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心歌集

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お一人お一人に向けた 心の手紙から始まった創詩集です。伝えきれずに残っているものも、伝えきったままのものも、伝えたくて新しく生まれてくるものも、心歌として吐き出しています。メロデ…
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#恋愛

ウミユリ -心歌-

重く 冷たく 心の奥深く 何も見えない 誰も気づかない 光の届かぬ 暗黒の世界 無数に咲き誇る ウミユリの花 ゆるり ゆらりと 餌を求めて 闇底を這い歩く 花びらと思っていたそれは あなたを陥れるための 触手 好きでいてくれないのなら そんな腕 切り落として差し上げるわ あなたに傷つけられた心なんて いとも簡単に再生するの あなたが何を言おうとも あなたがどんな顔をしようとも あなたが離れ去っていこうとも 枯れ切った岩肌に 必死にしがみつきながら 幾度とな

紫鏡 〜しきょう〜

鏡よ、鏡 忘れさせてほしいの 少年心を 鏡よ、鏡 置いてきてほしいの 悪戯心を 鏡よ、鏡 放り投げてほしいの 恋し心を 鏡よ、鏡 奪ってほしいの 処女心を 鏡よ、鏡 焼き尽くしてほしいの 穢れ心を 鏡よ、鏡 オトナになる前までに 葬り去らなきゃいけないの 燻り続ける 惹起心を 「紫鏡 〜しきょう〜」 〜END

私雨癖 〜わたくしあめぐせ〜

雨降らせグセ 治っていなかったのね 雨降らせグセ 瞳から零せばいいものを 雨降らせグセ 雲に想い隠して黙らせる 雨降らせグセ 傘を差しても無駄だから 雨降らせグセ 濡れた黒髪を見せないで 雨降らせグセ あなたのせいなんて ごめん嘘 「私雨癖」 〜END

ツマラナイ

たいくつに笑い たいくつに焦り たいくつに泣かされ たいくつに弄ばれて 殺される この世で 恐れているものの一つ たいくつ 晴れた日曜日 陽が往復し始めたころ 左手で頬杖をつき 右手で髪をかき上げる 長い髪を 指に絡ませながら 毛先の終着点まで ゆらりと腕を伸ばしていく まるで砂のようにサラサラと 時の中でこぼれ落ち始める 何度もすくい上げ 何度も絡ませては 指の間を滑り落としていく あぁ、ひま こうでもしていないと 心が潰されそうになる 何をすることも

ふたりはうさぎさん

閉ざされた空間 文字だけの世界 ふたりは何時間と 閉じ込められている 延々と続く川の如く 流れ続ける文字列 << もういかなきゃ 戻るべき世界がある わたしはいつまでも ”ここ” にいるわけにはいかない >> さびしくてしんじゃう あなたにしてはめずらしく弱気ね << いくの >> どうせさびしくて戻るだろう << そう言われると戻りたくなくなる >> 天の邪鬼か わたしはアマノジャク 悪鬼になることで あなたの心を探っている >> 引き止めると逆効果

空と風に呼ばれて -心歌-

真っ青な空に浮かぶ 真っ白い雲 美しいコントラストを 覆い隠すように そびえたつ都会のビルディング ”約束は破られた” カタカタと揺れる窓ガラス 風がわたしを呼んでいる ラベンダー色の小さな花が咲きほこる 薄地のワンピースを纏う 少し動くだけで ふわりと裾が大きく揺れる こんな日はきっと歩きづらい けど、いいの お気に入りのハートのピアスを両耳へ 「泣かないで。いつものように明るくいて」 そう励まされる 一度は手元から離れていったはずなのに また戻ってきてくれたの

「もう幸せにはなれません」-心歌-

もう幸せにはなれませんと 筆ペンで記されたみたいだ 全てかけて幸せから逃げたわけじゃないのに       「たまゆら」 indigo la End  藍楽詞集より 静まり返ったコンサートホールに 澄みわたる切なげな声音 そっと零れ落ちたしずくが波紋を描いていくように 鈍い痛みとなって心に広がっていく 「もう、幸せにはなれません」 その痛みは涙となって 気づかないうちに頬を伝って 手の甲にしたり落ちた 負わなければならない罪を しょいこんで 跛行をひいて歩く わたし

高いところがスキ -心歌-

わたし 高いところがスキ ジャングルジムの てっぺんまで登り切った 達成感 爽快感 震える足に力を入れて がんばって ふんばって 両手を天に向けて仰ぐ 「風よ吹け」 心で念じれば どこからともなく 風が吹き荒れて 柔らかな茶色の髪を ふわっとなびかせた わたし 幼いとき魔法が使えたのよ 優しく隣で笑うあなた もう、あなたに手を握っていてもらわなくても 今はひとりで立つことができる わたし 高いところがスキ 虚栄を張った自分自身の存在も 今死にたくなるほど

№ 444. -心歌-

あぁ 空は広く永遠に続くものだと 思っていた 大人になったら 自由に何処へでも羽ばたけるものだと 思っていた いつか飛べるはずだと 見上げていた空は 青かったり 赤かったり 時には紫や橙や桃色にも見えた カラフルな空が どんよりとしたモノクロの世界へと 変わってしまったのは いつの日からだったかしら 運命という鎖に縛られて いつの間に背中の両羽は 折れていたの 片脚はもがれていたのかもしれない 走り出そうとしても 感覚がなかったもの ほんの少しだけ 夢の扉があ

私は男が、嫌いだ -心歌-

私は男が、嫌いだ なぜなら自分が男じゃないから なぜ男じゃなかったのか 二分の一の確率で どうして男になれなかったのか もし男であったらの人生を たびたび考える 生まれ変わったら 男になりたいって言うのは そういう理由 ねぇ なんで そんなダサいことすんの? なんで そんな考え無しに言うの? なんで そんなカッコ悪いの? やる気がないなら 男やめればいいのに ねぇ 誰があなたに 責任とって欲しいって言った? 誰があなたに 期待してるって言った? 誰