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20211113/14 『狐憑』稽古場日記

平日夜3時間でつくってきた『狐憑』だけど、この週末は時間を長く取って稽古する。
まだ明るい時間の東中野で食事を取り、歩道の狭い道を歩いて劇場に向かう。


ウミウシのタクシーは3人で立ち上げた。
でも本当は3人ではない。
フライヤーのヤバい横川を撮影し、劇中曲の打込み、上演では音響を担っている前川。
ロゴデザインとお菓子のケータリング、唯一の演劇未経験者ならではの目線から作品に意見してくれる尾関。
この2人を欠かすことはできない。

ウミウシのタクシーはこの5人3世帯(知らない人のためにこれ以上の内訳を明かすことはしない)という非常にドメスティックな集団なのだ。
そしてジェンダーバランスやジェンダロールにも非常に偏りがある。
これからも活動を続けていく上で、このことは常に忘れずにいなければならない。

なぜこの話から始めたのかというと、自分がやりたいことにやるとき、付き合わせた誰かが常に必ず犠牲を払ってくれていることをあらためて実感したからだ。

生活を支えるそれぞれ所与の条件があり、ある程度負担を負う/負わせることは仕方がない部分もある。
しかし、その上での配慮もまた必要であり、僕はそれを失念していた。

舞台上に役者が2人。
オペレーションが2人。
客席での対応が1人。
誰か1人欠けたらこの作品は成立しない。

これから誰が増えようと誰が減ろうと、お互いにつけあった傷を思いやれるチームでありたい。

あと、誰も欠けてほしくないのでみんなインフルもコロナもワクチンを受けまくろう。


稽古の始めと終わりに一度ずつ通しを行う。
2日で計4回。

今回は音響や照明あり。
音や影がつくと上演から受ける印象が変わる。
けれどそれは主菜に対する副菜に過ぎなくて、それらの効果によって観客以上に役者がどう変化するかの方が大事だと思う。

ちゃんと照明を操作するのは初めてだ。
僕は影が強く出る照明が好きなのだなと思った。
(高校演劇時代の顧問の影響が強いのだと思う)


この2日で、上演の骨にあたる部分は出来上がったように思う。前回も言ったように、粗く削っていく。

面白いけど不測の事態を招きそうなプランを一日目に削ったら、二日目には長谷川が別のプランを持ってくる。
案外それがしっくり来たりする。

2人とも演出を担当する機会が多かったからか、何も思いつかず無為に時間を使うということが少ない。
僕はいつもその引き出しの多さに驚かされる。


そういえば、中島敦の『狐憑』はちくま文庫の中島敦全集1に収録されている。この全集にはこれからシリーズとして上演する予定の『木乃伊』『山月記』『文字禍』も載っている(山月記を読んだことのある人は多いだろう)ので、是非観劇の前に一読してみてほしい。
短いのですぐに読むことができると思う。

原作を知った上で上演を見てもらえれば、中島敦の作品から僕たちが何を拾い、何を接続し、何を捨てたかが、より高い解像度で見えてくるはずだ。

無料なのであまり勧めるのもあれだが、青空文庫やwikisourceでも公開されている。


また今回の上演に関して言えば、ソポクレスの『オイディプス王』『コロノスのオイディプス』『アンティゴネー』、シェイクスピアの『ハムレット』なども下敷きにしている。
これらの作品は演劇クラスタにはある程度浸透しているものの、それ以外の方には馴染みが薄いかもしれない。
そんな方のために、長谷川がざっくりした粗筋をTwitterで公開している。
こちらにも載せておこう。



…分かる人には分かる有名な形式だが、これらの作品は見なくても(長いし…)楽しめる。多分。

そんな僕たちの上演まで、残り1週間を切った。
よく分からなくてもそれなりに楽しんでいただけるようゴリゴリつくっているので、是非足をお運びいただきたい。

予約し忘れている方は…多分当日券出すけど、出ない日もあるかもしれないのでお早めに予約をお願いします。


ウミウシのタクシー 塗塀一海

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