スマホが代わりに見るーー「視覚障害者向け支援アプリ」を考える

放送の様子はこちら(下記サイトでは音声配信も行っています)。
「スマホが、代わりに見る~「視覚障害者向け支援アプリ」を考える」(Screenless Media Lab.ウィークリー・リポート)
2020.1/24 TBSラジオ『Session-22』OA

Screenless Media Labは、音声をコミュニケーションメディアとして捉え直すことを目的としています。今回は、視覚に障害のある方に向けた「支援アプリ」について紹介したいと思います。

◾視覚障害者向け支援アプリ

近年、スマホやスマートスピーカーなど、声によって操作可能なデバイスやアプリが増えています。特にスマホは、視覚障害のある方にとって、非常に有益に機能します。

実際、障害者を支援するサイト(東京都障害者IT地域支援センター)では、スマホやタブレットを利用した支援アプリの一覧を紹介しています。他にも、例えばiPhoneではVoiceOverという機能があり、文字の読み上げを設定することが可能であり、健常者にとっても有益な機能です。

一例を挙げれば、視覚障害者を支援する「音声ガイド地図」を普及するための「ナビレコ」というアプリもあります。これは特定の出発点から到達点までの音声案内をボランティアや当事者が録音・公開するものです

◾マイクロソフトが開発するトーキングカメラアプリ「SeeingAI」

視覚障害者向け支援アプリの中でも、特に興味深いものをひとつ紹介したいと思います。それは、マイクロソフトが2019年12月に日本語対応版をリリースした、「Seeing AI」というアプリです(iPhone向け、無料)。

上述の通り、昨今のスマホには声で文字を読み上げたりキーボードを操作するといったアクセシビリティ機能が内蔵されていますが、このアプリはスマホのカメラでかざした画面の中にある画像を理解し、声で読み上げるなど、多彩な機能があります

SeeingAIはテキストだけでなく、人や物など、チャンネルと呼ばれる8つの機能をそれぞれ切り替えることで様々に利用できます。例えば「人チャンネル」であれば、登録した友人を認識するだけでなく、その人の表情まで読み取ります。他にも写真を読み込ませると、「おそらく部屋に立っている若い男の子」や、「黒髪の5歳の男の子」といった、その写真に描かれた人物の様子や部屋の状況などもAIが判別し、読み上げるのです。

他にも、その場でスマホをかざすことで、看板やレストランのメニュー、会議室の部屋番号などを文章で読み上げたり、子供部屋の電気が明るいのか暗いかなど、様々なことを教えてくれるので便利です。さらに紙幣をかざすと、それが1000円札なのか10000円札なのかを教えてくれるのです。視覚障害の方がどういった課題を抱えているのか、非常に考えられているのがわかります。

とはいえ、利用者は対象物にスマホをかざすことが困難です。そこでSeeingAIでは、ライトを自動的にオン・オフにしたり、書類がカメラに収まるように声で指示する機能などもあります。

このように、画像、映像の中に何があるのかを人工知能が伝えてくれるアプリは、将来的にはメガネなどに小型カメラを搭載することで、より自然な状態で視覚の代わりになることも考えられます。

このように、音声は視覚に障害のある方にも重宝されています。また嗅覚や触覚など、他の器官に障害のある方に向けてなど、聴覚を用いた支援技術が今後も発展することが期待されているのです。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?