新聞は「読む」から「聴く」ものとなる?ーー「ポッドキャストのニュース番組」を考える

放送の様子はこちら(下記サイトでは音声配信も行っています)。
「新聞は「読む」から「聴く」ものとなる?~「ポッドキャストのニュース番組」を考える」(Screenless Media Lab.ウィークリー・リポート)
2020.8/21 TBSラジオ『Session-22』OA

Screenless Media Lab.は、音声をコミュニケーションメディアとして捉え直すことを目的としています。今回は、ニュースを「聴く」ことが増えているという、メディアの変化についてご紹介します。

◾新聞は「読むもの」から「聴くもの」へ

年々購読者の減少が知られる新聞業界ですが、米「ニューヨーク・タイムズ」をはじめ、オンライン化で成功する新聞社もあります。そのニューヨーク・タイムズは近年、ポッドキャストにも力を入れています。

ビジネスニュースメディア「アンプ」の記事「新聞は読むものから聞くものに?ニューヨーク・タイムズのポッドキャスト企業買収に見るニュースメディアの未来」によれば、イギリスの主要新聞紙の購読者の平均年齢は、若くて40代で、61歳というメディアもあります。

一方、フェイクニュースの横行で、正確なニュースを知りたいという若者も現れています。同記事によれば、米、英、独の3カ国の16〜34歳の層では、有料ニュースサービスを検討しているという人が、55歳以上の層に比べて2倍も存在しているとのことです。とはいえ、すでに無料で配信されるものが多い中、有料課金する若者に大きくは期待できません。

そんな中ニューヨーク・タイムズは2017年、ポッドキャストのニュース解説番組「The Daily」を開始します。平日毎日20分程度の番組は、2020年3月における、世界全体のポッドキャスト番組別ランキングで1位となります。さらにリスナー層は、25歳〜34歳の層が45%以上でトップです。つまり、若者もまたニュースを求めていると考えられます。

また日本でも、朝日新聞がポッドキャストを開始しています( https://omny.fm/shows/asahi/playlists)

◾ポッドキャストの集まる注目

このように、若者の間で「読む」から「聴く」が注目される新聞ですが、一方でニューヨーク・タイムズ自身は、オンラインのデジタル購買者も増えており、依然として読ませるメディアでもあります(オンラインで成功している新聞社は少なく、ニューヨーク・タイムズはかなり稀な例とも言えるでしょう)。

その意味では、音声ニュースを新聞への導線とする可能性も考えられます。つまり、読むか聴くかの二者択一ではなく、消費者のニーズに合わせて、両者の適切なバランスが求められるのです。また、文字情報を読むのが困難になりやすい高齢者層には、今後は音で聴くニュースも重要になると思われます。

新聞が「耳」に注目する一方、近年ポッドキャスト市場の盛り上がりも指摘されています。ブランドの一社提供によるブランディング目的のポッドキャスト番組が増えたり、ポッドキャストを聴取したことがあるという人も、アメリカでは2016年の36%から2019年には51%まで増加しています。

リスナーと距離が近いという意味ではラジオと似た要素も多くあるポッドキャストですが、ニュースを「聴く」という習慣そのものは、ラジオが持っている強みでもあります。音で聴くことが今後の社会でどのような意味を持ち得るかについては、当ラボでも今後ますますの研究を行っていきたいと思っております。

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