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科学雑誌を素人が読む[483]

秋の夜長よながは科学雑誌を開くにかぎる――『サイエンス』2021-10-08号の冊子が手元に届く。以前から気になっていた「ソフトマテリアル/ソフトマター」系の論文が2本も掲載されている。これは読まずにはいられない。論文のタイトルをそれぞれ挙げると:

①「ポリマー鎖を長くする力をトリガーとした化学反応によるヒドロゲルの強化」(Toughening hydrogels through force-triggered chemical reactions that lengthen polymer strands
②「絡み合いが架橋よりはるかに多いポリマーの破壊、疲労、摩擦」(Fracture, fatigue, and friction of polymers in which entanglements greatly outnumber cross-links

そそる言葉が並ぶけれど素人には少し難しい……。幸い解説記事「丈夫で柔らかいソフトマテリアルへの複数の道」(Pathways to tough yet soft materials)があるのでそちらからのぞいてみることにする。〈丈夫で柔らかい〉(tough yet soft)という表現は見逃せない。強度と柔軟性を備えた素材としてのソフトマテリアルの開発というのが眼目のようだ。

2つの研究チームが改変をほどこしているポリマーすなわちソフトマテリアルは「ヒドロゲル」(hydrogels)というもの。ヒドロは「水」を意味する接頭辞で〈ゲル〉はコロイド状の物質といったほどの意味。「水で膨潤ぼうじゅんした(膨らんだ)架橋ポリマー」と定義的な文がある。ヒドロゲルの名前は化学系の論文でも生物系の論文でも最近よくみかける――ということは多分野での応用が期待されているということ。今回の研究は、その作製法を工夫することで、強靭でありながら変形可能な(禅問答のようだ)ヒドロゲルの作製に挑戦したということのもよう。

不案内なジャンルゆえ、まずは記事から重要そうな用語を抜き出してみる:
エラストマー(elastomers)
靭性(toughness)
絡み合い(entanglements)
フィラー粒子(filler particles)
犠牲的結合(sacrificial bonds)
ダブルネットワーク(DN)ゲル(double-network (DN) gels)
ヒステリシス(hysteresis)
エネルギーの散逸(energy dissipation)
メカノフォア(mechanophores)
アンフォールディング(unfolding)
テーラーリング手法(tailoring approaches)

特に「メカノフォア」「エネルギーの散逸」「アンフォールディング」などのワードにグッとくる。これらの語の意味を理化学辞典などで調べつつ、解説記事を読み込んでいきたい。だんだん盛り上がってきた。■


【追記】
✅「ソフトマター」についてはエントリ[355]でチラリと言及していた。

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