パスワードは自分の声ーー「声認証」を考える

放送の様子はこちら(下記サイトでは音声配信も行っています)。
「パスワードは自分の声〜「声認証」を考える」(Screenless Media Lab.ウィークリー・リポート) 2020.1/10 TBSラジオ『Session-22』OA

Screenless Media Labは、音声をコミュニケーションメディアとして捉え直すことを目的としています。今回は生体認証のひとつであり、近年注目が集まる「声認証」技術について紹介したいと思います。

◾声認証とは何か

スマートフォンの指紋認証や顔認証など、人間の身体的特徴を利用した「生体認証技術」が急速に普及しはじめています。目の虹彩を用いた虹彩認証、手のひらの静脈を用いた静脈認証などとともに、声を使った「声認証」にも注目が集まっています。

声認証のためには人の声を、口、鼻の構造から生まれる特徴、および音の周波数などから分析し、「声紋(せいもん)」をつくります。声がつくられるメカニズムを様々な角度から分析して声紋をつくるため、風邪を引いていたとしても認証は可能です。声認証はマイク一本あれば認証が可能で、電話を用いるなど、距離が離れていても使える点に特徴があります。

声認証には、決まったフレーズを発音して登録・認証する「テキスト依存方法」や、発音する内容は自由な「テキスト独立方法」などがありますが、はやいものだと数秒で認証作業が完了します。認識精度も日々向上しており、認証にかかる時間も短縮傾向にあり、日本ではNECなどが開発を進めています。

声認証はスマートスピーカーなどで利用される他、銀行などでも利用されています。また、顧客のパスワードを言葉巧みに聞き出そうとする詐欺電話が頻繁にかかってくるコールセンターでは、声認証が詐欺を未然に防ぐために、利用するケースが増えています。また電話の最中に住所や氏名といった個人情報を伝えるのは面倒であり、声認証を利用した方が時間短縮にもなり、ユーザーにも企業にもメリットをもたらします。

また以前紹介した特殊詐欺防止に関しても、AIによる分析だけでなく、声認証技術を用いれば、登録された身内の声と照合することで、電話相手が本当に「オレ(身内)」なのかを見極められるでしょう。

◾組み合わせで使う声認証

もちろん、声認証は完璧な技術ではありません。声まね等によるなりすましを検証する研究等が行われる一方、近年発達が著しい合成音声技術を用いて声認証を突破しようとする犯罪者もおり、技術的にはいたちごっこが続く可能性が指摘できます。

こうした問題に対する根本的な解決は困難ですが、声認証を含めた生体認証技術を従来のパスワードなどと合わせて利用する他、声と指紋を併用するなど、様々な認証技術の組み合わせを用いることで、セキュリティレベルを向上させることができます。

いずれにせよ、スマホの文字入力を省略したり、詐欺を見破ったりと、声を利用した認証技術は様々な場面で利用が可能です。指紋や顔認証に加えて、声認証も今後はより普及する可能性が考えられます。

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