レジスター

この頃、朝と夜はとても冷え込む。雨の日が続いていて、もう冬のような空気だが、何はともあれ秋が来た。わたしの一番好きな季節。金木犀の香りの香水を使っているからかもしれない。この季節になると、道端の金木犀の花とわたしがおんなじ匂いになるから。それはまるでわたしが風景になってしまったような、そこら中の空気全部と一体化してしまったような、そんな気持ちになる。とても幸福だ。あと、秋の色は全部きれいだ。毎日耳にイヤホンを突っ込んで散歩したくなる。こんな稚拙な言葉たちで体現するには、ほんとうに、あまりにもきれいすぎる。そういえば、文章を書くこと自体がとても久しぶりだ。LINEブログのアプリを開くだけでそわそわしてしまった。友人の家にお邪魔するときのような変に緊張する感じ。最近は全く書きたいことが思い浮かばない。ずっと書くことで自身の生活の嫌な部分を飲み込んできたので、それが減ってきたんだなと思うとわたしにとって文章が書けないことは幸せなのかもしれない。幸せになればなるほど文章を書けなくなるなんて、なんて幸福な我儘なのだろう。けれど、やっぱり少し寂しい。この暗くて静かな場所が好きだし、自己表現できるコンテンツをひとつ持っているのはとても安心することだから。書くにしろ、書かないにしろ、ずっと残しておきたいとは思ってる。もし継続して読んでくれていた人がいたら、更新がバラバラでごめんね。それともう一つ。ここ最近まで、わたしは目まぐるしく切れたり繋がったりしていく自身の人間関係のことを「清算する」と言っていたことが多いなと気付いた。へらへら笑って話していても、どうしたって心の中には、苦しかったこととか寂しかったことが突き刺さったままで。わたしは痛みを消化するのが本当に下手で遅い。だから人と関係を持つことをどんどん疎かにしてしまうし、ひとりで楽な方に逃げてしまう。それから目を背けたくて、ぐしゃぐしゃにしてしまった人間関係のことを、レジやらのあくまで機械的で、単純な一作業かのような言い方をしてしまっているのかもしれない。もうどうにもならないことと頭では分かっていても、幸せになりたかったあの日の自分が足を引きずっている。心底我慢ならない。どれだけ前を向いても、わたしの足首は過去の沢山に掴まれている。自分の積み立てた言葉達に刺される。わたしだけ生き遅れているような気がして。腹が立って、それから惨めな感情になって。自分にしか分からない焦りとか不安が、波のように近づいたり去ったりを繰り返す。そのくせ秋はスピードを緩めることを許さないみたいだ。恐ろしい速さでどんどん深まっていって、わたしは余計に悲しくなる。こんなに幸福な生活を、取り戻せないもう大事でもないものに蝕まれるのは、ひどくつまらないことだし、意味のないことだ。自分が一番よくわかってる。そんなナンセンスな日々を繰り返すよりも、今の全てに時間を費やしたいと思えるようになりつつある自分を、ちょっとでも、愛してやれたらいい。冬は海が見たいです。猫も触ってみたい。夜分遅くに失礼致しました。おやすみなさい。

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