骨で音を聞く技術ーー「骨伝導」を考える

放送の様子はこちら(下記サイトでは音声配信も行っています)。
「音を『骨』で聞く、<骨伝導技術>とは?」(Screenless Media Lab.ウィークリー・リポート)2010.1/17 TBSラジオ『Session-22』OA

Screenless Media Labは、音声をコミュニケーションメディアとして捉え直すことを目的としています。今回は音を「骨」で聞く、「骨伝導技術」について紹介したいと思います。

◾骨で聞くとはどういうことか

音を聞く原理といえば、大まかに言って、音の振動が耳の鼓膜を通して聴覚神経に伝わる、といったことを思い浮かべるのが一般的です。これは空気を振動させるので、「気導音」と呼ばれます。しかし音を聞く方法はそれだけではありません。それは音の振動が直接頭蓋骨を伝わって聴覚神経に届く方法で、「骨導音」と呼ばれています。

自分の耳をふさいで大きな声をだしても音が聞こえます。実はこの時私たちは、空気ではなく「骨で」音を聞いているのです。また、自分の声を録音して聞いてみると、なんだかいつもと違って変な声に聞こえないでしょうか。これは、録音した自分の声は気導音で聞いている一方、自分から発せられた自分の声は、気導音と骨導音の両方で聞こえるため、音の聞こえ方に違いがでるからなのです。

◾骨伝導技術とその利用

この骨導音に着目した技術開発が進んでいます。こめかみに装置を取り付けることで、骨から音を聞くもの等があり、「骨伝導技術」と呼ばれています。骨伝導は耳栓をしていても聞こえるほか、同時に耳から入ってくる音(気導音)も聞くことができるので、耳を塞ぐ必要がありません。

骨伝導で音を聞いている生き物もいます。例えばゾウは、音の振動を足の裏から骨を通して、つまり骨伝導で聞いています。同じくクジラも、骨伝導で音を聞いています。そうでなければ、水圧の影響で耳がつぶれてしまいます。

骨伝導技術そのものは以前から知られており、2000年代前半には骨伝導技術を用いた携帯電話が発売されたこともありました。また近年では軟骨を利用した軟骨伝導技術の研究も登場しています。

骨伝導技術は、加齢によって鼓膜の機能が低下し、聞こえにくくなった高齢者や、外耳と中耳といった器官に障害がある利用者に向けた補聴器に利用されています。

他にも、工場や建設現場などの騒音の多い現場では、耳を塞いでも骨伝導マイクでコミュニケーションが可能です。さらに水中でも音が聞こえたり、マラソンなどのスポーツアクティビティなど、その利用方法は多岐に渡ります。近年では技術が進み、骨伝導イヤホンやヘッドホンが多く発売されているので、自分の用途にあったイヤホンを探してみてもいいかもしれません。

このように、音を「聞く」方法はひとつではありません。様々な技術や方法を多角的な視点から検討することで、「音」のよりよい利用法について考えていく必要があります。

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