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青春短編声劇台本集

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ポッドキャスト配信中 https://anchor.fm/story-office オリジナルの短編声劇台本(短編ラジオドラマ・ボイスドラマ)作品集です。 想定尺は140秒を基本… もっと読む
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#青春

【声劇台本】068「白く深く」

「白く深く」 《人物》 藤田琴美(17)高校2年生。美術部。 森山トオル(17)高校2年生。陸上部。 《本編》 琴美のMO「白い吐息を漏らす。冬の夕暮れ。私は高校の部活帰りに、いつもの交差点でトオル君が通りかかるのを待っていた。彼のランニングコースの休憩地点が、この交差点であることを私はよく知っている」 トオル「(走ってきて、息を切らしながら)藤田? お疲れ!(と呼吸を整える)」 琴美「トオル君も! 今日も走り込み? 感心だね」 トオル「藤田は? いま帰り?」 琴美「展覧

【声劇台本】066「声にしていく」

声劇、久しぶりの更新となりました。 140秒で収まる、青春胸キュンドラマをお届けします。 今日の台本は、先日開催された《戯曲本舗のワークショップ》で書いた短編戯曲を声劇版に直したものになります。 戯曲版と比較してみても面白いかもしれません。 *(最後にリンクを付けます) ーーー 声劇 「声にしていく」《登場人物》 男子:高校生 女子:高校生 《本編》 男子のMO「冬の新宿。騒がしい喧噪の中。僕たちはスマホで声を届け合う」 女子のMO「お互いの居場所を探すゲーム

【声劇台本】065「水たまりフィロソフィー」

「水たまりフィロソフィー」 ■人物 森下計くん(16)高校1年生。 安達未来ちゃん(16)高校1年生。 ■本編 森下のMO「雨上がりの下校時刻。校庭で水たまりをじっと見つめる君がいた。また不思議なことを考えているのだろうか……」 森下「安達、今日は何してるんだ?」 未来「森下君。お疲れー」 森下「お疲れー」 未来「水たまり見てたんだよ」 森下「へえ。水たまり? 何か発見あった?」 未来「うん。水たまりって不思議なの!」 森下「え? なにが?」 未来「だって……水が平面的

【声劇台本】064「フライング・クッキー」

「フライング・クッキー」 ■人物 鈴ちゃん(16)高校1年生。 衛藤くん(16)高校1年生。 ■本編 鈴のMO「秘かな恋心に火を灯す2月。クッキーを焼いた。手作りだ。本命の彼に渡す前に、私は幼馴染みの衛藤を呼び出した」 衛藤「鈴。俺に頼みって何?」 鈴「あのさ、衛藤。毒味係やってくれない?」 衛藤「毒味係って?」 鈴「クッキーの味見!」 衛藤「何? 作ったの?」 鈴「まあ……。2月だし」 衛藤「不器用なお前がお菓子作りねえ」 鈴「だから。味見して」 衛藤「無理!」 鈴「

【声劇台本】063「世界の片隅ワンダーランド」

「世界の片隅ワンダーランド」 ■人物 井上くん(17)高校2年生。 尚子さん(17)高校2年生。 ■本編 尚子のMO「地学準備室が私たちの集合場所。扇風機が回る暑い夏の午後。今日も君は地球儀を回して。その回転を止めるのが私の役目だ!」 尚子「次! アメリカ!」 井上「え? アメリカ? 広すぎるよ。もっと正確に言うと?」 尚子「ええと、指差した場所は、アメリカの……カルフォルニアかな?」 井上「カルフォルニアかあ……カ行……カ行」 尚子のMO「君は百科事典を開いて。カル

【声劇台本】061「ラブレター」

ラブレター書いた事ってありますか? 私は……秘密です。(笑) 「ラブレター」 ■ 宮藤君(16)高校1年生。 北川さん(16)高校1年生。 ■本編 宮藤君のMO「高校1年生だった僕たちに隠し事があったとすれば、それはお互いに本当の気持ちを言わないことだったと思う。それはお互いの関係維持のための必要絶対条件のようなもので、暗黙の了解だった」 北川さんのMO「宮藤君へ。一学期の最後、転校してしまう私に手紙の交換をしようって言ってくれたこと。とても嬉しかったです。私なんかで

【声劇台本】060「ツバメは自由な空を夢見るか」

ついに60本到達。次第に、少女漫画系胸キュン路線から色々な青春の形に変化しつつある作品の流れも感じていただけると面白いかと思います。 「ツバメは自由な空を夢見るか」 ■人物 久志君(17)高校2年生。 野沢さん(17)高校2年生。 ■本編 久志君のMO「ツバメのように大空をびゅーっと風を切って飛び回れたなら。このパシリの人生のしがらみから、少しは自由になれるだろうか」 野沢さん「またパシられてんの?」 久志君のMO「校舎の端の自販機で大量のペットボトルを抱えている僕

