来年の注目技術ーー「2021年の音技術」大紹介

Screenless Media Lab.ウィークリー・リポート
2020.12/04 TBSラジオ『Session』OA

Screenless Media Lab.は、音声をコミュニケーションメディアとして捉え直すことを目的としています。今回は、2021年に向けた最新の音技術を紹介します。

◾FacebookのARグラス

Facebookには、VR(仮想現実)やAR(拡張現実)の技術開発を行う部門である「Facebook Reality Labs(FRL)」という研究所があります。Facebookは2021年にウェアラブルARグラスの発売を予定しているのですが、この研究所は「知覚超能力(Perceptual Superpowers)」と呼ばれるARグラス技術を発表しています。

FRLによれば、ARグラスに複数のマイクを設置し、常に周囲の音を収集。それに頭と目の動きを組み合わせることで、聞く音と聞かない音をグラスが区別します。これには人工知能技術(ディープラーニング)やアクティブノイズキャンセリングシステム等が組み合わさっており、以前から紹介している、最新の補聴器としての役割を担うことも可能になるでしょう。

◾イヤホンいらずの「リスニング革命」

一方、イスラエルのスタートアップ企業「NovetoSystems」は、ヘッドホンもイヤホンもなしで、特定の人の耳に音を届ける技術を開発しているといいます。音を聞くにはこれまで、スピーカーが必要だったり、イヤホン等を耳に装着する必要がありました。「Soundbeamer」と呼ばれるこの技術は、特殊な技術でユーザーの耳のあたりにだけ超音波で「耳のポケット」をつくりだすものです。また、頭を動かしても超音波はユーザーの耳を捉え続けます。さらに、イヤホンを使用しないので、周囲の音を聞き逃す心配もありません。

同社によれば、現在開発しているのはテレビなどに埋め込むものと、小型スピーカーのような独立型のものです。外でも利用できるかはわかりませんが、2021年に発売を予定しており、イヤホンいらずで音が聞こえる点では期待が持たれます。またこれまでもこのコーナーでは、商業施設等で特定の範囲にだけ音を届ける「指向性スピーカー」を紹介しましたが、この技術もそうした技術に連なるものでしょう。

とはいえ、この技術がハッキング等の被害を被れば、仕事中に嫌がらせのように別の音を飛ばしたり、眠っている間にサブリミナル効果をもたらす音を流されてしまうといった、音のセキュリティ問題がこれまで以上に問われるでしょう。

◾音の方向で道案内をするAppleの特許

以前も紹介しましたが、Appleが2018年に米国特許商標庁に出願していた特許の内容が、2020年8月に公開されました。それによれば、Appleはスマホ等での道案内に際して、特定の「方向」から音が流れることで、ユーザーが進む方向や、曲がる方向を指示するナビゲーションシステムであることがわかります。

音の道案内といえば「声」による指示が一般的ですが、音の方向であれば、音楽でもラジオでも、音は何でも構いません。以前も紹介しましたが、2021年は、音が流れる方向に向かってあるけば、自然と目的地に到着するためのシステムが登場してもおかしくありません。Appleは大人気のワイヤレスイヤホン「Air pods」に、こうした機能の搭載も目指していると思われます。特にAir Pods Proには、立体音響機能「空間オーディオ」が搭載されているので、技術的に困難ではありません。

このように、音の技術発展は常に進歩しています。2021年も音の技術から目が離せません。

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