聴診器の音をデジタルデータ化するーー「音の見える化」を考える

Screenless Media Lab.ウィークリー・リポート
2021.2/26 TBSラジオ『Session』OA


Screenless Media Lab.は、音声をコミュニケーションメディアとして捉え直すことを目的としています。今回は、これまで見えなかった音をデータとして「見える化」する技術について紹介します。

◾音感の「見える化」

これまで不可視だった音が「見える」ようになってきました。例えば、脳神経科学をベースに音に関する製品開発を行う「neumo」という会社が開発した「PitchOn」というサービスがあります。これは20代〜80代までの耳年齢を測定するとともに、音の高さを聞き分ける能力、つまり音感を計測し見える化します。従来の聴覚検査と異なり、音楽のための音感を測定するサービスであるため、楽器の演奏や合唱など、自分で高さを調節するのに役立ちます。また、苦手な音と得意な音をがわかるため、歌唱練習などにも役立ちます。

◾オンライン診療でも利用できるデジタル聴診デバイス

医療現場でも、音の見える化が進んでいます。その一つが、聴診器による患者データの見える化です。

聴診器といえばこれまで、医者が患者に直接触れることで音を聞いて(聴診)診断を下すものですが、微妙な音の変化を聞き分けるには多くの経験が必要であり、「職人技」とも言われてきました。聴診器は200年ほど前に発明されましたが、近年まで素材等以外の変化に乏しく、また医者からは、健康診断等で聴診器を利用する中で、耳を痛めるという声もありました。

そんな中、デジタル聴診デバイスなどを展開する「シェアメディカル」が2019年、デジタル聴診デバイス「ネクステート」を発表しました。このデバイスは、既存の聴診器にデジタル装置を装着し、聴診器の微弱な音をデジタルデータ化して収集し見える化する他、市販のBluetoothイヤホンなどで聞くことを可能にしています。

このネクステートを活用して、オンラインでも聴診が可能な治療システム「ネクステート・シナプス」が、2021年1月より開始されています。予め設定されたネクステートとタブレットやスマホを医療機関に提供し、患者の自宅に訪問する訪問看護師と病院の医者をつなぐといったケースを想定しています。

これにより、オンライン診療の場合でもワイヤレス聴診が可能な他、患者の聴診データを医者が離れていても利用することが可能になります。特に、聴診音は通常の音データとしてはノイズとして識別されてしまうこともあり、生体音をリアルタイムで伝送する技術が特徴としてあるとのことです。

音の見える化が進むことで、医療だけでなく、様々な領域でできることが増えていくのです。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?