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【声劇台本】061「ラブレター」

ラブレター書いた事ってありますか? 私は……秘密です。(笑)

「ラブレター」


宮藤君(16)高校1年生。
北川さん(16)高校1年生。

■本編
宮藤君のMO「高校1年生だった僕たちに隠し事があったとすれば、それはお互いに本当の気持ちを言わないことだったと思う。それはお互いの関係維持のための必要絶対条件のようなもので、暗黙の了解だった」

北川さんのMO「宮藤君へ。一学期の最後、転校してしまう私に手紙の交換をしようって言ってくれたこと。とても嬉しかったです。私なんかでいいのかなって思いながら初めての手紙を書いています。自分の手で書く言葉ってなんだか重みがありますね。宮藤君はこの夏休みは何をしますか? 私は家族で北海道へ行く予定です。追伸。新しい学校は宿題が多いです」

宮藤君のMO「北川さんへ。僕も手紙を書くのは緊張します。でも、きっと文章じゃないと、自分の手で書かないと、言葉が嘘になる気がするから。北海道行ってみたいな。僕は夏休みはずっと塾で終わりそうです。追伸。僕は宿題は最初に片付ける派です」

北川さんのMO「宮藤君へ。さすがだね! 宿題、私は最後の3日くらいで追い込まないと絶対やらないなあ。工藤君は大学受験も考えて塾にも通っていて先を行っていますね。私も北海道で少しは勉強したいと思います。何かお土産、送るね」

宮藤君のMO「北川さんへ。木彫りの熊の置物ありがとう。早速机の上に飾っています。もうすぐ夏休みも終わって新学期が始まるね。北川さんともう教室で顔を合わせることがないんだと思うと改めてなんだか寂しい気がします」

北川さんのMO「宮藤君へ。お土産喜んでくれて嬉しいです。いよいよ明日から2学期だね。私はちゃんとやっていけるか不安です。でも、工藤君の手紙をお守り代わりに持っていこうと思います。心強い味方がいるみたいで、安心します。お手紙交換できてよかったなって改めて思ったよ。明日からがんばるね!」

宮藤君のMO「そして、2学期が始まった。それ以来、北川さんから返事が来ることはなかった。学校生活の忙しさ。受験勉強の日々が大切なものを忘れさせ、時は過ぎ去っていった……。北川さんから突然の手紙が届いたのは卒業式から二日後の事だった。その手紙には『ありがとう』と記されていた。僕はこの時初めて本当の気持ちを彼女に伝えなくてはと気が付いた。もう手遅れかもしれない。でも、君に会いたい。君に会いたい! 僕は手紙を彼女宛てに送った」

               (おしまい)

今後の執筆と制作の糧にしてまいりたいと思います。