シェア
あなたが男女関係なく わたしを 愛してくれたこと たまらなくうれしい あたまをポンポンと あたたかい手でなでられる ずっと忘れられない感覚は あなたが残したものだって 思い出したの ***
あなたにとって 人を好きになるのは 自然なこと わたしにとって 人を好きになるのは 特別なこと 自然な想いを 特別な想いとして 受け取ることは できなかった ***
ふたりのつながりが 多ければ多いほど 運命だって感じちゃう 不思議な錯覚 ただの偶然は偶然なのに 勘違いだってしちゃう 未熟な恋愛歴 これが稀有な運命を生み出した ***
あなたの仮面の下を 知るまでは ふたりの思い出は 鮮やかに色づいていた どこにでもある 普通の恋愛ごっこ そのつもりだった *** 新しい世界に降り立った瞬間は いつも緑の大地に明るい太陽が輝く 清々しい風が吹いているような 錯覚の中 初期装備を身に付けただけの ”わたし” が 立ち尽くしている お馴染みのそんな風景から いつもオンラインゲームのはじまりが 創られていくの キャラクリエイトを終えて 満足のいく新しいアバターの姿に さぁこの子と一緒にどんな冒険の未来
あなたが大好き サークルの仲間達が大好き この世界が大好き ますます 現実世界に戻れない 深い呪いに囚われていく ***
4番目の箱には 死のリングが入っていた 4って数字 わたし大好きなの あなたからの指輪だって 嬉しくて嬉しくて 身につけたら 抜けられない 呪いにかかってしまったわ ***
白ウサギを 追いかけて辿り着いた 新しい世界で 新しい人生で 新しい冒険で 初めてわたしの ”勇者” となったのは 白ウサギじゃなく 禿げた冒険者だった ***
アリスは ”たいくつ” していた 毎日同じことを繰り返すだけの 刺激のない現実世界に 貪欲な好奇心は ためらわず冒険を突き進むための 原動力を与え やがてもとの世界へ戻るための 道しるべを奪い去った ***
一度装備すると二度と外せない 死の指輪 無理に外そうとすれば 装備もろとも崩れ去る それは ゲームの仮想世界に囚われる 呪いだった *** 初めてのネット回線を繋いだ オンラインゲームは 両親に許可をもらって バイトの先輩に教えてもらいながら 自分でインターネット契約するところから スタートした 回線を繋げるのも大変だったけれど ゲーム機器にソフトをダウンロードして インストールすることさえも 丸1日がかり 学校が終わって帰宅しても まだ画面はインストール中の表示
明るくて前向きなあなたに 歪んだ愛は似合わない 捻れた恋も似合わない どうかこの一年の出来事は 現実から切り離された ゲームの世界だったと 夢の中に押しやって 大学で 社会で 素敵な恋愛 見つけて欲しいの 一途にずっと ひとりの人を愛せた事って 中々幸せだったよ そういう幸せを あなたには感じてもらいたいと 願う ***
眩い光に群がる無数の夏の蛾 払っても払っても ひらりと再び舞い戻る どれだけ強く輝こうが 太陽の下を飛ぶ蝶は 絶対に近づくことはないのだから ***
あなたの捻じれた恋愛観を わたしの歪んだ愛で ほどこうとした ますます絡み合い お互いの首を絞め合った ***
あなたからもらった 仮想のダイヤの花束を 現実で ”形” にしたの それはとても甘くて 歪んだ香りがした ***
>> プロローグ まだ寒さが残る初春 独立して念願であった自分の店を 開業して2年目 いつものように仕事を終えて 車で帰宅しようと 駐車場から出て裏道を走り始める もう薄暗く日も落ちかけていた その時 前を走っていた車の動きに違和感を感じた ゆっくり徐行スピードに落として 辺りに目を凝らす 道の真ん中に白っぽいものがうごめいている ビニール袋かと思って 通り過ぎようとしたとき ”茶虎の猫” だとわかった ぶつからないように 避けるのが精いっぱいだった 4本