【声劇台本】059「憂鬱シュークリーム」

「憂鬱シュークリーム」 ■人物 小春ちゃん(17)高校2年生。 研君(17)高校2年生。 ■本編 小春「この世界から消えちゃいたいなあ」 研のMO「プチシュークリームを食べながら、小春はそうつぶやいた。小春は高校を休み出して半年になる引きこもりだ。病院に通うのと、週1で俺と外のカフェで話すのだけが彼女の存在理由らしい」 小春「憂鬱なんだよ」 研「憂鬱ねえ……」 小春「死にたいってより、消えたい、ってほうが正しいんだよね、この感覚は」 研「どう違うんだ?」 小春「消えたい

【声劇台本】058「昼下がりの天使様」

突然ですが、みなさんは電信柱にぶつかったことはありますか? 私、リアルにあるんです。そうです。ドジっ子なんです。今日のお話にはそんな実感も込めました。コメディです。では早速どうぞ! 「昼下がりの天使様」 ■人物 三好くん(17)高校2年生。 秋元さん(17)高校2年生。 ■人物 三好くんのMO「いつもと違う、ポニーテールの秋元さん。学校と違って、急に大人に変身したみたいで、綺麗で、とても綺麗で……僕は、気づいたら、電柱にぶつかっていた!」 秋元さん「(心配して)三好君

【声劇台本】057「雑魚と人魚と夏の空」

「雑魚と人魚と夏の空」 弱いけど、正義感のある男子くんと、強い強い女の子のお話です。 ■人物 修司君(16)高校1年生。 寺山さん(16)高校1年生。 ■本編 修司くんのMO「この高校で寺山さんは誰よりも泳ぐのが速い! 僕の中のダントツヒロインだ! それなのに。寺山さんを魚みたいってだってバカにして笑う同級生たちがいた。だから僕は! そいつらに殴りかかった!」 寺山さん「無茶なことしてバカみたいー」 修司くんのMO「中庭でボコボコにされ、倒れている僕を、寺山さんが校舎

【声劇台本】056「グリーン・レモン」

「グリーン・レモン」 ■人物 ちこちゃん(16)高校1年生。 誠くん(16)高校1年生。 ■本編 誠「受け取れ!」 ちこのMO「10月のうろこ雲が流れる空の下。誠くんが投げてきたのは、瑞々しい、緑色したレモンだった」 ちこ「え? レモン?」 誠「ナイスキャッチ!」 ちこ「危ないでしょ、いくらレモンだからって」 誠「お前運動神経いいから」 ちこ「そういう問題ではありません」 誠「それさ。うちのばあちゃんちから昨日届いたんだよ」 ちこ「このレモン?」 誠「そう。たくさんあ

【声劇台本】055「秘密にロックンロール」

誰にだって秘密はある!? 「秘密にロックンロール」 ■人物 愛ちゃん(16)高校1年生。 永井くん(16)高校1年生。 ■本編 愛のMO「女子高に通う私に友達の女子たちは言う。小食で女子力高いよね、とか。バイトばかりで苦労しているね、とか。でもね! どれも不正解! みんな本当の私を知らないのだ!」 愛「ライブのチケット獲れたってホント!?」 永井「まあな。なぜかまた当たった」 愛のMO「カフェで中学の同級生の永井からチケットを受け取る。またライブに行ける! ホント生

【声劇台本】054「恋扇子」

「恋扇子」 ■人物 河野さん(16)高校1年生。 持田君(16)高校1年生。 ■本編 持田君のMO「梅雨の間の珍しく雨が上がった放課後のことだった。からになった教室で、僕は君が机に忘れていった花柄の扇子を手に取っていた」 河野さん「持田君? 何してるの?」 持田君「こ、河野さん!」 河野さん「あっ。それ、私の扇子?」 持田君「い、いえ、これは僕のです!」 河野さん「河野君の? 花柄ピンク?」 持田君「はい……」 河野さん「すごい!」 持田君「え?」 河野さん「私とお揃いだ

【声劇台本】053「雨の日ファイター」

雨の日は、逆に頑張っちゃう! そんな女の子の物語。 ■人物 小松瑠璃(17)高校2年生。 滝沢真司(17)高校2年生。 ■本編 瑠璃のMO「嵐でも台風じゃないから休校にならない。そんな最悪な日は、牛乳を一気飲みして気合を入れる。皆勤賞の私にとって、このくらいの雨、どってことない! 通学は、勢いで乗り切る!」 滝沢「小林おはよ!」 瑠璃「滝沢君も、はやいね」 瑠璃のMO「教室にはまだ滝沢君しか来ていなかった。あれ? まさか休みになったとか? それともみんなズル休み!?」