音が私たちの味覚に与える影響とはーー「ソニック・シーズニング」を考える

放送の様子はこちら(下記サイトでは音声配信も行っています)。
「音が私たちの味覚に与える影響とは〜『ソニック・シーズニング』を考える」(Screenless Media Lab.ウィークリー・リポート)
2019.10/11 TBSラジオ『Session-22』OA

Screenless Media Labは、音声をコミュニケーションメディアとして捉え直すことを目的としています。今回は、音と味覚の関係について紹介したいと思います。

◾クロスモーダル知覚とは

私たちの五感(視覚、触覚、嗅覚、聴覚、味覚)は相互に影響を与え合っていますが、聴覚と味覚など、2つ以上の感覚が影響し合いながら知覚することは「クロスモーダル知覚(現象)」と呼ばれます。考えてみれば、私たちは料理を食べる時、それがどんな見た目か、どの場所で食べるか、あるいは歯ごたえや香りなど、味覚以外の要素と相互に影響しながら食べ物を食べています。

そこで、以前紹介したミテイラー千穂『サウンドパワー」から、音と味の関係に関する研究を以下で紹介します。

まず、航空機内のノイズと味の関係を調査した研究がありますが、航空機の機内音がする環境では、甘みを感じさせにくくさせる一方で、うま味の感覚を高めることがわかりました。航空機ではトマトジュースがよくオーダーされるといいますが、うま味成分の多いトマトジュースが頼まれることがあるのは、関係があるかもしれません。

◾音の調味料「ソニック・シーズニング」

音が味に影響する航空機内の環境を考慮して、イギリスの航空会社「ブリティッシュ・エアウェイズ」は、うま味を多く含んだメニューを増やしているといいます。これは料理に音の要素を考慮したもので、「ソニック・シーズニング(音の調味料)」と呼ばれます。

こうして、音と味覚の研究が進む中では、普段の生活の中でもソニック・シーズニングを考えることができます。例えばダージリンティーを、お腹に響く低周波サウンドと、明るい高周波サウンドの2つの環境で飲んでみます。ミテイラー氏によれば、低周波サウンドでは少し苦味のあるダーク・フレーバーで、高周波サウンドは味がマイルドに感じられるということです。

やはりチョコレートも、低音環境と高音環境では、低音ではより苦く、高音では甘く感じられるといいます。つまり、低い音は苦味を感じやすく、高い音は甘みを感じやすいということです。

音は、私たちの味覚にも大きな影響を与えます。多くの研究が進むことで、必要以上に砂糖を使わなくて済むように、音環境で味を変化させることも可能になるでしょう。こうして、音の研究は味や健康にも影響を与えるのです。

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