睡眠や仕事を音でサポートするーー「音による生活環境の改善」を考える

Screenless Media Lab.ウィークリー・リポート
2021.2/12 TBSラジオ『Session』OA

Screenless Media Lab.は、音声をコミュニケーションメディアとして捉え直すことを目的としています。今回は、睡眠や集中など、日常生活をサポートする音について紹介します。

◾個々人に合わせた音環境を構築する「エンデル」

新型コロナウイルスの影響など、様々なストレスの中で、日々の暮らしに困難を抱えている人が多くいます。中でもストレスに対処したり、より前向きな気持ちを保つためにも、睡眠は重要な要素であると言えます。

昨今は様々な睡眠ツールが存在しますが、睡眠にも音が影響します。起床のためには目覚まし時計がありますが、入眠時にも、もっと適切なツールがあってもよいでしょう。あるいは昨今はスマホアプリで睡眠時のいびき音を検知することで、睡眠障害の原因を突き止めることも可能です。

アプリは年々高度な機能を搭載していますが、ユーザー個々人の状態に合わせた音(BGM)を自動で生成するものもあります。2018年にドイツで開発されたヒーリング音自動生成アプリ「エンデル(Endel)」は、「リラックス」、「集中」、「外出中」、「睡眠」等のモードがあり、各ユーザーの状況に合わせたBGMを自動生成します。分析のために利用されるのは時刻や天気、位置情報から得られる自然光等があります。

それだけではありません。エンデルは、Apple Watch等から得られる心拍数や動作なども対象として、各ユーザーの体内時計を把握します。具体的には、iphoneなら「ヘルスケア」機能、Androidなら「Google Fit」と連動することで、心拍数に応じたBGMを作成したり、外出中はリアルタイムの歩数データを分析することで、歩調に合わせた音楽のリズムを作成します。またスマホだけでなく、PCやスマートスピーカーでも利用可能です。

このように考えれば、今やヘルスケアアプリを用いることで、自分に合った音が日常生活全般のサポートを可能にし、最善の状況で集中したりリラックスすることが可能になると考えられます。

2020年9月には500万ドル(約5億3000万円)の投資を獲得したエンデルですが、ヒーリング音の作成にあたっては、毎日の睡眠周期を調べ(概日リズム)、人間によってリラックス効果のある五音音階(Pentatonic Scale)を用いており、また気が散る音を最小限にする、サウンドマスキングも考慮するなど、様々な観点から音と人間の関係を研究しているとのことです。

◾ますます重要な「生体情報」

このように、広い意味でヘルスケアアプリが大きな影響力を持ちつつあります。日本でも先日、Apple Watchで心電図機能と不規則な心拍の通知が解禁となり、話題となりました。

将来的には個人の脳波、体温、皮膚の状態など、より多くの情報が分析されることになるでしょう。ユーザーにとって最適な環境を構築するためには、今後はますます個人のヘルスケアデータの収集・分析が必要です。欧米では自分のデータを用いて生活改善を目指す「Quantified self(定量化する自己)」という運動も見受けられます。

一方、ヘルスケアデータは個人情報として重要な価値を持っています。データの取り扱いはもちろんのこと、ウェアラブルデバイスの扱い方など、情報技術の取り扱い方について、様々な年代の人々に方法を周知する必要があります。このように、音による生活環境の向上には課題もありますが、期待の部分にも注目していくべきでしょう。

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