「音に魅力を与える要素とはーー「倍音」を考える」

放送の様子はこちら(下記サイトでは音声配信も行っています)。
「音に魅力を与える要素とは〜「倍音」を考える」(Screenless Media Lab.ウィークリー・リポート)
2019.11/15 TBSラジオ『Session-22』OA

Screenless Media Labは、音声をコミュニケーションメディアとして捉え直すことを目的としています。今回は、音楽や歌声に人が魅了される際の鍵となる「倍音」について紹介したいと思います。

◾倍音とは何か

倍音(overtone,harmonics)という言葉を聞いたことはあるでしょうか。先に倍音の定義を説明すると、「基本となる音の周波数の倍の周波数を持つ音」となります。

音は通常ひとつではなく、様々な音が混じって私たちの耳に届いていますが、中でも一番低い周波数の音は「基音(きおん)」と呼ばれます。その基音から倍音が発生し、また基音以外の様々な要素が混じったりすることで、楽器を演奏したり歌を歌っていると、自分では発音させていない音が聞こえることがあります。実はこれが倍音の効果であり、人に心地よさを与えます。

倍音が科学的に知られる前は、合唱などの際に本来聞こえることのない音が聞こえるということで、倍音は天使の声などと呼ばれることもあったそうです。逆に基音しかないものとしては、テレビから流れる「ピー」という電子音があり、これは倍音がないため「純音」と呼ばれます。あまり心地よさを感じる音ではありません。

◾整数次倍音と非整数次倍音

倍音はフーリエ変換等の、周波数変換手法を用いることで検出が可能です。倍音には2種類あり、基音の整数倍の周波数をもつ倍音を「整数次倍音」、不規則な周波数を持つ非整数次倍音があります。整数次倍音の声はカリスマ性や荘厳さがある一方、非整数次倍音は親密性や愛嬌を感じると主張する論者もいます。

ただし、自分がどういった声の持ち主なのか、自分ではよくわかりません。最近では自分の声の倍音を調べるアプリなども登場しており、自分の声についてより深く知ることができます。

◾デジタル技術と倍音

このように自然の音や楽器の音には倍音が含まれますが、デジタル化した音楽の場合、周波数をカットすることで倍音が聞こえなくなってしまうこともあります。そこで、個人の歌声をコンピュータで合成する際に、倍音構造を再現する試みや、近年の合成音声技術を用いた初音ミクを代表とする「ボーカロイド」でも、倍音が考慮されています。

デジタル環境下で音を聴くことが多い私たちにとって、倍音について知ることは、自然界の音の深さについても知ることにもなります。デジタル環境でどのように倍音を発生させるかなど、今後も重要なテーマとなります。

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