なみゆめ

妙に、心臓のあたりが痛い。本当に心臓という器官が痛みを感じているのかは分からないが、それでも心臓のあたりが痛い。体調が芳しく無い日は、いつもこうなる。締め付けられるような、引っ張られるような、鈍い痛みが、わたしをずっと許してくれないような気がする。
今日はそれに加えてお腹も痛かった。息がし辛く、目眩がする。なんのやる気も起きない。静かなピアノの曲をかけて、気持ちを落ち着かせた。お昼は平気だったのに、流れるように楽しい文章を書けたのに。一度落下し始めたわたしの感情は止まれなくなってしまう。
いつもは怖くない、素敵なはずの雨の音や雷の轟が、今日は少し怖い。
いってきますも言わずに出て行った父親は、もう帰ってこない。
階下から母親の怒鳴り声がする。きっと彼女も疲弊しきっているのだ。
それから、お風呂に入った。裸の自分を見つめてみた。酷く空っぽに見える。冷たい水を浴びた。首も、太腿も、踵も、冷たい。水がつやつや自分の体を流れていく。それで死んでしまえたらいいなと思った。一緒になって何処か此処でないところに行けたらいいと思った。そんなことはできるはずもなく、なんとも馬鹿らしくなって、少しだけ泣いた。鼻の奥の方でツンとした痛さが広がって、わたしはそこで初めて自分が涙していることに気付く。
たまに、自分は何かの病気なんじゃないかと疑う時がある。けれど、至って正常なのだ。今日が酷いだけ、明日はきっと元気。
人よりも少し感情の波が激しい。親にも医者にもそんなことを言われた。貴方は気にしすぎなのよ、と。
君が居なくなってしまう気がする。わたしの部屋にはもう二度と帰ってこないような気がする。もっとも、君がわたしの部屋に入ったことがあるのはほんの数回だったけれど。それでももう、わたしは君に会えない予感がする。会えないことは、寂しい。会う約束は会えば終わるが、会わない約束は永遠に続く。牢獄に入られた気分。それはとても自由なことにも思えるし、悲しみや苦しみにも思える。自分が此処に立っているのかも分からなくなってきた。わたしから消えてしまう君が誰なのかもよくわからない。わたしは誰を失いたくないんだろう。少しだけでいいから、愛されたかっただけなのかもしれない。否、きっとそうに違いない。けれど、もう遅い。ただただ不安だ。何も分からないことが不安になる。不安はたちまち増幅を遂げる。ここ数日はずっとそういう気持ちをぶら下げて生きているような気がする。もう眠りたい。起きたくもない。


夜、寝る前に書いた文章です。

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