難聴予防にはどのイヤホンが良いのかーー「難聴リスクとイヤホン」を考える

Screenless Media Lab.ウィークリー・リポート
2022.4/29 TBSラジオ『Session』OA

Screenless Media Lab.は、音声をコミュニケーションメディアとして捉え直すことを目的としています。今回は、私たちが利用するイヤホンやヘッドフォンと、最適な音響環境の関係についてご紹介します。

◾騒音環境が難聴のリスクになる

これまで私たちは、携帯型音楽プレイヤー等を利用し、イヤホン、ヘッドフォンで音声を聞いていました。一方、スマホは音楽プレイヤーを兼ねていることから、スマホの普及に伴い、私たちはこれまで以上に音声を聞く機会が増えています。さらに、外出時だけでなく、屋内でもテレワーク等でイヤホン・ヘッドフォンを利用することが増えていることから、近年は難聴のリスクが指摘されることもあります。

実際、2015年のWHOの報告では、中~高所得国のティーンエイジャーとヤングアダルト(12歳から35歳)のほぼ半数が、不適切な音量で形態音楽プレイヤーを利用しており、世界11億人の若者が難聴のリスクがあるとされています。

そこで、順天堂大学の医学部耳鼻咽喉科の研究者を中心とした研究チームは、様々なタイプのイヤホンやヘッドフォンの聴取環境を調査し、2022年3/24日に論文として公開しています。
(The Effects of an Active Noise Control Technology Applied to Earphones on Preferred Listening Levels in Noisy Environments 日本語訳:騒音環境下での最適リスニングレベルに対するイアホンのノイスキャンセリング機能の影響)

論文によれば、安全な音響の上限は85dBで一日8時間までと考えられていますが、一般的なスマホや形態音楽プレイヤーの最大音量はこれを超えており、地下鉄等の雑音が生じる環境では、音量を上げることでリスクが増えます。

聴覚のリスクはすぐには顕在化せず、大きな音量を数年間、習慣的に聴取することで、知らずしらずのうちに難聴になってしまいます。故に、リスクが顕在化する以前から対策が必要になります。

研究では、23名の聴力が正常な20歳~40歳の被験者に、4種類のイヤホン/ヘッドフォン(耳置き型(earbuds)、ヘッドフォン、インサート型(カナル型)、ノイズキャンセリング機能付きインサート型)を利用してポップスとクラシック音楽を聞き、一番聞き心地のよい音量に調整してもらいました。これを静寂な環境と地下鉄の騒音環境(80dB)でそれぞれ試してもらいました。

◾ノイズキャンセリング機能付きイヤホンの効果

研究の結果、騒音環境下では、特に耳置型とヘッドフォン環境では、危険な音量である85dBを超えることがある一方、ノイズキャンセリング機能付きのものは安全音量の75dB以下に収まったという結果となりました。カナル型イヤホンは、ノイズキャンセリング機能付きのものほどではないですが、他のものに比べれば多少は音量を下げられますが、やはり効果があるのはノイズキャンセリングイヤホンになります。

騒音環境下では、やはり危険な域まで音量を上げがちになってしまいます。そのため、有効なものはノイズキャンセリング機能がついたイヤホンになることがわかりました。ただし、聴力を保つには、どのような環境にあっても過度に大きな音響環境は避ける必要があり、ノイズキャンセリング機能付きイヤホンであっても、音のボリュームには注意が必要なことは言うまでもありません。

様々な調査から、とりわけ若者の難聴リスクがあがっていることが確認されています。イヤホンを利用した生活はこれからも続くことを考えれば、特に騒音環境下でイヤホンを利用することが多い人等にとっては、多少値段が張るとしても、ノイズキャンセリングイヤホンの利用を検討することは、今後の健康を考える上で価値あるものだと考えられます。

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