聴覚技術の著しい発展ーー「立体音響技術」の最前線

Screenless Media Lab.ウィークリー・リポート
2021.1/8 TBSラジオ『Session』OA

Screenless Media Lab.は、音声をコミュニケーションメディアとして捉え直すことを目的としています。今回は、著しい技術発展が話題の立体音響技術について紹介します。

◾SONYが開発「360 Reality Audio」

以前も何度か取り上げてきましたが、通常のステレオと比べて360度あらゆる角度から音が聞こえる「立体音響」に注目が集まっています。

昨今のVR=仮想現実技術のように、視覚を用いた技術の領域では、奥行きなどの立体感等を含めた技術革新が続いています。映画においても3D技術は広く普及しています。一方の音声領域にあっては、未だに主流は左右から聞こえるステレオ音源です。

そんな中、有名なものではSONYが2019年に発表した「360 Reality Audio(サンロクマル・リアリティオーディオ)」という、没入感を求めた立体音響技術が注目を浴びました。この技術を利用した楽曲配信も行われていますが(Amazon Music HD等)、楽器の音源にひとつひとつ位置情報をつけることで、重層的で空間的な広がりを持つ音が構築可能です。アプリをダウンロードすれば一般的なヘッドフォンでも利用可能ですが、推奨されたヘッドフォンを用いれば、ユーザーの耳の形に合わせて音の最適化が行われます。

アーティストのコンサートなど、VR機器を通して臨場感を味わうことができるサービスも登場しはじめていますが、音のレベルでも臨場感を体感できるならば、とりわけクラシックコンサートなどの音を聴くには最適でしょう。

◾続々と登場する立体音響技術

立体音響の中でも、より広範に普及していると思われるもののひとつが、「Air pods pro」です。iOS14以降のiPhone7以降のスマホであれば、「空間オーディオ」という機能が利用可能です。価格の問題はありますが、音が左右だけでなく、上下や前後からも聞こえる等、立体音響を体験することができます。

以前から数多くのイヤホンを紹介してきましたが、続々と新たな技術を搭載したイヤホンも登場しています。「IQbuds2 MAX(アイキューバッズツー マックス)」というイヤホンは、ユーザー個人の聴力を測定して音量の最適化が可能です。またノイズキャンセリングはもちろんのこと、外の音をどの程度カットするかを自在に操作したり、人の声だけが自然に聞こえるような設定、あるいはワークアウトやオフィスなど、シーンに合わせた設定も可能です。こうした技術は当然、自宅でのテレワーク作業などにも重宝されるでしょう。

紹介してきた機器は、現状ではまだまだ高価なものです。とはいえ、これら聴覚能力を強化するツールが普及すれば、今聞こえている現実とは異なる現実が当たり前になる世界が一般的なものとなるでしょう。

またこのような音技術は、当ラボが監修したオーディオムービー等、音を利用したコンテンツへの利用が想定されています。また昨今はバイノーラル録音、ASMRなどが流行っています。このような事情を考えれば、2020年代は聴覚情報も視覚情報と同様に、大幅なアップデートが期待できるでしょう




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