものの、ヒカル先生とルナジェルの表情は明るくない。
 一方の魁たちは、人間界で父と向き合っている。再開を涙ながらに喜ぶ兄姉とは対照的に、魁はひとりその正体を受け入れられずにいる。兄姉と違って、魁には父親の記憶がないのだ。写真で見たことはあっても、実物の父とはほぼ初対面に近い。今までさんざん母の仇として憎んできた相手が実は初めて会う実の父だったと分かっても、喜びより先に困惑が訪れるのは仕方ないところだ。
 頑なに拒絶する魁の前で、父に異変が起きる。またもウルザードの姿へと変貌し、襲い掛かってきたのだ。魁はウルザードに食らいつき、勝負をつけようとする。だが、その心境には明らかな変化があった。自分には父親の記憶が無いからこそ、唯一の父との思い出がウルザードとの戦いの記憶になってしまうのは忍びない。だから、元に戻ってほしい。……きょうだいの中で、魁にしかできない叫びだ。
 魁の呼びかけで再び父は正気を取り戻す。ン・マ様の強大な力を自らの魔力で打ち破り、父は完全に自分の制御を取り戻した。みんなで一気にインフェルシアを倒そう、と盛り上がるきょうだいたちに、しかし父は一つの呪文を唱える。途端に膝が砕けたように動けなくなるきょうだいたち。父はあくまでもン・マ様との一騎打ちを望んでいた。それが自らのけじめであり、子どもたちを巻き込むわけにはいかない、と。家族を守るためインフェルシアの討伐を決めた勇者ブレイジェルにとっては当然の行動だが、きょうだいたちは完全に虚を突かれた形である。折角父が戻ってきて、これからまた家族として絆を深めていけると思っていたのに。
 魁たちの目の前で、父=ブレイジェルはン・マ様へ斬りかかり、インフェルシアの奥深くへと沈んでいく。死んだはずの母が生きていると、耳を疑うようなひとことを残して。きょうだいにとってそれは確かに福音であるが、父を失った悲しみが喜びを覆い隠す。特に兄姉たちにとっては、二度目の父との死別である。その心痛はいかほどのものだろうか。

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