頭の中で音楽が再生され続けるーー「イヤーワーム」を考える

放送の様子はこちら(下記サイトでは音声配信も行っています)。
「音と私たちの体の関係〜イヤーワームとは?」(Screenless Media Lab.ウィークリー・リポート)
2019.9/13 TBSラジオ『Session-22』OA

Screenless Media Labは、音声をコミュニケーションメディアとして捉え直すことを目的としています。今回は音と私たちの体に関わる事例を紹介したいと思います。

◾特定の音楽が脳内再生される

 ある日突然、特定の歌や音楽が頭の中で何度も再生される、といった経験はないでしょうか?頭の中で歌や音楽が鳴り響く現象は、欧米では「イヤーワーム(耳の虫)」と呼ばれたり、「Involuntary Musical Imagery: IMI(付随意音楽心像)」などと呼ばれ、研究対象にもなっています。

 90%以上の人々が経験があるというこのイヤーワームについて、イギリスでは3000人にアンケートを行った研究があります。その結果、2010年〜2013年に経験したイヤーワームのうち、上位にはレディーガガの曲が多くランクインしていました。

 イヤーワームに選ばれる曲の特徴としては、テンポが速い曲で、ランニングや歯磨き中に現れることが多く、旋律が一度上がってから下がるものが多く、単純すぎない程度に複雑で、いきなり曲調が変わる曲などが選ばれやすいということがわかりました。アンケートで一位になったレディーガガの曲は「バッド・ロマンス」ですが、確かに曲調はやや複雑で、跳躍があります。


 イヤーワームが生じる原因はまだすべて解明されているわけではありません。しかしで44人の被験者の脳をMRIで検査したロンドン大学の研究では、イヤーワームが生じやすい人は、感情や記憶、聴覚に関わる脳の領域が関係していることがわかりました。残念ながら今のところわかるのは以上の点までですが、音を脳内で再生することで、睡眠と同様に、無意識の領域で何かしらの処理が行われている、といった可能性も考えられます。いずれにせよ今後の研究によっては、私たちが感じる音と脳の関係がより深くわかるようになるかもしれません。

 ちなみに、イヤーワームを不快と感じる場合の対処法としては、元々の文字を並べ替えて別の単語をつくる「アナグラム」という言葉遊び(「ともさかりえ」を「さかともえり」にする)を行ったり、ガムを噛むこと、また他の音楽をきく、といった対処法があります。イヤーワームが不快だと感じる人は実践してみてはいかがでしょうか。

音と私たちの身体の関係は、まだわからない事が多くあります。こうした研究のさらなる発展が、望まれます。

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