世界中で音読が注目される理由とはーー「音読の効果」を考える

Screenless Media Lab.ウィークリー・リポート
2021.2/19 TBSラジオ『Session』OA

Screenless Media Lab.は、音声をコミュニケーションメディアとして捉え直すことを目的としています。今回は、声に出して本を読む「音読」の効果について紹介します。

◾「世界音読の日」

マスクが必需品となったコロナ禍においては、声を発することがこれまで以上に制限されています。とりわけ子供にとっては、親の口元を見る機会が減少することで、顔や表情を読み取る力、あるいは言語能力の獲得に影響が生じるという声もあります。


一方、ラジオやポッドキャスト、そしてオーディオブックなどの読み上げ機能を用いて、音を「聴く」機会も相対的に増加しています。さらに重要な要素として「音読Read aloud」を挙げることができるでしょう。

アメリカの児童書や教材の販売大手で、ハリーポッターシリーズのアメリカでの版元でもある「スカラスティック社(Scholastic)」が支援する非営利団体が、毎年「世界音読の日 World Read Aloud Day」を開催しています。2021年2月3日に開催された第12回目のイベントでは、世界173カ国以上から多くの人々がオンラインで参加し、自分の音読の様子やブックリストを共有するなど、数々のイベントが開催されました。

もちろん、出版社にとっては書籍に販売を目的にしてはいますが、実際に音読の効果はとりわけ若年層にとっては重要です。

上記団体によれば、アメリカの家庭では子供に音読を行う家庭が増加しており、6歳〜8歳の子供と親の間で、音読の時間に愛情を感じると答える割合が、2016年以降増加傾向にあるとのことです。また、子供の85%は8歳になるまでに親の朗読最中に質問し、逆に親の72%は2歳以下の子供に朗読中に質問をします。こうしたことから、子供の学習意欲の向上等が期待できます。

◾黙読と音読の差異

黙読と音読の文章理解度の差を検証するため、読みながら一定のリズムで床を足でタップしながら文章を読むという実験を行った研究があります。その結果、黙読では足でタップする、つまり注意力を低下させると理解度が落ちる一方、音読ではタップを行っても理解度に変化がなかったという結果があります。

また、特に文章読解が苦手な子供(児童)は、文字を読むにあたって知識等の認知資源が少なくとも、音声情報がそれらを補って意味理解に役立つことが研究で明らかになっています。条件によっては、必ずしも音読の方がすべてにおいて理解度が高いというわけではありませんが、少なくとも子供に音読の習慣をつけることには、大きな意味があると言えるでしょう。

◾外国語学習と音読

外国語学習は特に、大人であっても音読が重視されます。読み上げソフトを活用しながら、シャドーイングなど、自分でも声を出して音読することで、より多くの学習効果がもたらされます(この点については、以前も紹介しました)。

最近では、音読をどの程度の時間行ったかなど、主に外国語学習に特化してはいますが、音読の量を測定するアプリもあります。自宅にいることが多い今、一人でいても「声を出して読む」という習慣をつけるのも良いのではないでしょうか。



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