聞かれたくない音を隠すーー「スピーチプライバシー」とは何か

放送の様子はこちら(下記サイトでは音声配信も行っています)。
「聞かれたくない音を隠す~「スピーチプライバシー」とは何か」(Screenless Media Lab.ウィークリー・リポート)
2020.3/27 TBSラジオ『Session-22』OA

Screenless Media Lab.は、音声をコミュニケーションメディアとして捉え直すことを目的としています。今回は、様々な空間で自分の声を他人に聞かれないための技術、スピーチプライバシーについて紹介します。

◾スピーチプライバシーとは何か

病院や薬局でのやりとりは、プライバシーの観点等から、他人には聞かれたくないものです。またオフィスでは会議室からの声が外に漏れ出してしまうと、大事な商談であればあるほどリスクが高まります。そこで、会話に含まれる個人情報を保護する「スピーチプライバシー」技術が注目されています。

スピーチプライバシーの中でも一般的な方法は、ノイズ音やBGM、環境音などの音を流すことで、聞かれたくない声をカバーする「マスキング(英語で覆い隠すの意味)」があります。以前取り上げた「気分誘導効果」のような、人々の気分を盛り上げたりするための音以外にも、プライバシーを守るためにも、音が用いられているのです。

◾スピーチプライバシーと音の関係

一方、スピーチプライバシーを重視したマスキングのためには、どのような音であればうるさくなく、聞かれたくない音をカバーできるか等の研究が必要となります(物理的な音量だけでなく、個人の心理状態の観点からも研究が必要になります)。そのような研究によって、ノイズ音だけでなく、人の声から合成した情報マスキング音、川のせせらぎのような環境音に、楽器などの演出音など、スピーチプライバシーのためのマスキング音には、様々なものが開発されています。

スピーチプライバシー技術は他にも、吸音パネルを壁に取り付けることで、耳障りな反響音を吸収する「サウンドアブソリューション」などの方法もあります。またこうした技術は部屋全体に器具を取り付けるといった方法もあれば、小型のマスキング音の発生機器を部屋に置くものもあります。

スピーチプライバシー技術は日々発展しています。最近では、話し手の音声からリアルタイムでマスキング音を生成する技術も開発され、商品化が進められています。マスキングには音の周波数等が関係しますが、リアルタイムでひとりひとりに適したマスキング音が生成されれば、よりプライバシーが守られることになります。

昨今、在宅時間が増えて行く中で、スピーチプライバシーは注目される領域であると思われます。音響技術の発展によって、私たちが生活する空間が、より自由なものになることが期待されるのです。

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