初夏、しょかのいちにち

うぐいすの鳴き声で目が覚めた。人口の渓谷に声がよく響くのを気に入ったのか、このひと月、家の近くでうぐいすが鳴き通している。
一度時計を眺めたあと、起きなければいけない時間まで二度寝した。

今日は久しぶりの晴れで、気温が30℃まで上がるのだという。
本当に鳴いているのはうぐいすなんだろうか?

暑いのは好きでは無いが、わたしの力では暑さをどうしようもできないので、せめて新しく買った半袖のシアーシャツを着ることにしよう。暑ければこの服を着ることが出来る、というふうに考えるのは、比較的良い思考だと自負したい。


髪が伸びた。意識的に伸ばしてはいたが、気がついたら自分の想像よりも伸びていた。精神よりも肉体の方がよほど時間というものを自覚している。あたりまえか。
コテで毛先を外はねにして、顔周りの毛束と前髪を巻いた。肩に当たってはねてしまう長さを越したので、快適である。

授業のあと、京王線で柴崎に行き、「手紙舎 2nd STORY」というところを訪れた。
雑貨屋さんとカフェを兼ねた空間で、現在日下明さんの個展を催している。「2nd STORY」とはおそらく、2階の店舗ということなのだと思う。1階には「本とコーヒー」という手紙社の別の店舗が入っていて、そちらもまた心が擽られる空間である。

日下さんを知ったのは、またヨルシカを通してのことである。今年の初めのライブ「前世2023」のキービジュアルと、最近配信された「斜陽」という曲のデジタルジャケットが日下さんの絵であった。
月がよく登場することと、明度の低い色彩が好きだ。どこかメルヘンチックなところにも魅力がある。

風通しの良い、選りすぐりの雑貨やドライフラワーが並べられた店内の一角に展示スペースがあった。
壁掛けになった作品たちは、ここではないどこか遠くの景色を描いたものであるらしい。
「どこか遠く」への憧憬は、即ち逃避というわけでもないけれど、なにか安らぎのようなものを伴っているように思う。

「どこか遠く」といって草原を思い浮かべるくらいには現代の人間である、という自覚を得る。そして、どこまでも地球人の想像力でしかないのが悔やまれる。


ポストカード4枚と「Telepathy…?」と題されたジンを購入した。
せっかくなので、カフェでお昼ごはんを食べていくことにする。

軽くケーキとコーヒーでも、と思っていたはずが、サラダとパンが付いたレモンクリームパスタを頼んでいた。夏の初めのレモンクリームパスタは美味しいに決まっているからね。
運ばれてきた料理には王冠の形に切られたレモンが添えられていて、それを搾って頂く。おいしいねぇ。
文章を書いている今、頼みかけたウィークエンドシトロンに未練を抱いているが、パスタを選んだことには満足している。
アイスコーヒーも美味しかった。さて久しぶりに日記を書き切ろうかと思うくらいである。

こんな風に平日の午後を過ごせるのは、もしかしたら人生で今しかないのかもしれないと考えながら、ぬるい空を眺めていた。
夏が来るのは好きでは無いけれど、去るときには必ず惜しんでしまうので、どうしようもないなと思う。

昼下がりの京王線は長閑であった。
ここで車窓の向こうに今年初めての入道雲を観測した。高いビルがないから、地平線のふちに聳える雲を見つけることができる。

電車の途中、上北沢から下北沢まで一駅分くらいかな、歩こうかなと思って地図を見たら、数駅分くらいの距離があって憤慨した。わたしが無知なだけです。

サグラダファミリア展のポスターを見て、「サグラダファミリア」という言葉を初めて耳にしたとき、脳内で「桜田ファミリア」と変換していたことを思い出した。虎ノ門ヒルズ、あべのハルカスとの親和性が高いと思います。日本人の何人かは同じ勘違いをしていたらいい。

今日はバイトをしておしまい。


こんな夏ならいいよと思う。


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