世界中で大人気の猫の鳴き声ーー猫の「ミャオ」は何を意味するのか

放送の様子はこちら(下記サイトでは音声配信も行っています)。
「世界中で大人気の猫の鳴き声~猫の「ミャオ」は何を意味するのか」(Screenless Media Lab.ウィークリー・リポート)
2020.7/10 TBSラジオ『Session-22』OA

Screenless Media Lab.は、音声をコミュニケーションメディアとして捉え直すことを目的としています。今回は、世界中で大人気の猫の鳴き声に関する研究を紹介したいと思います。

◾猫の鳴き声の特徴

世界中で人気の猫について、インターネットでは日々様々な写真や動画がアップされ、人々を和ませています。猫を含めてペットを飼っている人も多くいますが、ニューヨーク州で行われたアンケートでは、多くの飼い主がペットに話しかけていること、またペットの鳴き声が、空腹や怒りといった、何かしらの人間に対するメッセージであると感じていることがわかりました。

自身も猫を飼っているスウェーデンの音声学者スザンヌ・シェッツ氏は、猫の声を音声学の観点から研究しています。シェッツ氏の著作『猫語のひみつ』は2019年に翻訳・出版(原著は2017年出版)されているほか、自身のウェブサイトで猫の声についても紹介しており、実際にいくつものパターンの猫の鳴き声を聴くことができます。

シェッツ氏によれば、猫の鳴き声はすでにチャールズ・ダーウィンが記述しています。音声学的な研究としては、1944年に飼い猫の鳴き声を分析し、3つの大きな分類と、それをさらに16種類のパターンに分類したものがあります。シェッツ氏の研究も基本的にこの3つの分類に従い、猫の鳴き声を録音し、音声学的な手法で解析するものです。

この3つの分類とは

1,口を閉じた「ゴロゴロ」といった喉鳴らし(落ち着いている、あるいは不安や苦痛を感じるが、そのままであってほしい時)

2,口の開閉による「ミャオ」などの一般的な鳴き声で、人間に対して多く発せられる(関心を引く)

3,口を開けたまま筋肉を緊張させたまま出す「シャー」などの音(攻撃や威嚇)
です。

◾「ミャオ」の分析

シェッツ氏は、人間に対して多く投げかけられる「ミャオ」という鳴き声を、イントネーションや周波数の観点から分析しました。一例を挙げれば、かぼそく高い声の「ミャオ」は助けを求めるもので、同じくかぼそく高いくも、ややかすれた鼻音でイントネーションも高くなる「ミャオ」はおねだり意味します。このように、同じ「ミャオ」でも、小さな差異から様々な分類ができます。

ただし、猫の感情を判定しようとすると、判定する人間が猫を飼った経験があるかどうかによっても異なるため、鳴き声のイントネーションと感情の判定において、普遍的な結果を導くのには課題もあります。しかし、今後も様々な方法を組み合わせることで、少しずつ猫語の意味が判明してきているのです。

シェッツ氏は現在財団からの支援を受けて、2021年まで「人と猫のコミュニケーションにおけるイントネーション」(ミャオジック)の研究に取り掛かっています。テーマは様々で、例えば猫は感情によってイントネーションがどれほど異なるのか、また猫は人間に鳴き声を理解してもらうために、イントネーションの変化を学習するのか、といったもの。また猫は飼い主の声を認識するか、そして特定のイントネーションや話し方を好むかなど、幅広いテーマで研究を進めています。

昨今はアニマルセラピーなど、様々な困難を抱えた人に、症状の緩和等の目的でペットが用いられることがあります。ミャオジック研究は、猫が治療の現場でどのような役目を果たし得るかを探求することも可能です。その一方で、猫のために私たちが何をすることができるか、といった相互理解のためにも用いられるでしょう。

世界中で人々から愛される猫の声、そして広く動物の声の理解は、私たち人間にとっても重要なテーマです。また、猫を飼っている人は、今まで以上に意識的に猫の声を収集・分析することで、より深い猫との相互コミュニケーションを可能にできるように思います。

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