音だけで楽しむゲームとはーー「オーディオゲーム」を考える

放送の様子はこちら(下記サイトでは音声配信も行っています)。
「音だけで楽しむゲームとは~「オーディオゲーム」を考える」(Screenless Media Lab.ウィークリー・リポート) 2019.12/13 TBSラジオ『Session-22』OA


Screenless Media Labは、音声をコミュニケーションメディアとして捉え直すことを目的としています。今回は、音だけで楽しむことが可能な「オーディオゲーム」についてご紹介します。

◾オーディオゲームとは

1997年、家庭用ゲーム機のセガサターンのゲームソフト『リアルサウンド〜風のリグレット〜』が発売されました。同じくセガサターン用ゲームソフト『Dの食卓』などで有名なゲームクリエイターの故飯野賢治氏がプロデュースした『リアルサウンド』は、インタラクティブサウンドドラマと銘打たれたゲームです。

基本的に音声を耳で聴くだけで、時折選択肢が出るものの、コントローラーを動かすと選択肢の音声が読み上げられるので、視覚障害者にも楽しむことができるゲームでした。


このように、音声だけで楽しむゲームは以前から存在したものの、日本ではあまり知られていません。しかし昨今は海外など、音だけで楽しむことができる「オーディオゲーム」が登場しています。そんな中、全盲のプログラマーが開発したオーディオゲームが注目を集めています。

プログラマーの野澤幸男さんは3歳で全盲になった後、プログラミングに興味を持ちました(読み上げソフトなどを利用したとのことです)。積極的に視覚障害者向けのアプリケーションを開発し、それらを自身のHPで公開。現在は慶應義塾大学環境情報学部在学中です。


ちなみに野澤さんによれば、音だけでも格闘ゲーム(格ゲー)はできるとのことです。ステレオイヤホンであれば、対戦相手が左右どちらにいるかがわかるとともに、音によって攻撃のパターンがわかるといいます。普段は視覚に頼ることが多い中で、実は効果音をはじめとした聴覚が、ゲームにも大きな影響を与えていることがわかります。


◾新しい音体験

2019年9月に開催された「東京ゲームショウ2019」では、野澤さんが所属する共同プロジェクト「DDD Project」(DDDは「Disability Driven Design」)が出展し、野澤さんが開発したゲームをプレイすることができました。

「モスキートが来る」(モスクル)という名前のこのゲーム。スプレー缶型のコントローラーとヘッドフォンを利用して、蚊の音を把握しながらスプレーを発射するというものです。


またTBSラジオ『アフター6ジャンクション』2019年9月の放送では、野澤さんをゲストに迎え、このゲームを実際に体験されています。


野澤さんが開発したゲームは2018年の東京ゲームショウでも出展されていますが、音だけで構築されたオーディオゲームは、空間について新しい発見をもたらしたり、音と私たちの関係を再認識させるものです。


海外ではより大きなオーディオゲームのコミュニティも存在しているとのことですが、ゲームをきっかけに、音と私たちの関係が再構築される経験は、視覚中心の世の中にあってより重要性を帯びているのではないでしょうか。

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