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スラムダンクの映画を観て・新たに追加されたあのシーン、あの一言についての考察。

※思いっっきり映画のネタバレしてますので、気になる方は読まないでくださいね。

今回、映画「THE FIRST SLAM DUNK」で新たに追加されたストーリーはいくつかある。

今回の映画の主役・宮城リョータの沖縄での兄弟の物語。
対戦相手・沢北栄治の神社での祈りのシーン(これ良かったですよね)。
IHの試合前、ポスターに映る沢北を拳でこづいての(沢北かわいそうだった)、流川とリョータの決意のシーン など。

その中で、私が個人的に一番衝撃的だったのが、神奈川のストリートコートでの、三井寿(中二)と宮城リョータ(中一)の「出会い」のシーンだ。

初めて観たとき、まず感じたのは「えええええ?会ってたの?高校より前に?」という衝撃だった。
二次創作じゃなくて?実は会ってました、って公式が今になってえらいもんをぶち込んできた!という驚きだ。

そして何より、中二の三井の破壊力に思わず変な声が出そうになった。
なんか覇王色の覇気みたいなのが出てませんでした?風圧を感じたような。

観終わった後もその「キラキラ中2三井寿」への衝撃が頭から離れず、「中2の三井」でTwitter検索したほどだ。「私だけか?こんなに正気を失っているのは」と思ったけれど、けっこうな人数の人が同じように正気を失っていて、ホッとした。

映画のシーンは、
「沖縄から神奈川に引っ越してきたものの生活になじめず、団地でバスケをしようとしたら住民に”ボール遊びならよそでやれ”と叱られ、流れ着いたストバスのコートでひとり練習をしていたリョータのもとに三井が現れる」
というもの。

コートを通りかかった三井は、足元に転がったボールを勝手に拾い、許可もないままリョータのいるコートに入りこんで、続けざまに(美しいシュートフォームで)3Pシュートを決め、リョータに向かって「小学生?」と話しかける。

この時の三井が、完全に「光の国の王子がこの世に舞い降りた」といった顔をしていた。

してましたよね?王子でしたよね?

なんだこれ…光のエフェクトかかってないか?とクラクラしたのだが、のちに誰かが「あれはリョータから見た三井だから、あれで正解」と書いていて、なるほど、と思った。

私がこのシーンで三井の輝きに衝撃を受けたのはもちろんだが、それ以上に感じたのが「三井ってやっぱり、光の存在として生きてきた男なんだな」ということだ。

そもそもこのシーンでリョータは、

・引っ越したばかりで友達がいない
・学校でも目を付けられて理不尽に殴られる
・甘えん坊のくせに人見知りという厄介な性格である
・兄の不幸な死以来、母親との確執があり、家庭にも居場所がない

という状況。どちらかというと「陰キャ」として描かれており、原作とは違う表情を見せている。
まさに、のちに本人が手紙に書いているとおり「バスケだけが、生きる支え」だったのである。

それなのに、団地でボールを操っていたら知らないおばさんに怒号を浴びせられ、本当に居場所がなくなってたどり着いたのがストバスのコートだったに違いない。

無心でボールと対峙するリョータ。
隣のコートでは、5人組の同年代男子がバスケの練習をしている。
3on3をしたいけど、5人だからひとり足りない。
「あいつ誘う?」とリョータを見る子に、もう一人の子が「あいつ、近寄んなオーラ出てるし」と答える。

そう、ここでリョータは思いっきり「近寄んな。俺を誘うな」という態度で練習をしているのだ。

さらに言えば、隣のコートでは5人組が練習をしているわけで、三井がそっちに合流したら3on3の練習だってできてしまう。

それなのに、勝手にボールを取って許可もなくリョータのいるコートに入って、3Pシュートをバスバス決めて、挙句の果てに中学生に向かって「小学生?」と声をかけてしまう。
ああ、それこそが三井寿という男なのだ。

圧倒的コミュニケーション能力。陽の男。
いい意味での無神経さ。人の距離をぱっと飛び越えてしまえる、心の軽やかさ。

「勝手に入っていいかなあ」「1on1したいけど、断られたらどうしよう」「なんか機嫌悪そうだな」なんて心配をすることは微塵もない。
断られることなんて1ミリも考えず、勝手にリョータの前に立ちはだかって「さ、1on1しようぜ」みたいな顔をするのだ。
そんな男なのだ、三井寿は。

きっと、幼いころから友達や家族に愛され、「みっちゃん」「みっちゃん」とたくさんの人の温かさの中で、幸せに暮らしてきたんだろうな。

だから、ひとりでいる人や、不安を抱えている人のことが、態度では理解できない。悪気があるのではなく、本当に分からないのだ、この男。

きっとミニバスでも活躍していただろうし、努力を惜しまない子供だったんじゃないかな。努力できるのも一つの才能だし、それは周りの人の理解や協力がないとできないことだから。
つくづく、幸せな「光の存在」だったんだなあ。

白T短パンのみっちゃんを目にして、そんなことを思った。

映画に話を戻そう。

ぶすっとした顔をしながらも、三井に立ち向かっていくリョータ。でも、独りよがりのプレイが目立つ。そんなリョータに向かって放った三井の一言に、私はもう頭を抱えてしまった。

「一人でばっかやってたら、せっかくのテクニックがもったいねーぞ」

……いやいやいやいや、リョータは好きで一人でやってるわけじゃないんですけど!!!
そりゃあんたは人に愛されて育ってきて、友達もいっぱいいて、バスケの才能も努力する才能もあって、常に人のぬくもりと労りの中で生きてきたからわかんないでしょーけど!!リョータは…リョータはいま、いろいろ大変なんだよ!

しかも、「せっかくのテクニック」って…ちゃんとリョータの技術を認めて、褒めてあげているぅ~!!!そういうとこだぞ、ミッチー!!!!!この天然人たらし!圧倒的陽キャ!

さらに、「圧をかけろ、圧を!」とリョータに向かって声をかける三井に、リョータは束の間、沖縄で同じように1on1をやった兄のことを思い出すという描写。

えええええ?
リョータがミッチーに、自分の亡くなった兄を重ねてたっていうこと?

今それをぶち込んでくる?まじで?

原作の読み方が、か、変わる…。花道と3人、3馬鹿トリオとして見てたのに…。あのシーンもあのシーンも、そういう目で読み直すとまた違う思いがこみ上げてくる。

最後に三井はリョータに向かって「またやろうぜ。つぎは勝ちに来いよ」と言って別れるのだが、リョータにとってそれは福音だったに違いない。

バスケが、できる。ソーちゃんみたいに上手な人と。

知らない町に、ぽっと灯りがともった瞬間だったのではないだろうか。

三井の言った「つぎ」を、きっと楽しみにしていたんだろうな。

まさか「つぎ」会ったとき、三井がロン毛でゴリゴリにグレているとは、思いもしなかっただろう。

いろんな意味で衝撃的だったこの追加シーン。何度思い返しても「…はぁ~」とため息が出てしまう。

それにつけても三井の顔の良さよ。



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