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強い女に憧れる。強い女の活躍に心が躍る。

3月8日は国際女性Dayだった。

だからというわけでもないけど、偶然にもここのところ読んだ本の主人公はいずれも強い女たちだった。

思えば、物心ついてから憧れた女性は、「風と共に去りぬ」のスカーレット・オハラだ。

憧れているとは言え、彼女のような強さを私は一ミリも持ち合わせていない。

リアルな生活で彼女のような存在がいたら、むしろ全力で遠ざかるだろう。彼女の周りにいる凡百の人間は大抵破滅してしまうのだから。

そりゃ、お友達になりたいのは、スカーレットが「冴えない女」と見ていたメラニーの方だ。本当の強さというものを持っているのはメラニーの方かもしれない。

けれど、すべてを失った後、「明日は明日の風が吹く」と立ち上がる彼女の姿には、中学生の私は心奪われた。

だから、結構長いこと、私の座右の銘は「明日は明日の風が吹く」(Tomorrow is Another day)だった。

「ザリガニの鳴くところ」と「棺の女」の主人公には、スカーレットのような華やかな強さはない。

それでも、その強さはスカーレット並みだ。

「ザリガニの鳴くところ」の主人公・カイラはなんと、たった6歳で家族に捨てられ、一人で湿地のボロ小屋で暮らし始める。母は父のDVに耐えきれずに逃げだし、やがて兄弟姉妹も次々と姿を消す。ついには飲んだくれの父親自身も。

カイラは自ら思いついて湿地で貝を捕り、親切な黒人・ジャンピンに買い上げてもらって、わずかな食料を得る。

カイラを助けてくれるのはジャンピン夫婦と、そして兄の友人・テイトだけ。一日だけ学校に行ったが、同級生から嘲笑されることに耐えられず、以後は行政の福祉サービスから逃げ回る。カイラは誇り高い人間なのだ。

やがてテイトに文字を教わり、カイラは湿地の動物やその生態について学んでいく。この成長具合がとても素晴らしい。カイラは自分の目で耳で、すでに湿地を知り尽くしている。それを、文字を知ることで表現し、知識を得ることで確認していくのだ。

たった一人でSurviveしていくカイラに、「何とか無事に生き抜いて欲しい」とページを繰る度に願う。それが読者を惹きつけるって事なんだな。

ところが、テイトが去り、孤独にさいなまれたカイラは、街でも有名な女好きイケメン・チェイスと付き合い始めるものの、やがてチェイスにだまされていたことを知る。

チェイスと別れ、再び一人に戻ったカイラ。けれど、テイトのサポートが功を奏し、カイラの湿地研究が日の目を浴びる。本が出版され、高く注目されたカイラは、その印税でたべていけるようになった。

ところが、ある日、チェイスの死体が発見され…

一人の少女の成長譚であり、Who done it(誰が殺った)?型のミステリでもあり、そして、美しい湿地で生きる動物とそれを取り巻く人間の醜さを寓意的に描いたものでもあり…と読みどころ十分。さすが全米で500万部越えの作品だけある。

ちなみに、映画化されて今年公開の予定だとか。演じるのはデイジー・エドガー=ジョーンズと言う女優さんだそうだが、宣材写真を見る限りでは、なんだかカイラのイメージとはほど遠い。もちろん、メイクや衣装、役作りでずいぶん変わってくるんだろうけど。

私はいわゆる都会のネズミで、虫も、湿地帯にいるような動物も苦手だけれど、この作品を読んでいると、鳥の羽ばたく音や水面を叩く雨の音、カエルの合唱や、湖面を揺らす風の音が聞こえて来るような気がした。私の頭の中の湿地は映画でどう描かれるのだろう。それもちょっと楽しみではある。

その湿地の中で、カイラはどう動いているだろう?木の陰に身を潜めるカイラの息づかいは聞こえるだろうか。母を慕って泣き、男にだまされて泣き、それでも湿地で生きていこうとする彼女の強さが伝わって来るだろうか?伝えてくれる映画であることを祈ろう。



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