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「海が走る~エンドロール」を読んで思わず呟く。シニアの先輩、カッコイイ!

「傘寿まり子」を読んだときにも、すごっと思ったけど、

この「海が走る~エンドロール」、更にスゴイ。

「傘寿まり子」の主人公は80歳を過ぎてるけど、老いたりとは言え職業作家。プロとしての矜持があり、ネームバリューも残っている。

それに対して、うみ子さんは65歳。まだまだ若いとも言えるけど、ごくごく普通の主婦。しかも、夫に先立たれたばかり。

泣き暮らしているわけじゃないけど、どこかぼんやりとしている。特段バリバリ働いていたとか、趣味に没頭していたとかいうようなタイプでもない。

どこにでもいる65歳(登場時にちょっと老けた容姿にしているのは、これから先の変化を感じさせるためだ)。

そんなうみ子さんが、孫ほどの年齢の海(カイ)との偶然の出会いから、なんとカイの通う美大に入って映画を作り始めるのだ!

このジャンピングがすごく良い。え?いきなりそこ?と言うところまで跳ぶのが潔い。

物語の作りとして、とても良いパターンですね。主人公はいつまでもダラダラしていない。物語を前に前に推し進める原動力を持っている。

普通の65歳だったはずなのに…このギャップがまた良い!

もちろん、うみ子さんは大学生活を楽しみながらも、自分が浮いてることはわかっていて、そしていわゆる、<世間の常識>の中の65歳にふさわしい言動をしたりする。

ただ、うみ子さんの素敵なところは、その世間的常識に従って発した言葉が、Buddyであるカイを傷つけたりしたことは察して、反省できるところ。これは年の功というだけではなく、うみ子さんの感受性だろう。

そんなうみ子さんが、うみ子さんの映画がどれだけ「化け」ていくのか、目が離せない!

作者のたらちねジョンさんは、ストーリー構成力はもちろん、画力も素晴らしいので、うみ子さんがジャンプするまでの過程を、迫力のある一枚絵から細かなコマ割まで駆使して描ききり、自然に着地させる。素晴らしい。

「何かを始めるのに遅すぎることはない」

よく言われる言葉だけど、実際にうみ子さんのようにジャンプできるかと言えば、大半の人には難しい。

いろんな理由は付けられるけど、多分、足りないのは足下をすくわれるような衝撃なんだろう。カイに「あなたはこっち側(映画作りたい側)」の人間ではないかと言われ、まさに、うみ子さんは心中に押し寄せてくる波に呑まれそうになる。

そんな波に呑まれてみたいと願う多くのうみ子さん世代、プレ世代がいるはずだ。

今こそ、うみ子さんのようにジャンプしてみては?映画じゃなくても、他の「何か」でも。(何かに「物語を作る」っていうのを入れていただくのもよろしいかと)

そして、そんなうみ子さんを「カッコイイ」と思う孫世代、子世代を驚かせてやったらどうでしょう?

頑張れ、中高年!と、発破をかけるマンガの主人公がシニア女性であることがとーっても嬉しい。



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