超音波で冷凍マグロの鮮度を評価するーー「音でできる」最新技術の紹介

2023.1/20 TBSラジオ『荻上チキ・Session』OA

Screenless Media Lab.は、音声をコミュニケーションメディアとして捉え直すことを目的としています。今回は、音を利用してさらに便利になる様々な技術を紹介します。

◾音声入力で点検効率を向上

音声入力技術の向上により、以前はキーボードに入力していたものを音声入力に代替することが可能になっています。とりわけ現場の点検作業では、電子化が進んでもタブレットには記入せねばならず、作業は煩雑なものになります。

例えば構造物の高齢化が進む高速道路は点検が重要ですが、損傷箇所も増えており、データ作成も作業負担がかかります。そこで首都高技術株式会社と、音声認識サービス等を手掛けるアドバンスド・メディア、そして音声入力対応の点検システムを開発している長岡工業高等専門学校が共同で、音声による点検報告書システムを開発しました。

こうしたシステムは2018年から開発が進められ、システム改修を進めながら、2022年4月から首都高速道路の点検に実装されました。手書きでの記入漏れ防止のほか、今後は20%の作業効率短縮を見込んでいるとのことです。

◾冷凍マグロの鮮度を超音波で評価

もうひとつは、超音波を用いた品質評価技術です。

東海大学と富士通の共同研究グループは、2022年12月21日、世界で初めて冷凍マグロの鮮度を冷凍状態のまま評価する技術を開発したと発表しました。

これまで冷凍マグロの品質評価は、マグロの尾を断面を熟練者が目視で確認する「破壊的検査」が主流で、検査可能なタイミングや場所、検査者が限定されていました。一方で、超音波を利用した非破壊検査は、超音波の減衰の影響が大きいことが課題となっていたとのこと。

研究では、マグロの検査が可能な超音波の周波数帯を発見するとともに、鮮度不良のマグロは中骨からの反射波に特徴があることも発見。ここから機械学習で鮮度の判定ができるようになったとのこと。性能は約7割から8割程度の確率で正しく判定できるものですが、今後はさらに精度が向上することも考えられます。

近年は日本食ブーム等の影響もあり、国際的なマグロの需要は高まっており、鮮度評価が場所や人を問わずできるようになれば、流通がよりスムーズになるでしょう。また、こうした超音波技術は冷凍物を扱う畜産業やバイオ領域など、様々な領域で応用することも研究者は考えているとのことです。

こうして音は、私たちの生活を見えないところでサポートしていることがわかります。今後も、音がもたらす社会的な影響・貢献について、当ラボは注目していきます。

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