360度様々な方向から音が聞こえるーーステレオを超える「音空間」の最前線

2021.6/18 TBSラジオ『Session』OA

音声はその他、ポッドキャスト、ラジオクラウドでも配信します。

Screenless Media Lab.は、音声をコミュニケーションメディアとして捉え直すことを目的としています。今回は、音楽体験の新しい可能性ついて紹介します。

◾空間オーディオとは何か

Appleは2021年6月7日に開催された開発者向けのイベント「WWDC」において、同社の提供するApple Musicが大幅にアップデートされ、ドルビーアトモスによる「空間オーディオ」を導入したと発表しました。Apple Musicは同社が提供する月額の有料ストリーミングサービスですが、空間オーディオは従来のステレオに次ぐ革命であるとAppleは位置づけています。

空間オーディオは別名「3Dオーディオ」とも呼ばれています。従来のステレオは、ふたつの音源から(イヤホンであれば左右から)音が流れるもので、単線的なモノラル音源に比べて、音の広がりをもつものでした。ただし、音の発生源は固定されています。

これに比べて空間オーディオは、左右だけでなく、360度、あらゆる角度から音が聞こえてくることに特徴があります。このような音の空間的な広がりは、例えばクラシックのコンサートやライブ動画と合わせることで、まるで自分が会場にいるかのような体験を行うことが可能になります。家にいても、これまで以上の音体験ができるなど、音の可能性が新たな段階に突入したと言えるでしょう。

近年の音技術としては、「ハイレゾ」というCDよりもずっと高音質な音源が注目されてきました。確かにハイレゾは超高音質であり、音にこだわりをもつユーザーからは歓迎されます。一方、空間オーディオはハイレゾとは異なり、音の位置の多様化によるユーザーの体験に重きを置いています。上述のライブ音源のように、音の用途としては空間オーディオはより一般的な用途があり得るかもしれません。

空間オーディオを最大限楽しむためには、Appleのワイヤレスイヤホン「AirPods Pro」など、空間オーディオに対応したイヤホンやヘッドフォンが必要ですが、iPhoneのスピーカーや、従来のイヤホンでも空間オーディオを利用することは可能です。サービス利用のためにはApple Musicに加入していることが必要であったり、対応楽曲はまだ多くはありませんが、今後の広がりに期待したいところです。

◾立体音響技術は他にも

このような試みは、他社でも行われています。Appleに先立つこと2021年4月、ソニーは「360 Reality Audio」という、立体音響技術を用いたサービスを開始しており、Amazon Music等からコンテンツが配信されています。

上記にリンクした同社サイトでは、既存のイヤホンでも音の広がりを体験できる音を聴くことができますが、こちらもApple同様、この技術に対応したイヤホンやスピーカーがある一方、従来のイヤホンなどでも利用が可能です。

また当ラボでは2019年、「方位知覚」や「音のAR」というテーマで、音が左右以外の様々な方向から聞こえてくる技術に着目しています。

エンターテイメントとしての立体音響技術が普及しはじめた今、今後は福祉や様々な領域でこうした技術が用いられることが望まれます。



この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?