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「白い嘘」 相手を思いやる 優しい嘘 見えていた現実は 真実のように映る 仮想な真実 *** 仮想世界の中心である 大きな大きな城 その城と城下町を結ぶ 長い長い橋を ただただ ぼんやりのんびり渡っていた ゲームストーリーも中盤に差し掛かったところ お城に住むこの世界の「勇者」に出会うため 玉座に向かう途中だった >> 良かったら 橋の真ん中で、唐突に呼びかけられるチャット >> フレンドになりませんか? 振り向くと 銀色短髪で長剣を肩に背負った 青年
現実の自分を脱ぎ捨てて 仮想の自分に着替える 気軽に外出すら出来ない ”特別な”立場の人にとって 本来の自分に気付かれずに 仮想世界で新しい自分を演じ切ることは どんなに新鮮で楽しいものかしら ***
伝えたその瞬間は本気 間違いなく君のことが好き 後からそれが嘘へと変化する 本気で伝えたのだから あなたは嘘だとは思わない 後から変わった言葉しか わたしは見えなくなるから それは「嘘」となる ***
海底に堕ちたわたしを 唯一救うことができたのは あなたの声だけだった 音吐が一本一本の糸となり 絡まれ縛り上げられ わたしに結びつく 頭と心と身体は自由を失い あなたの思うその通りに 動かされていく まるでマリオネットね ***
あなたが誰であろうが わたしが誰であろうと 橋の上で出逢い 惹かれ合って 好きだと囁き合い 愛を伝え合っている 間違いなく 現実で起こっている事実 嘘偽りなど あるはずもない ***
あなた、わたしに恋をしているでしょう? 絶対そうよ 愛おしそうにわたしを見つめる瞳に 見覚えがあるもの きっと前世の記憶ね わたしたち 壮絶な生き別れでもしたのかしら あなたは笑う ***
白くぼやけて見えない ご主人様の顔 マリオネットに できることと言えば 顔が見えないように 不格好になりながらでも ひたすらに背中を 追い続けることだけ ***
わたしの頭と心と身体は バラバラに動いていく 「あなただけのわたし」 ただの哀れな傀儡だと 気づいてしまわないように 自分でバラバラに捥ぎ取っていくの ***
何かが ”おかしい” 愛を疑い始めたら最後 あなたの愛も わたしの愛も 幻影のように消えてゆく 愛は愛ですらないものに マジックで一瞬にして変化する あぁ、騙すなら 最後までわたしを騙して 欲しかった ***
淡い光の低い日差しに向けて スマホをかざし写真を撮った 画面は優しい光で真っ白にあふれた プロフィール編集から 画像をそれに入れ替える すると この季節の吐息のような 真っ白なアイコンが 出来上がった ***