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わたしの現在地

今年の4月から1年間休学をして、広島市内の地方出版社でアルバイトをさせていただいています。昨年の夏にマイナビで見つけた企業で、夏の長期インターンシップでは一冊の就活情報誌の制作・流通に関わりました。"D'companies"という冊子で、広島で頑張る中小企業の取材に同行し、学生視点から就活生に向けておすすめポイントを書いたり、冊子の流通に関わるSNSの運用やチラシ作成をしたりしました。

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昨年の11月末から12月末にかけては、東京都国立市谷保の小さな商店街に佇む一人出版社兼本屋さんの「小鳥書房」さんで1ヶ月の住み込みインターンシップをさせていただきました。そこでは、接客や編集者のお仕事体験、著者さんを招いたトークイベント企画・運営をしました。

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そうして自然と、編集者という仕事や出版業界、それらとは切っても切り離すことができない本屋さんや本そのもの、文章、言葉に興味を持ち始めました。
大学1年生からローカルウェブメディアYeastの運営に携わり、2年間編集長という貴重な経験をさせていただいたこともありますが、漠然と「編集者という仕事についてもっと知りたい」という気持ちに拍車をかけたのは間違いなく小鳥書房さんでの経験です。インターンシップ備忘録もありますので、下に貼り付けます🌱

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インターンシップ残り最後の一週間となったとき、「広島に戻ってもなんらかの形で学び続けたい」と思いました。昨年から少しづつ就職活動をしていた私ですが、新卒で出版業界を目指すには持っている武器が少なすぎるし、入りたいと思う出版社は中途採用が多いこともあり、これなら思い切って1年間その業界にどっぷり浸かろうと決め、夏からお世話になっている出版社にアルバイトとして雇っていただくことになりました。
アルバイト先では、校正・校閲のレクチャーを受けて校正アシスタントをしたり、営業同行、書店周り同行をしたり、出来上がった冊子の検品や梱包作業をしたりと、一冊の本が企画されてそれが人の手に渡るまでの全てを見させていただいています。中には6月に全国公開される映画の公式ガイドブックの校正アシスタントもさせていただきました。まだまだ未熟で、昨日も「素読み(ゲラだけを読んで文章の間違いを見つけること)のときには、目次チェックは後に回そうね。文中で大きな間違いを見つけたときに、段落やページを変えることがあるから。」と指摘を受けたばかりですが。校閲・校正のプロでもあり、大学の大先輩でもある上司に必死に食らいついている気持ちです。

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そんな、学生なのか社会人なのか分からない生活を送っているのですが、ゼミの教授のご好意により2週間に一回、卒論ゼミに参加させていただいています。この生活から、脳内は完全に出版関係のことばかりなので、卒業研究もそれ関連にしようと思いました。そこで、一度卒論を経験された先輩から聞いたところ、以下のことを言われました。

その主題に対して
卒業論文: 学内で自分より詳しい人はいない
修士論文: 国内で自分より詳しい人はいない
博士論文: 人類で自分より詳しい人はいない

最初は、「ぬおー!!」と思ったのですが、学内で1番になれることはやはり自分が身を置いている場所で漠然と疑問に思っていることを主題にするのがやりやすいと思いました。

それが、【『まちの本屋さんの社会的役割』を主題にした卒業研究】でした。

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全国で気になる個人経営の書店さんのSNSを片っ端からフォローしている私は、本や著者さんに詳しい、昔から文学少女だったというわけでは決してなく、ただただ個性あふれる個人書店さんを巡ったり、ここではどんな工夫が施されているんだろう、どんな店主さんが本を売っているんだろう、どんなラインナップなんだろうと、本屋さんという空間や、居場所に興味を持っていました。個人書店さんに興味を持ち始めたのは小鳥書房インターンシップで1カ月間かよさんの本屋を続けることに対する思いを聞いたり、吉祥寺にある古書防波堤さんや百年さんをふらっと訪ねたらそこは小鳥書房とはまた違う雰囲気でびっくりしたことだったり、多摩シネマフォーラムで小鳥書房のかよさんとマルジナリア書店の小林さんのトークイベントを聞いて、それぞれに本や本屋を愛し地域に住む人たちに本というものを通して誰かの想いを丁寧に届けているという姿に感動したからです。

