状況に合わせて人工知能が音楽をアレンジする未来ーー「LifeScore」とは何か

放送の様子はこちら(下記サイトでは音声配信も行っています)。
「状況に合わせて人工知能が音楽をアレンジする未来~「LifeScore」とは何か」(Screenless Media Lab.ウィークリー・リポート)
2020.10/02 TBSラジオ『Session』OA

Screenless Media Lab.は、音声をコミュニケーションメディアとして捉え直すことを目的としています。今回は、人工知能がその時の気分に合わせて音楽をアレンジして流す、そんなサービスについて紹介します。

◾LifeScoreとは何か

私たちが音楽を聴く際、基本的にはユーザーが自ら曲を選択します。一方、ラジオから流れる曲をランダムで聴くこともありますが、昨今は音楽配信アプリなどでも、気分に合ったプレイリストを選択することも増えてきたように思います。

とはいえ、自分で選択しなくても、ユーザーの状況に合わせた音楽が自動的に流れてきたらどうでしょうか。そのような環境を設計するために、作曲家でチェロ奏者のフィリップ・シェパード氏は、アップルの「Siri」を開発したエンジニアと共同で、人工知能を利用した「LifeScore」というサービスをつくりました。

LifeScoreの特徴は、音楽家達によって収録された音楽を人工知能が自らアレンジする点にあります。人工知能は指揮者のように、ユーザーの状況に合わせてリズムや強弱を変化させることが可能です。LifeScoreの音楽は、人工知能が音楽をイチからつくりあげるのではなく、あくまでも既存の曲をアレンジするのですが、基本の曲をどこまでもアレンジすることで、様々にその意味を拡張することができるのです。

例えばLifeScoreは、Twitchというライブストリーミングサービスで配信されているSFドラマ『Artificial』で利用されたことで注目が集まりました。この作品は生配信中の視聴者のコメントに応じて、その場で内容を変化させるのですが、LifeScoreを利用することで、ユーザーのコメントに含まれる感情を分析し、音楽の曲調を変化させます。人間がその場で演技を変更することはできても、音楽を自動的に変えることは容易ではありません。

◾生体情報によって変化する音楽

LifeScoreは現在のところ、脈拍などの生体情報の入力には対応していません。しかしシェパード氏によれば、難しい作業ではないので、機能として搭載することは可能ということです。

昨今は、アップルウォッチなどのウェアラブルデバイスを通じて、心拍などの生体情報をモニタリングすることが可能です。これらの情報技術を利用して自らの生活を向上するものとして、「Quantified Self(定量化された自己)」と呼ばれる運動が知られています。LifeScoreの試みは今後、パーソナルデータの収集・分析技術の発展によって、より細かな音楽の提案が可能になることが予想されます。

もちろん、こうした試みにはセキュリティへの不安を感じたり、何か機械に自分が操作されていると感じる人もいるかと思われます。それらの問題を考慮しながら、よりよい音環境を構築することが、求められているのです。

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