文春のミステリーベスト10、納得の結果でした
文春の「全国のミステリー通、書店員が選ぶミステリーベスト10」
国内トップは黒牢城。
いや、そればかりではなく、
「ミステリが読みたい」「このミステリーがすごい」「本格ミステリ・ベスト10」そして、山田風太郎賞…総なめ!!史上初の5冠制覇ですって。
当然でしょう。面白かったもの。ホントに。
米澤穂信さんって、読ませるんですよね。
若い主人公を配した古典部シリーズや本と鍵の季節の季節も、
「満願」や「王とサーカス」といった大人の話もどれもハズレなく、ひたすらページをめくりたくなる。本読みの快感をたっぷり味わえるんです。
そして、「黒牢城」
黒田官兵衛が探偵ですよ。しかも、事件現場には臨場しない「安楽椅子探偵」。
いや、官兵衛がいるのは牢の中だから、「安楽椅子」とはかけ離れたひどい環境なんだけど。
確かに官兵衛ならこんな謎も解くであろうという納得感を抱かせる。みんなが持っている知恵者官兵衛のイメージをすごく上手に使っているから。
荒木村重の孤独、そして官兵衛のずっと先を見通した智略。
牢の中から人を殺すことができると言い、村重の家臣への物足りなさを刺激する。
官兵衛の手のひらので転がされる村重。
決して愚鈍ではないのに。官兵衛の術数がはるかに上なのだ。
この村重が切なくて良い。
いったい荒木村重って何者?
自分一人だけ逃げ落ちて、部下や家族を見捨てたのは何故?
ただ命が惜しかったのなら最低野郎なんだけど、
でもそう単純に割り切れない…その謎が解けた!と膝を打つ感覚。
この村重は最低野郎ではなく、切ないじゃないか。
そして、官兵衛も知略を駆使するだけの人物じゃない。
自分の知恵を誇りすぎたのではないかと自身を省みる。そこに知恵者だけでない、人間としての官兵衛の姿が描かれる。
そして、村重の家臣、そして室。いずれも一筋縄ではいかないキャラクターたち。人物設定がいずれも素晴らしい!
史実もこうだったんではないかと思わせるのが優れた時代小説だと思うんですよね。
とするなら、やはりこの作品は第一級のミステリーであり、超一流の時代小説でしょう。
米澤穂信先生、恐るべし。
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