最近はどんどん地元チェーン店や大型書店が閉店しており、文化拠点の役割を担う書店がなくなっている一方で、面白い個人書店さんは少しづつ増えている気がします。その現状に疑問を抱き、「よし、卒論にまで発展させてこれを2年間研究しよう!」という経緯に至りました。

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そして先日、広島蔦屋書店で開催された一日限りの本屋通りに行ってきました。中四国各地の 31 の書店を集め、独立系書店、古本屋、ブックカフェ、大型書店、地元チェーン店など、様々な書店が様々な形で並ぶ本屋さんだらけの町の商店街をイメージしたイベントです。「町の商店街にたくさんの本屋があった頃のようなにぎわいを作る」を目的にして開かれた本屋通りですが、当日は本当にたくさんの人でにぎわっていました。島根から来られて出店されている方は、「こんなに人が集まるなんて思ってなくて、まだまだ本好きはいるのねって安心したわあ。」とおっしゃっていました。そして驚いたのは、蔦屋書店の中にフタバ図書や廣文館などの地元大型チェーンの本屋さんが入っているという事で、競合他社とはいえど同じ思いを持った同志が同じ空間にいるのがいいなと思いました。

トークイベントもとても興味深い内容でした。

佐藤友則さん(ウィー東城店)×モリテツヤさん(汽水空港)
「地域の人たちに向けてその土地で本屋をやることの意味と地域における本屋の役割について」
イソナガアキコさん(あいだプロジェクト)×今田順さん(ブックキュレーター)
「本屋と読者のあいだをつくるー広島からはじまる本にまつわるコモンズとは」
青山修三さん(本と自由)×清政光博さん(READAN DEAT)×江藤宏樹さん(広島 蔦屋書店)
「本屋ではたらく人たちの駄話―なんで本屋をやってるの?

ここでは私にとって特別な出会いもありました。西国分寺の胡桃堂書店で店主を経験され、Uターンで広島に戻ってこられた方です。胡桃堂喫茶店と同じ系列の西国分寺のクルミドコーヒーさんに立ち寄って珈琲を飲み、そこでクルミド出版の「ゆっくり、いそげ/カフェからはじめる人を手段化しない経済」という本を購入した思い出がありました。熱い気持ちでイベント後に声を掛けさせていただき、「ああ、広島にいてもこんな熱い気持ちになれるんだ......!」と思いました。「広島でやろうとしていることは、もう東京では始まっている」という事実を昨年目にして、学びたいなら東京へ行こうと思っていたりもしたのですが、広島への愛着や、広島でこうしたイベントが開かれているのを見て、研究のフィールドはやっぱり広島がいいと思いました。

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そんな中で、個人書店ではありませんが、一つの本屋さんがまた一つなくなりました。広島市の中心部にある本通り商店街で「まちの本屋さん」が相次いで姿を消している中で、廣文館金座街本店も5月10日に閉店しました。

私は【『まちの本屋さんの社会的役割』を主題にした卒業研究】を通して、リアルな空間としての書店の価値を追究したいと考えています。電子書籍が隆盛している今日ですが、本屋さんという物理的な空間は今もこれからも必要だと考えます。

「人々はリアルな書店に何を求めているのか」

まだ現状の分析や根拠など足りておらず、どこまでこの研究が意味あるものになるかは分かりませんが、この主題に関しては学内で自分より詳しい人はいないと言えるくらいに、頑張りたいと思っています。

この主題に関してや、広島の本通りにかつてあった「まちの本屋さん」の歴史に詳しい方、同じような興味・関心を持って何かに取り組んでいる方がいらっしゃれば、ぜひお勉強させていただきたいのでお声掛けいただけると幸いです!

小鳥書房インターンシップ備忘録↓

https://note.com/sea_one/n/n004b4279ff04




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